表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱の領主に転生した俺、放置されていた辺境をチート改革したら、なぜか帝都が震え始めた  作者: 蒼野湊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/41

第40話 停戦の地。“影の長ゾルガが語る創造領主の記録”

白面の使者が空へ溶けるように消えた、その瞬間。


王都特使レアは、唇を噛みしめ、即座に判断を下した。


「……全軍、撤退」


その声には迷いがなかった。


魔術騎士の一人が声を荒げる。

「よろしいのですか!? 創造領主は目の前に――!」


「無意味よ」


レアは冷たく言い切った。


「あれほどの存在が介入した以上、戦力差は歴然。

あれは“人外”。王都の理の外にある」


一瞬、視線がアルトへ向く。


「……命を落としてまで敵対する価値はない」


魔力転移陣が展開され、王都軍は煙のように消えていった。


残された大地に、静寂が降りる。


ステラがぽつりと呟いた。

「……なんか、すごい勢いで逃げたね」


「まぁ、分かる」

ガルドは肩をすくめる。

「俺もあの白面の気配、正直ぞっとした」


だが――。


王都軍が去った後も、黒翼戦団は動かなかった。


影の長、ゾルガは剣を下ろしたまま、その場に立っている。


「……無用な戦闘にならず、何よりだ」

低く、重い声。

「村の者が巻き込まれるところだった」


アルトは一歩前に出た。

「……あんたたちの目的は、結局俺だろ」


ゾルガは否定しなかった。

「そうだ」


「なら、連れ去りに来たんじゃないのか?」


ステラが即座に噛みつく。

「どう見てもその格好、保護って感じじゃないけど」


「連れ去るのではない」

ゾルガは淡々と言った。

「王都の手から“守る”ためだ」


その言葉に、アルトは眉をひそめる。


「……王都も黒翼も、同じことを言う」

「でも結局、勝手に決めて俺を動かそうとしてるだけじゃないか」


一瞬、ゾルガの影が揺れた。


「その不信は当然だ」


そう言って、彼はわずかに影の圧を弱めた。

敵意を示さぬための、意図的な仕草。


「だからこそ、話す」


ゾルガはアルトを真正面から見据えた。


「アルト・フェーン。

お前は《創造領主》だ」


その言葉に、空気が張り詰める。


「……創造、領主?」

アルトが繰り返す。


「この大陸の歴史において、《創造》の適合者は千年で三名」

「そして三名すべて、最終的には王都により“処断”された」


「……処断!?」


ミリアが声を上げる。


ゾルガは続けた。

「理由は単純だ。《創造》は世界を書き換える力を持つ」


「王都の王より上に立つ存在が、そこに生まれるということだ」


ステラが息を呑む。

「……だから、恐れられてる」


「ああ。恐れられ、排除されてきた」

「無能と宣言され、力は封じられ、辺境へ追いやられる」


アルトの胸が軋む。


「……そんな理由で、俺の人生を……」


「それほどの力だ」

ゾルガは静かに言った。

「お前は、世界を変え得る存在なのだから」


内側で、ざわりと何かが動く。


(……言わせるな……)

レムナントの声が、微かに響いた。


(恐怖を植えるだけだ……)


(黙れ)

アルトは心の中で言い返す。

(俺は、知る)


「白面の使者……あいつは何者なんだ」


アルトの問いに、ゾルガは首を振った。


「分からん」

「だが影の記録にはある。

《創造領主》が現れた時のみ姿を見せる存在だ」


「王都の敵でも、黒翼の味方でもない」


「じゃあ何しに来たんだよ!」

ガルドが声を荒げる。


「目的は不明」

ゾルガは断言する。

「だが――アルト・フェーン。

あれは間違いなく、お前を見に来た」


ミリアが不安そうにアルトの袖を掴む。

「……怖いです……」


「大丈夫」

アルトは小さく微笑んだ。

「俺は、俺の意思で進む」


ゾルガはその様子を、しばらく見つめてから言った。


「お前の力は、使い方次第で国を滅ぼす」

「同時に、誰も飢えぬ世界を作ることもできる」


「だが――唯一の問題がある」


「……何だ」


「知識がない」


「力の扱いを知らぬ者に、世界を書き換えられては困る」


アルトは唇を噛んだ。

「……それは、俺も分かってる」


(……私が教えます)

レムナントの声が、甘く囁く。


(……お前は、何を隠してる)

アルトは問い返した。


(あなたが恐れなくていいように……

真実は、まだ伏せる必要があります)


ゾルガは剣を納めた。


「今日は退く」

「白面の使者の存在が大きすぎる」


「だが覚えておけ、アルト・フェーン」


「次に会う時、お前は選択を迫られる」


「世界を守る側に立つか」

「王都に滅ぼされるか」


そして、ミリアに視線を向ける。


「巫女を鍛えろ」

「《創造領主》と《光の巫女》は、本来、対で世界を照らす者だ」


影が濃くなり、黒翼戦団は夜へと溶けていった。


残された四人の間に、重い沈黙。


「……嵐の前の静けさ、ってやつか」

ステラが呟く。


「いや」

ガルドは空を見上げた。

「もうすぐ、本物の嵐が来る」


アルトは拳を握りしめた。


(俺は……)


レムナントの声が、静かに響く。


(恐れるな)

(世界を、どう創るか――選ぶのは、あなた)

長い間、お付き合いいただきありがとうございました。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

本作は第40話をもって、本編完結となります。


この物語は、

「世界を救う話」ではなく、

「どう生き、どう選ぶかの話」として書きました。


アルトは最後まで未完成のままです。

答えを持たず、迷いながら、

それでも進むことを選びました。


第41話は、その旅立ちの記録です。

物語は終わりますが、

彼らの歩みは、まだ続いています。


ブックマークをして、ラストを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ