第21話 影、村に触れる。黒翼戦団の“初襲撃”
夜の村に――
風もなく、音もなく、“気配だけ”が忍び寄る。
ガルドが、焚き火の番をしながら顔を上げた。
「……おい、今の感じたか?」
「感じたよ。嫌な気配」
ステラが即座に短剣を抜く。
普段明るい彼女の顔から、表情が消えていた。
「この圧……普通の盗賊や魔物じゃない」
「じゃあ何だ?」
「“プロの殺意”だよ」
その瞬間、村の端――
森との境界に置いた簡易結界が“パキッ”と音を立てて割れた。
「ッ!?」
ガルドが立ち上がる。
(結界を破った……!?
あれ、小規模とはいえミリアが光魔力を流して張ったやつだぞ……!)
普通の魔物程度では絶対に破れない。
つまり――敵は規格外。
◆ アルト、緊急招集
ドン! ドン! ドン!
ガルドが警鐘を鳴らすと、
家々から明かりが灯り、村人たちが顔を出した。
「な、何が起きたんだ!?」
「魔物か!?」
「違う! もっとヤバい!」
アルトは外へ飛び出し、ガルドたちに駆け寄った。
「来たのか……“黒い影”が」
「ああ。今、森の境界に……」
ステラが指を差す。
アルトの視線の先には――
森の黒よりも“さらに黒い影”がゆらりと動いた。
一人ではない。
二人、三人……いや十人以上。
そのどれもが、
音を立てず、気配を消し、完璧な動きで村を包囲しようとしている。
(……これが、黒翼戦団……!?
存在そのものが“影”みたいだ……)
◆ 黒翼戦団、村境界へ接触
影の一つが、村の地面を触れずに滑るように近づく。
ステラが息をのみ、アルトの袖を掴んだ。
「アルト……絶対に一人で前に出ちゃダメ。
あれは“暗殺の化け物”」
「分かってる」
そう返した瞬間――
黒い影が一歩、境界を踏み越えた。
ただ、それだけ。
なのに村全体が“殴られた”ような衝撃が走った。
ミリアが悲鳴を上げて倒れ込みそうになる。
「きゃっ……!」
「ミリア!」
アルトが抱きとめると、
彼女の胸の光石が微かに光を放った。
その光が、黒い影の動きをわずかに鈍らせた。
「……反応したか、“光”が」
低い声が影の奥から響く。
(やっぱり、ミリアの光は奴らにとって“重要”なんだ……)
◆ 黒翼戦団長ゾルガ、姿を現す
影の奥から、一際強い圧を持つ男が進み出た。
仮面越しでも分かる。
“格が違う”。
ゾルガ・ブライト。
「創造領主アルト・フェーン。
宰相閣下より通達を受けている」
「通達……?」
「お前を“無力化”し――
必要ならば“消す”」
この場で。
この瞬間に。
さらりと言ってのける。
村人たちが悲鳴を上げ、ガルドが前に立つ。
「ふざけんな!
アルトさまに指一本触れさせねぇ!」
「退け、戦士よ。
お前たちは我々の相手にならない」
その声音に怒りはない。
ただの“事実”。
◆ アルト、迎撃態勢へ
(くそ……守らないといけない。
でも、どう戦えば……!?)
アルトは咄嗟にスキルを開く。
「【地形操作】……!
村境界に“土壁”を、半円状で……!」
──《領地内:土壁展開可能》
──《LE消費:2》
地面が隆起し、村を守る半円状の壁が立ち上がる。
「よし……!」
だが次の瞬間。
黒翼戦団のひとりが、
指先で土壁を“軽く触れた”。
バキィッ!!
それだけで土壁が砕け散った。
「……嘘だろ」
(俺のスキルを……“指一本”で……!?)
ステラが絶望的な声を漏らす。
「黒翼戦団は魔法も物理も超一流だよ……!
アルトの初期スキルじゃ、防げない……!」
◆ しかし、ミリアの“光”が割り込む
その時。
ミリアが胸元を押さえて前に出た。
「やめて……!
これ以上、アルトさまを傷つけないで……!」
光石がふたたび脈打つ。
次の瞬間――
ミリアの周囲に“淡い金色の膜”が広がった。
「こ、これは……?」
黒翼戦団が一瞬足を止める。
ゾルガの声が低く響いた。
「……“光の領域”。
やはり存在していたか」
「光の……領域?」
「説明する義務はない」
ゾルガは一歩踏み出す。
金色の光膜が揺れ、村の中に微弱な風が吹く。
(ミリアの力が……俺を守ってる?
いや、村全体を……!)
◆ ゾルガ、アルトに告げる
「創造領主。
貴様と“光の器”――その共鳴は危険だ」
「危険?」
「それが進めば、古代の“七紋機構”が動く。
世界を揺るがす力だ」
(七紋……!)
ゾルガが手を上げた。
「だが、今日の目的は“試金石”だ。
貴様の能力値と、光の発現条件の確認」
◆ 黒翼戦団、突然の撤退
ゾルガが指を鳴らすと、影たちが霧のように散る。
「領主よ。
次は“本陣”が動く」
「待て! なぜ今日は斬らない!」
「必要がない。
“今はまだ”な」
ゾルガの姿が闇とともに消える。
残された言葉は、静かに夜に溶けていった。
「次は……逃さない」
◆ 嵐の前触れ
静まり返った村で、誰も息を飲んだまま動けなかった。
「アルトさま……怖かった……」
「ミリア、大丈夫だ。
よく守ってくれた」
しかしアルトの胸には、
重く、鋭い確信が刺さっていた。
(このままじゃ……守れない)
(スキルを、もっと……強く使えるようにならないと)
村は、ついに戦争の陰を踏んだ。
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