第13話 覚醒の報告と、封印された真実 王都レギウス視点
王都グランステリア――。
白金の塔と荘厳な城壁が立ち並ぶこの都市も、
夜の帳が降りると違う顔を見せる。
貴族街の奥、宰相官邸。
薄暗い部屋の中で、レギウス・ヴァルトは一冊の古書を開いていた。
その表紙には、古代語でこう刻まれている。
――《七紋書》
世界創造の記録。
(やはり“揺れた”な)
レギウスは静かに目を閉じる。
石板の封印が揺れた瞬間、薄い波動が確かに王都へ届いた。
その反応は……
たったひとりの人間の覚醒を示している。
アルト・フェーン。
(封印が感知するほどの覚醒……
あの少年が、まだ生きていただけでなく、力を発現したというのか)
レギウスの指先が古書をなぞる。
ページには、七つの紋章と、それを守る“属性の民”の記述が並んでいた。
そしてその中心には――
“創造の紋章”を持つ者が必ず世界を動かしてきた歴史が記されている。
(だからこそ、封印した。
世界を揺るがす「創造主」は、二度と現れてはならん)
レギウスは、ゆっくりと息を吐いた。
***
扉が叩かれた。
「宰相閣下、夜分に失礼いたします」
部屋に入ってきたのは王国情報局の黒衣の男。
「報告いたします。
辺境ルーナ領にて、“創造系の魔力反応”を確認。
対象は……アルト・フェーンで確定いたしました」
レギウスは微動だにしない。
「……そうか」
「加えて、現地の魔力濃度。
汚染が急速に回復していることも判明しました。
通常の治癒魔法では説明がつきません」
(やはり……あの子のスキルは“再生”と“構築”の系譜か)
宰相は机の上の地図へ視線を落とした。
王国の大地には、大小様々な“領界術式”が刻まれている。
その中心を操作できるのが、かつての 創造主(ルミナリア統治者) だ。
そして――
同じことを可能にするのが、アルトの“領地創造スキル”。
(世界を作り替える力……
それは同時に、王権を否定する力でもある)
だからこそ、レギウスは封印した。
かつて自分の血族が恐れたように。
***
「宰相閣下。
アルト・フェーンは“危険人物”として処理しますか?」
「……処理?」
レギウスは薄く笑った。
「簡単に口にするな。
本物の“創造主”を敵に回せば、国が消し飛ぶぞ」
情報官が息を呑む。
「では、どうされます?」
「まだ動くな。
あの少年が何を創り、何を壊すのか……
まずは見極める」
レギウスは椅子にもたれ、天井を見上げた。
(だが、野放しにもできん。
いずれ、王家も……世界も……彼を欲するだろう。
その前に、“形”を付けねばならん)
「監視を続けろ。
ただし悟られるな。
アルト・フェーンは、近寄れば反応するぞ」
「はっ!」
男が去った後、
部屋に残るのはレギウスの独り言だけとなった。
「さて、アルト……
私はお前の父を知っている。
お前に流れる血の意味も、な」
古書の隣に置かれた一枚の手紙。
そこには、かつての盟友――
“フェーン家の領主”が残した走り書きがあった。
――「息子は世界を救う器ではなく、
世界を壊す器かもしれない」
(だから私はお前を遠ざけた。
だが……封印が揺らいだ以上、もう誤魔化せん)
レギウスの瞳が鋭くなる。
「アルト。
お前が覚醒したその瞬間から――
この国の未来はお前を中心に回り始める」
その言葉は、王都の夜闇へ静かに消えていった。
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