天さん初バトル!?
「ちょ、離れろって」
「嫌」
「はぁ」
まあ千年も会ってなかったんだ仕方ないか。
「じゃあ下に着いたら先ず桜に会いに行くから」
「桜?」
「遠縁の子孫かな。俺と波長が近いんだ」
「ふーん」
全く興味が無いご様子。
「あと桜の嫁のつるちゃんと妖狐の久遠がいる」
「妖狐……」
心なしか六花の歩みが早く。あ、忘れてた。六花、動物大好きだったんだ。早く久遠を見たいのか。
「きっと六花も気に入るよ」
六花は何も言わず頷いた。願わくばこれからも世界が平和でありますように。
「桜華」
返事をするまでもない。明らかな殺気が俺に向けられている。
「いるんだろ?」
出てきたのは爺だった。
「やっぱりお前か」
こいつは俺がまだこちら側だったときから俺の事を目の敵にしていた。
「当たり前だろう。もう果たせぬと思っていた復讐が果たせるのだから」
「復讐?」
「そうだ。何故儂が若僧に仕えねばならぬのだ納得いかぬ!」
「俺が彼処にいたのは実力を認められたからだ。あんたにとやかく言われたくないね。それに俺にはもう関係ないね。行こう六花」
俺達が立ち去ろうとしたら。
「ふん、育ての親が親なら子も子だなぁ。穢れた女を嫁にするとは」
「黙れ」
「そこに化け狐も一緒ときとる」
「それ以上口を開くな」
「桜華」
六花が止めようとしてるが、悪い止まれそうにない。
「どうせ身体が目当てなのだろうな」
何カガ切レル音ガシタ。
「六花離れてろ」
「重兵衛逃げろ。貴方では敵わない」
「馬鹿を言うな。こんな若僧に儂が負けるものか。この叡智の神、重兵衛が!」
「ご託はいい。さっさと始めるぞ」
言い終わる前に俺は突っ込んだ。あんな老いぼれが俺の攻撃を防げる訳がない。だが
「なっ!?」
「笑止」
軽く止められた。
「相手の力量も分からず突っ込むとは浅はかなり」
「くっ、まだだ」
今度は接近して回し蹴りを放ったが
「甘い」
また止められた。何故止められる。なら次はフェイントを入れて
「こんなものか」
重兵衛は止めるだけでなく顎に掌を入れてきた。
「ぐっ」
ヤバッ脳にきた。ん?ちょっと待て今あいつフェイントに全く反応しなかったぞ。もしかして奴の能力は
「気づきおったか」
「お前の能力は心を読むことだな」
「その通り。儂の能力"影枯読心"は心を読む。儂には勝てんぞ」
確かに心を読む力は厄介だな。でもそれで負けていいわけがねぇ!仕方ねぇ力を使うぜ。
「何かする気だな。だが何をしてもこの儂には勝てん。大人しく殺されるが良い」
「それは無理だな。俺はまだ桜とつるちゃんを見守らなきゃいけない。だから加減はしねぇぞ!」
俺は能力を開放する。能力を使っている間、俺の体は雷になる。
「な、なんだそれは」
「お前に見せるのは初めてだったな。これが俺の力"蒼天雷月"だ」
「フ、フン。力を使ったところで心を読む儂には勝てん」
「行くぞ」
俺は重兵衛に接近して掌打を打ち込みに行った。
「は、速い!だが避けられん程ではないわ」
「避けたか。でも、まだ俺は全力じゃないぞ」
力を使っている間の俺の速さは雷とほぼ同じまで上がる。
「だが心を読めばお前の攻撃など」
「じーさんアンタの能力は確かに強力だ。でもアンタはその能力を過信しすぎた。それがあんたの敗因だ」
「儂が負けるなど有り得ぬわ!」
俺はまた掌打の構えをとる。
(大口を叩いたわりにまた正面からの掌打か、青いわ。カウンターをくらわせてやる)
俺の姿が消える。
(きたか。迎え撃ってく)
「"雷牙掌"」
(は、速すぎる)
「グハァッ」
アンタの能力は心を読んでわかっていてもアンタ自身が反応出来なきゃ意味がない。つまり知覚外のスピードで攻撃すれば良かったんだ。
「死んだのか?」
「いや、気絶してるだけ。和樹を呼んどいて」
「わかった」
「じゃ行こっか」
六花の手をとって歩き出す。この後は特に障害もなく地上まで来れた。
「ここが下界……」
六花は下界に来るのは初めてらしい。まあ普通神様はみんなそうだけど。こんな嬉しそうな顔をするならもっと早く連れてくるんだった。
「桜華これは何?」
桜の花弁が風と共に舞っている。上でも桜はあるけど散らないから花弁が舞ってるのなんて初めての体験だろうな。
「これは桜だね」
「綺麗」
「気に入った?」
「ああ、こっちは良い風が吹いてる」
「それはなにより」
これからの生活に良い風が吹きますように。
「やっとついた」
「す、すまない」
あれから六花の興味を引いたものを全部説明していたから帰りはいつもの倍以上時間がかかった。
「ただいま」
「おかえり天さ……」
出迎えに来た久遠が固まった。
「どうしたんですか?久お……」
つるちゃんまで固まった。
「二人共どうし……」
結局皆固まった。
「「「その人誰!?」」」
「???」
六花が困ってるなんて珍しい。六花もちゃんと馴染めるかなぁ。まあ、大丈夫か。