つる奪還作戦〜戦闘③〜
「大丈夫なのか六花は?」
「心配しなさんな。六花は強いから」
「それはそうだが……」
「人の心配より自分の心配をしな。どうやら奴さんが来たみたいだよ」
次に俺たちを待っていたのはつるちゃんを連れ去った張本人、怪だった。
「遅かったですね。待ちくたびれましたよ」
「お前は……」
「つるちゃんはどこだ」
「あの女性なら今頃主の所ではないですか?何をされているかは知りませんけどね」
「てめぇぇぇぇぇぇ」
「ストップだ桜」
俺は怪に攻撃しようとする桜を止める。
「お前は先に行け。ここは俺に任せろ」
「なんでだ!」
「よく考えろ馬鹿が。つるちゃんが何かされてるならお前が早く助けてこい」
「……わかった」
「桜様はお通り下さい。主がお待ちですので」
「俺は?」
「貴方はここにいてもらいます」
「先に行く。絶対追いかけてこい」
「言われなくてもわかってるよ」
桜は怪の横を通り先に行く。
「本当に何もせずに通すとはなぁ」
「主の命令ですので」
「さしずめ鍵っことか」
「そこまでわかっているのに行かせたんですね」
「あいつは強い。それにお前を止めるには俺一人の方が都合が良い」
「なるほど。しかし貴方は私を止められない」
「やってみなけりゃわからんよ」
俺は戦闘体制をとる。こいつの能力は一度見たが全くわからない。
「"蒼天雷月"」
俺は能力を使い身体を雷にする。能力戦ではいかに能力が強くとも能力を使われる前に相手を倒してしまえば関係ない。俺は雷の速度で怪に拳をぶちこみにいく。この速度でいけば確実に当たるはずだった。
「当たっていませんよ」
先程まで怪がいたところには姿はなく別の場所にいた。
「またそれか」
「これが私の能力です。能力がわからなければ私には勝てませんよ」
また桜華の視界から怪の姿が消え桜華の身体に攻撃が当たる。しかし雷に物理攻撃は効かない。
「面倒ですねその能力」
「だろうな」
奴の能力がどんなものでも発動する前に攻撃すれば……。再び俺は雷化する。しかも今度は予備動作なしに。だが雷の速度の攻撃はまた避けられてしまった。
「雷と私の能力発動速度では若干雷の方が速いみたいですね。かすってしまいました」
能力を発動すれば雷よりも早く動けるモノなんてそうそうないぞ。しかも常時発動はできないようだ。そんなものあるのか?
「貴方の能力は本当に規格外だ。自身の身体まで変貌させるとは」
「これは誰でもできるようになる」
「私には無理ですね。時間がありません」
時間……。なんだ、何か引っ掛かる。何なんだ。
「そろそろ決めますよ」
こいつの攻撃はこいつが消えると同時に当たる。俺のような高速でも少しの時間差はあるがこいつの攻撃はそれがない。
「いきますよ」
怪の姿が消え桜華に攻撃が打ち込まれる。しかも今度は同時に五本打ち込まれた。
「お前の能力がわかった気がする」
「ほう。そうですか」
「お前……時間を止められるな?」
「こんなに早くバレるとは思いませんでした」
「何でそんな能力があるのにお前は主とか言う奴に従っているんだ?お前の能力があるなら何でもできるだろう?」
「愚問ですね。私がしたいのは自分の願望を満たした主を見ること」
「嘘をつくな。お前みたいのは下についたとみせて自分のしたいことをしてるんだ」
「そこまでお見通しですか。ですが私のしたいことは変わりません。歴史に名を残すという自らの願望を叶えたい男の末路を見たいのですよ」
「歴史に名を残す?」
「短い自分の人生を永久に残したい」
「そんなことをしたいのか」
「そうらしいですよ」
「悪行を重ねても歴史に名は残らんよ。俺が良い例だ。歴史は人のいいように作り替えられる」
「その通りですよ」
「わかっているのに止めないのか」
「だから言ったでしょう。私はただ結末が見たいだけです。あの男がどうなろうと知ったことではありません」
「最低だな」
「性分ですので」
「その男は何をする気なんだ?」
「言う必要もないと思いますが教えて差し上げましょう。あの男は自らの能力を使い。上に攻め込む気ですよ」
「たった一人でそんなことをしても無駄だ。やられて終わりだ」
「はい。しかしあの男の能力なら善戦できますよ」
「それほど強力なのか」
「私や貴方ほどではありませんが」
最悪だな、こいつは。
「私はそろそろ行くとします」
「そうか……」
俺も桜の後を追おうとすると地面が揺れた。
「な、なんだ!?」
「恐らくあの男が能力を解放したんでしょう」
その男は一人で上の奴らとタメをはれるんだろう。桜が危ない。
「早くいった方がいいんじゃないんですか?」
「言われなくとも!」
俺は雷化して桜の元に急いだ。
「あなたの息子なら問題ないと思いますけどね」
そろそろクライマックスです