つる奪還作戦〜戦闘〜
時は少し遡り桜華たちが和樹たちと別れたところまで戻る。
「これからの方針について話すぞ。多分相手は足止めを用意しているだろうからそれを潰す」
「三人で仕掛けるのか?」
「いや、一人だ。俺達はつるちゃんを取り返せれば勝ちなんだ。だから桜を先に進めさせる」
「なんで俺なんだお前の方が強いだろ」
「お姫様を助けるのはいつだって王子様なんだよ」
「そういうこと」
「……わかったよ」
「そんじゃ六花頼んだよ」
「頼まれた」
「?なんのことだ?」
「やっぱり君はまだ精進が足りないな」
桜はまだ気づいていなかったかが桜華達の進む先には既に敵が待ち構えていた。
「俺は雷化するからいいけど桜はどうする?」
「何とかするさ」
「待ちくたびれたよ、お三方」
「勝手に待ってたのはそっちだろ」
「そうだけど、もうちょっと早く来て欲しかったな。それでやっぱり一対一?それとも三対一?」
「お前相手にそんなことしないよ」
もう既に桜華は能力を発動し雷化していた。
「そんじゃ先いくね」
桜華が隣を通るが目の前の女は見向きもしなかった。
「おいおい、通しちゃっていいのか?」
「私に任されたのは戦力の分散。それに彼とあなたは通せって言われてるし」
「なら通らせて貰おう」
桜が女の横を通ろうとしたら
「だけど殺せるやつは殺した方が良いよね」
桜に襲いかかってきた。
「残念ハズレだ」
しかしその桜は攻撃すると消えてしまった。
「俺も先にいかせて貰おう」
「幻影を使えるなんて凄いねあの子。それで貴女が私のお相手?」
「そう」
「すぐに終わらせてあの二人を追わせてもらいますね」
「それはこっちも」
「自己紹介がまだでしたね。私は縁。能力は"開構門戸"詳細は味わってみてください」
「六花。能力は"千変春風"」
二人は相対する。先に動いたのは縁だった。獣のごとき速度で六花に迫る。しかし六花は焦った様子もなく縁を迎え撃つ。
「やりますね。これならどうですか」
縁が懐から取り出したのは小刀だった。縁はそれを六花に投げる。だがなんの工夫もしていないそれは難なく六花に避けられる。
「それだけ?次はこっちの番」
六花がカマイタチを射とうと風を圧縮していると背後からまた小刀が飛んでくる。なんとか避けるがどこから飛んできたのか全くわからなかった。
「不思議そうな顏してる。これが"開構門戸"の能力よ」
また縁は小刀を取り出す。
「貴女は私の能力もわからないまま死んでいく」
縁の投げる小刀は避けても別の場所から飛んでくる。だが六花には一本も当たらなかった。
「どうして当たらないの?」
「秘密」
このままではじり貧だった。六花は縁の攻撃方法がわからず六花には攻撃が当たらない。先に動いたのは六花だった。風を纏い縁に近づいていく。
「今度こそこっちの番」
六花の風を纏った腕が縁に迫る。だが縁は避けるそぶりも見せず六花の腕が縁に突き刺さる。
「これで終わり」
確かな手応えを感じた六花だが次の瞬間自らの目を疑った。
「なんで?私はまだ闘えるよ?」
常人ならば内蔵が潰れるほどの衝撃を受けてなお縁は立ち上がった。それもなにもなかったのかの様に。
「ありえない。手応えはあった」
「でも効いてないんだよ」
「なら」
六花は距離をとりカマイタチを放った。
「届かないよ」
しかしカマイタチは縁に届く前に消えてしまった。
「貴女の攻撃は私に届かないし効かない」
「でも貴女の攻撃も届かない」
二人の攻撃はお互いに届かない。この戦いは長期戦になると思われたが縁の言葉でそれはなくなった。
「なんか飽きてきちゃった。もう終らせよ」
縁がそう言って小刀を持った手を伸ばすと手の先がなくなっていた。なくなった小刀は六花の背中を貫いていた。
「わかった。貴女の能力は門を開くこと」
「正解。わかったところでなんにもならないけどね」
背中に刺さった小刀を抜いて再び六花は距離をとる。
「遠距離からはやめておいた方が良いよ」
縁の言葉を無視し六花はカマイタチを放つ。
「もう手加減はしないよ」
六花が放ったカマイタチは一度消え、後ろから六花に迫ってきた。
「私に風は効かない」
カマイタチは六花を切り刻むことなくただの風になってしまった。
「もーつまんない」
「貴女の能力はわかった。私の勝ち」
「能力がわかっても貴女は私に勝てない!」
縁が再び門に手を入れる。しかし小刀は六花に届かなかった。六花の周囲には風の障壁が展開していた。
「また貴女の攻撃は届かない」
「でも貴女の攻撃も届かない」
「これなら届く」
六花は風に乗り能力を発動させる暇なく一瞬で縁の元に行き。顎に掌打を打ち込む。
「これで動けない」
顎に完璧に入り。脳震盪を起こした筈だった。
「なんで?私はまだ動けるよ」