つる奪還作戦〜side和樹②〜
「んであいつの能力は何だったの?四季」
「不可視の刃による斬撃です」
「そりゃきっつー」
「それに自動で防御してきます」
「ありゃりゃ完璧だね」
「何言ってるんですか完璧なんてありえません」
「そうだね。完璧に見えても綻びはある」
「だから私たちで」
「アイツを倒そうか!」
「話は終わったか?」
「待ってくれてるなんて優しいね」
「お前らみてぇなカスが増えたところで何も変わらねぇからな」
「やってみなきゃわからないっ!」
二人は別々に跳ぶ。
「ひとつの刃では二人で同時に攻撃すれば防げないはず。藍」
「わかってる。"針糸操身"」
四季は薔薇の鞭で藍は自分の糸で祭を攻撃する。だが
「誰が俺の"刹幻鋼刃"の刃が一枚なんて言った」
二人の攻撃は見えない刃に阻まれ、祭に届かなかった。
「嘘……」
「冥土の土産に教えてやるよ。俺の"刹幻鋼刃"の最大展開数は五だ」
不可視の刃を超えられない二人にとっては明らかに不利な状況だったが二人は笑った。
「何がおかしい」
「おかしいんじゃないんです」
「楽しいんだよ」
そう二人はこの圧倒的に不利な状況を楽しんでいたのだ。
「なんだぁ頭おかしくなったか」
「なってないよ。思い出したんだ」
「おじ様の言葉を」
「「『駄目で元々、ならそのまま突っ込め』」」
「はぁ?意味わかんねぇよ」
「わからなくて結構」
「お前はここで倒されれるから!」
またも二人は突貫する。それしか策がないから。
「お前の攻撃を防げないなら」
「攻撃させなければいい」
「「攻撃は最大の防御也」」
二人の猛攻は確かに祭の攻撃の手を止めた。しかし二人の攻撃も祭には届かない。
「チッしゃらくせぇ」
祭は二人に攻撃しようとするが攻撃の前に刃は防御にいってしまう。
「貴方の刃は攻撃は手動、防御は自動」
「つまり攻撃し続ければアンタは攻撃できない」
二人の言う通り祭は防御しかできなかった。
「お前らの攻撃が止んだときがお前達の最期だ」
「その通り。だからこれは私たちとアンタの根比べだ」
二人の攻撃はまだ続く。四季が薔薇の鞭で蔓で枝で花で。藍が糸で針で操作した岩で攻撃する。祭はそれを悉く斬り刻む。
「はぁはぁ」
「もう終わりだな。どっちが先に死にたい?」
二人は答えない。
「ま、仲良く一緒に殺してやるよ」
祭が手を振りかぶった。
「ぐっ」
「やっと効きましたか」
「な、何をした」
「種を差し上げました」
「俺には自動防御があるそんな攻撃は届かない筈だ」
「この種は血の臭いが濃いところに行くんです。それにいくらご自慢の刃でも目に見えない程小さい種は斬れないでしょう?」
「なるほど。あの攻撃は時間稼ぎってことか」
「ええ、私一人では勝てませんでしたが私には仲間がいましたから」
「俺の敗けだよ。まあまあ楽しかったぜ」
「さようなら」
二人はこの場をあとにした。二人がいたところには真紅の薔薇が咲いていた。
藍が四季に加勢した頃和樹達は次の敵と遭遇していた。
「次はアンタって訳ね」
「その通り。貴方達はこの私、陳に倒されるのです」
嫌いなタイプだこれ。自己陶酔してやがる。
「それでは始めましょうか」
「どうする?和樹」
「うーん、頼めるか?」
「もち」
この戦いは敵を何人倒したかじゃない。つるちゃんを奪還できれば俺達の勝ちだ。
「絶対追いつけよ」
「あいあい」
和樹は紗耶香を残して先に進む。
「止めなくてよかったの?」
「えぇ。私のショーを見るのは一人で十分です」
「あっそ」
自分の役割ぐらいきちっとこなしなよ。
「それではショーを始めましょうか。"重石玉砕"」
陳の周りの岩が中に浮く。
「げ」
中に浮いた岩が一斉に紗耶香に向けて落下する。
「"海淵乱舞"」
紗耶香は水の壁で防ぎきる。
「あっぶなーい」
「水を自由に操る力ですか。これは楽しみだ」
「なんでこんなのばっかなの?」
「これはどうしますか?」
再び陳が岩を浮かせる。しかも今度は
「さ、さっきより速い」
咄嗟にかわそうとするが紗耶香の身体は重りが付いたように動かず岩の雨に呑まれた。
「もう終わりですか。ガッカリです」
陳が先に行った和樹を追おうとしたら
「勝手に終わらせないでくれるかな?」
後ろで紗耶香が立ち上がった。
「アレを避けきったのですか」
「ちょーっと危なかったけどね」
避けきれないとわかった紗耶香は自身に当たりそうな岩だけ撃ち落とした。
「アンタの能力重力操作ね」
「もうわかりましたか。確かに私の能力"重石玉砕"は自在に重力を操る能力です」
「ばらしちゃって良いの?」
「えぇ、私の能力はわかったところで何もできませんから」
「確かにキツいね」
side和樹はあと三話程続きます
二十はいかないと思いますがあと何話続くか自分でもわかりません