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その1 里への帰還

翌朝、目覚めれば、商人たちが暖かい朝食を用意してくれていた。

カレンは、むさぼるように食べまくっている。うん、いつものカレンだ。

周りを見渡せば、死屍累々の戦いの跡。吹く風は、竜の血の匂いがした。


朝食を済ませたら、また魔法が使える二人と二匹が集まって、土魔法で地面に大きな穴を掘った。

損傷の少ない群竜の雄雌の死骸を一つずつ、俺のストレージに保存する。これは生き物係としての、後日の研究材料だ。


そして、残りの死骸は、タローがボットで掴んで運んで、掘った穴に投げ入れていく。全部で二百体を超える数だったという。


最近は急速に数を減らしていて、めったに遭遇しない群竜が、なぜこんな平野に集団で現れた? 調べてみる必要があるなと、タローと話をした。


今日はサホロまで戻る。

中型ボットが牽く馬車の前を行くのは、人の背丈の半分ほどの高さに浮かんで滑るように飛ぶウォーゼル、その上に跨る俺と、馬に乗ったクールツ団長だ。馬車の上空にはビボウに跨るカレンが周囲を見張りつつ、馬車の後ろには馬上の騎士たちが続いていた。


馬車の中は荷物で一杯なので、クレアには搭載艇で先に帰れと言ってある。何やら、魔王様から話しがあるとかで、今頃は船の中で魔王城に置いたボット経由で顔を合わせているはずだった。


「私の二人の部下は残念だったが、カレン殿の豪剣にビボウ殿、そしてウォーゼル殿が加われば、群竜の二百頭をほふれるのですから、飛竜と竜騎士はやはり凄まじいものですな。」馬上からそう声をかけたクールツ団長は、俺とクレアを数のうちに入れていない。


まあ、それでいい。「そうですね。獣人族は頼りになる我らの友ですし、飛竜の加護は今後とも頼みにしたいものです。」俺は、そんな答え方をしておいた。

全てを知る賢い我が友ウォーゼルは、ふんふんと頷くのみだった。


群竜との戦いを有利にしたのは、実は魔族クレアの多彩な攻撃魔法だし、勝敗を決定づけたのは、実はタローが操作するボットからの重力子砲の斉射による援護だった。


あの時にタローが操作していたボットは、十機近かったはずだ。各ボットから地上を灯火で照らしつつ、的確に敵に重力子ビームの狙いを定めた。しかも自らの船を浮かべ、俺との交信を維持しながらだ。


そして見えないところでも、外気圏には中継機を上げ、竜族には全球配置のボットから魔素を生成し、ついでに俺たちが急いで飛びだしてきたサホロの里では、何食わぬ様子で映写会を粛々と進めていたはずなのだ。


いつの間に、こんな超並列処理パラレルプロセシングができるようになった? これは、後で確かめておく必要があるな。


 ◇ ◇ ◇


昼を過ぎた頃、商隊はサホロの南門に到着した。

門を通過した俺達一行を、サワダ商会のカエデとゲルタン夫婦、そしてサナエが待っていた。

サナエは、カレンを見るなり走り寄って彼女を抱きしめた。


「カレン、無事でよかったよ~!」

「旦那様とクレアのお陰で、生きて帰れました。」大柄なカレンは、頭一つ下に抱きついて泣くサナエを、優しく撫でまわした。


人族と獣人族の二つの治療院を仕切る、筆頭薬師にして俺の第一夫人。サナエは、クレアとカレンよりは年上だし、苦労して育ったせいもあって、いつもは二人の姉の風格を漂わせているが、こうして抱きつけばまるでカレンの子供のようだ。


ゲルタンが、近づいてきた。

獅子奮迅ししふんじんの活躍だったな、見事だった。我が妹を誇りに思うぞ。」そう言って、カレンを称える。


ゲルタンはカレンの双子の兄で、今はこの里の商家サワダ商会の婿に入っている。妻のカエデが見初めた、強壮朴訥にしてイケメンな獣人竜騎士で、勿論いざとなれば戦闘狂だ。カレンの兄だから、俺の義兄ということになる。


「そして、飛竜のお二人の圧倒的な強さ、クレア様の大魔法、ジローの魔法剣も比類ないものだった。」どうやらゲルタンは、既にタローのボットから戦いの様子を見て、事情を察しているらしいな。


「あの動画は、むやみに公開するなよ。刺激が強い。」俺は、頭の中でタローに言った。

「分かっている。サナエとゲルタンだけに見せた。だが、魔王城の王族とゲルト、そして南の里のウィルにも見せておく必要があると考えている。」


なんだ、ずいぶん拡散させるんだな。今後の群竜への対策ということなのか?

「そうだ、今回の大群の出現は明らかに異常だ。対応策を用意する必要がある。」

タローは、この先に思いを巡らせているようだった。(続く)

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