・・・ 次元の狭間
タローが配置した、地球を取り巻く複数の大型ボットによる網。
その探知網にかからない次元の狭間から、人類より遥かに古く、女神キュベレの陣営が取り組む人類文明の保護に異を唱える勢力が、地上を見下ろしている。
◇ ◇ ◇
「失敗した。うまく抹殺対象を誘き寄せたのだが。」
「要素は二つ、一つ目はあの魔族の女だ。強力な全体魔法が想定を超えていた。これまでのデータでは、あの女にはあれほどの威力は出せなかったはずだ。」
「魔法の作用が、以前より増したのだ。」
「同意する。魔素とやらを消費する魔法の技術は我々には未知だが、時間と共に威力を増すとの推論が成り立つ。」
「あれが最大出力と捉えて良いか?」
「威力が増大する可能性を、無視すべきではない。」
「常に最大値を発揮できない有機生命体の欠陥が、我々の判断を曇らせたのだ。」
「魔族の集落を襲わせた別動隊も、想定外の魔法による被害を受けた。」
「魔法とは、厄介なものだ。」
「もう一つ、あの舟艇に搭載されたAIだ。あのような原始的な装置が、多数の探査端末を同時に操作し、しかも重力子ビームの一斉射で抹殺対象を援護した。」
「加えて、我々には走査できない何らかの方法で、AIと抹殺対象との間で連携が取れていた形跡がある。」
「あれ如き装置の性能を、我々が見誤ることはない。未知の演算能力の存在を推測する。」
「加えて、群竜の攻撃性が想定より低かったが、データ不足による誤差の可能性もある。」
「地震を起こし、駆り出した群竜を導いて商隊を襲わせ、あの飛竜と獣人族の騎士を脅かす。そして、誘き出した抹殺対象を葬り去る確率は、非常に大きかった。」
「だが、失敗した。」
「今回の一連の作業は、我々独自の判断で実施したものである。くれぐれも主上の耳には入れないことを確認する。」
「同意する。」