その4 鎮魂碑
俺たちは魔王城内に招かれた。
大広間では魔王様と王妃様が、笑顔で俺たちの活躍を褒め称えてくれた。
迎えに来てくれた皇子二人、そしてウィルとマサエも揃って、皆で着席して円形のテーブルを囲む。
「スルビウト様、お言葉通り我らはただ見守るのみ。そして危機が去ったことを、大いに喜んでおります。」と魔王様。
「美しくも恐ろしい火の雨が降りました。皆様ご無事、何よりでございます。」これは王妃様だ。
「ふふん、言ったであろう。儂には、この未来が見えておったのじゃ。儂が寿命を全うするのは、もう少し先の事よ。」魔人はニンマリと笑っている。
スルビウト婆様。その自信は何処から来るのですか。まあ、確かに、あなたの魔法は凄かったし、被害は最小限で食い止められましたけど。
「婿殿も、ギランもクレアもカレンも、ようやってくれた。」魔王様がそう言うところを見ると、どうやらタローはこの城に置いてある小型ボットで、防衛戦の実況中継をしていたらしい。
「ところで、城の前に着陸してから、何事かあったようですね?」王妃様が、無邪気に聞いてきた。
そう、着陸したのは城からも見えていたでしょうが、そこでまさか! 待ち伏せを喰らうとは思っても見なかったです。
俺は超種族との一部始終を話した。危うく殺されそうになり、皆の力で何とか切り抜けたことを。
「何と! その宿敵が待ち構えておったのか! よう倒した。」
魔王様は激怒した。
「その汚らわしい燃え残りは、すぐに遠ざけよ! 森に運んで、魔獣のエサになればよし、朽ち果てるまでそのまま捨て置くがよい!」
そこでカレンが、すっくと立ちあがった。
「恐れながら魔王様、憎むべき敵とは言えど、骸をそのように扱うは、武人にあるまじき振る舞いでありましょう。ここは丁寧に葬るべきと考えます。」
うん、とどめを刺したカレンだから言える言葉だな。
アビオン皇子が、席から身を起こす。
「何を言う、カレン殿! この星を滅ぼそうと企み、魔人様を、そしてお前の大切な主人をも殺めようとしたのだぞ。」
魔王様は、片手を上げて息子を制した。「よい! アビオン。」その声は、先ほどとは打って変わって落ち着いていた。
「カレンよ、お前の言う通りじゃ。儂としたことが、武人の心得を問われるとは、いささか血が滾っておったわ。」
王妃様が、それを見て小さく頷いた。
「殊勝ですよ、カレン。では、お前の言う通り、その場所に塚をつくり、遺骸を収めましょう。その者への鎮魂の形として、そして我らの勝利の証しとして。」
「そうです。オーレスに、鎮魂碑の建立を指揮させましょう。それで宜しいですね、あなた。」王妃様が、そう言って魔王様を見やる。
「うむ、それでよい。頼んだぞ、オーレス。」
「はい。」
「アビオンよ、これも一つの残心じゃ。そう思わぬか?」
「はっ、武人の義、しかと心得ました。」
そうそう、魔族ってこうなのだ。
その身をもって戦うのが大好きだし、血気盛んだが、妙に義を重んじる。まあ、俺も嫌いじゃないんですけどね。
それにしても、カレン。ただの戦闘狂だと思っていたけど、倒した敵を思いやり魔王様に具申するとは、お前も成長したな。
時空魔法を習得して大賢者に届こうとするクレアも、そして敵を見事に屠ったカレンも、俺には過ぎた嫁だ。
腹に子を宿しながら、俺の危機に必死で立ち向かってくれたこの二人の嫁を、俺はこれからも大切にしなければならない。
◇ ◇ ◇
話が尽きないところだったが、俺たちはサホロの里に引き上げることにした。里では、もう一人の愛する嫁 サナエが、俺たちを待っている。どうせタローが、実況中継していたのだろうけれど、
スルビウト婆様とウィルは、今日はこの魔王城に留まることにしたという。宴が催されるらしいから、せいぜい卵料理を楽しむといいよ。
皆に見送られて、俺たちは搭載艇に乗り込んだ。無人のサホロ号は、タローの自動操縦であとから回収することになっている。
魔王城から見下ろすこの場所に、やがて鎮魂碑が立つ、か。
死んだ奴の名前を刻むのかな? ウルトなんちゃらとか言ってた、あとでキュベレに確認しておこう。
俺はそう思いながら、この場所を後にした。
(厄災編 了)




