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その2 閉じ込められる

突然の会議に呼ばれて、あとをクレアに頼んだ俺は、自室に走った。

部屋に入れば、画面の向こうにはウィルとホム爺が待ち構えていた。向こうは、魔人号のボットと繋がっている。


俺の着席を待っていたタローが、状況報告を始める。「大型探査ボットが、ホム爺の伝えてきた座標に到着したのが、今から30分前だ。」

「地上に、例の発射塔の先端部を確認したので、着陸信号を投げてみたら関門ゲートが開いた。」なるほど、今やタローは魔動機を操作できるようになったので、そんな芸当もやれるのだ。


「見下ろす里の内部は明るかった。最下層に、まだ魔素がある証拠だろう。そして、ボットをそのまま降下させて、塔の真下に着陸させたところで何故か上空の関門ゲートが閉まり、閉じ込められたと言うわけだ。」


「着陸したから、自動的に閉じたんじゃないのか?」

俺の発言に答えたのは、ホム爺だ。「私のいた里と仕様が同じであれば、関門ゲートを開けた魔動機側から、扉を閉める操作を行う必要があるのです。何者かが、故意に関門ゲートを閉じたと思われます。」


「ボットとの通信は問題ないのか? ボットは動けるんだよな?」

「極めて感度良好だ。リモート操縦に問題はない。」

「だったら、関門ゲートを重力子砲でぶっ壊して脱出するしかないか。大型ボットだから、打てばかなり強力だぞ。」


「まあ、それは最後の手段だな。誰かが故意に閉じたとしたら、設備を壊されるのはその誰かにとって面白くなかろう。」


俺は、しばし考えた。

「まずは順当に、接触コンタクトを試みるべきだろうな。ホム爺よ、ボットに顔を映して、周囲に声をかけてみてはどうだ。」ここは魔人のしもべたるホムンクルスが適任だろう、と俺は考えた。


「そうですな、私の出番ですかな。」ホム爺の発言を受けて、タローが言う。「では、ボットの周囲にホム爺を大写しにする。何か、挨拶をしてみてくれ。」


ホム爺は、心得たとばかりニッコリと笑顔を作り、次いで大声で呼ばわった。「お初にお目にかかります。私は、ここより海を渡って東の島から参りました、ホムンクルスめにございます。」


しばらくして、「おっ、神殿から誰かが出てきたようだ。」タローがボットのカメラで人影を見つけて、ズームしてくれた。

「額に小さな角がある、魔人のようだ。身長は160cm、先日のスロキューテニよりは大柄だな。」タローが観察結果を伝えてきた。

魔人だと? すると、まだ生き残りがいたという事か?


簡素なモノトーンのチュニックのようなものを着て、足にはサンダルのような履物。スロキューテニとほぼ同じ格好だな。白い髪の毛は短くまとめられて、それを割って出る両の角は小さくて黒っぽい。魔人の歳は分かりかねるが、かなり年寄りに見える。


その魔人は、着陸したボットに近づくと、しげしげと観察している。

「なんじゃい、得体の知れないものが降ってきたかと思えば、身内だったか。この魔動機は初めて見るのう。ホムンクルスよ、おぬしは誰に仕えておる?」

「はい、長老スロキューテニ様でございます。」ホム爺は、ボット表面のディスプレイからうやうやしく頭を下げた。


「おお、懐かしい名を聞く。だが、あの部族は、とうの昔に魔素を求めて旅立って、その後の消息は途絶えたはずじゃが?」

「はい、濃い魔素を得ることが叶わず、異次元へ転移されました。」

「そうか、この世界を見限ったか。して、お主は今ごろ何をしに来た。お主は主人の里を守るのが仕事であろうが?」


「今の私は、近くの魔族の里長さとおさに仕えております。先日、スロキューテニ様からお許しをいただきました。」

「先日とは、わけの分からぬ事を言う。あ奴らが里を捨てたのは、儂がまだ若かった頃、今から数百年の昔のことじゃ。」


えっ! 随分と長生きだな、この魔人。そして、これは順を追って説明しなけりゃな、と思って見ていたら、ホム爺の横にウィルが顔を出した。

「魔人様、魔族の里長ウィルでございます。ここはひとつ、じかにお目にかかって、お話させていただけませんか?」ウィルめ、相変わらず大胆な奴。


魔人は、いかにも面食らった顔をした。こいつもホム爺並みに、表情が豊かだ。

「構わんが、どうやってここまで来る? まさか魔動機で海を渡るというのか? もはや地上には魔素が無かろうが。」

「いや、そもそもこの魔動機は、どうやってここまで来れた? 中にホムンクルスが乗っているとも思えんが?」


これは、説明していると長引くばかりだ。

「すぐに着くから持っていろと、伝えておけ。」俺がウィルに言い、ウィルがそれを魔人に伝えたので、俺はとりあえず通話を終わらせた。


さあ、忙しくなるぞ。ウィルの魔人号では一日がかりだ、ここは俺の搭載艇でウィルたちを拾って出かける必要があるな。

俺は治療院に走って戻る。ちょうど患者は途切れ、治療院は仕舞う準備をしていた。


「サナエ、悪いが急用ができた。クレアを借りるぞ。」

「いいけどさ、ジロー先生! クレアは身重(みおも)なんだから、無理させちゃだめだよ。」サナエに釘を刺された。

(続く)

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