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その1 救援

上映会ではタローのナレーションが流れ始めたところだったが、俺の頭の中にはタローの別な声が響いた。「ジロー、カレンとビボウが守る商隊が会敵(かいてき)した。助けが必要だ! すぐに向かってくれ!」


これは、映写会どころではない。

周囲にいた二人の嫁サナエとクレア、そしてチビ竜たちと動画を楽しんでいた長年の友:飛竜のウォーゼルにも声をかけて、俺たちは治療院の建物に走り込んだ。


 ◇ ◇ ◇


サワダ商会の商隊馬車が、今日は東のユベオツからこのサホロの里に戻る途中なのだ。

ユベオツは、その向こうに広がる穀倉地帯の入り口となる集落で、サワダ商会はここで米や麦を仕入れ、サホロの里に卸すほかに、更にハルウシやオタルナイの海辺の里まで荷を運び、商売をしていた。


そして俺の第三夫人:獣人族のカレンが、ママ友の飛竜ビボウにまたがって、竜騎士としてこの商隊を護衛していた。

二度目の出産で生まれた男の子への授乳期も過ぎ、子らをほかの嫁に託して久し振りに育児から離れる事ができたカレンの、竜騎士復帰の旅だった。


彼らが出発した直後から、長雨が降り続いた。これで馬車での移動から始まって、集荷と積み込みが大きく遅れたところへ、雨が上がれば昨日の大地震だ。


このサホロの里も大きく揺れたが、商隊に同行しているボットからの報告では、ユベオツ辺りも揺れは激しかったようだ。


山崩れも多発して、里を結ぶ道も土砂に埋まった箇所がある。お陰で商隊のサホロへの帰還も遅れに遅れていた。


 ◇ ◇ ◇


カレンと組む飛竜のビボウは、ウォーゼルの妻だ。だから一緒に行こうと誘った。

治療院の奥の納屋に置いてある搭載艇に向かって走りながら、俺は二人の嫁に事情を話した。


「私はお留守番、子どもたちを見ているわ。私が行っても戦力にならないもの。」納屋に駆け込んだところで、第一夫人のサナエが言う。もっともだな、ではウォーゼルのチビ達を含めて、子供らをよろしく頼む。


第二夫人のクレアは魔族で、魔法が使える。それも飛び切りの術者だから、頼りになる。俺とクレアはエアロックから船内に駆け込んだ。

全長10mを越える図体のウォーゼルは、搭載艇後部のハッチからスルスルと滑り込む。


「準備はいいか、出すぞ!」この船のAI:タローが船を急上昇させる。いつもとは違って最大加速だ。もっともこの船は重力波推進だから、慣性は打ち消されていて加速度は感じない。しかし、地面には衝撃波を残したかもしれないな。


広場にいて動画に夢中で見入っている里の民は、近くの納屋から急発進したこの船を目に留めることはできなかったろう。


ただ、納屋の上空の空気を切り裂いて急上昇する船が、局所的な陰圧を発生させ、土埃つちぼこりを巻き込んだ突風が吹きあがったのを、目に留めた者はいたかもしれない。

(続く)

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