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その3 護国卿の息子

「父上から、この四人で貴殿らの討伐隊に参加するよう命を受けた。存分に使ってもらいたい。」アビオン皇子が、会議の口火を切った。


「旦那様、アビオン兄様と弟のオーレスは、この王国では母上と私に次ぐ魔力の持ち主です。キラ侯爵も、王家の血を引く強者(つわもの)の一人。この三人は、魔法剣でも後衛からの広範囲魔法でも、きっと役に立つでしょう。」


いやいや、キラのオヤジは司令官クラスだろ。前線で戦ってもらうわけには行かない。しかし、皇子二人の助力は有難い。魔王様、感謝します。


クレアは、残る一人の若い魔族に顔を向けた。

「ギラン殿、久し振りです。貴方もお力をお貸しくださるのですね。」

呼びかけられた魔族の男は、クレアよりは少し年上だろうか。見た目では俺と、多分同じくらいだな。


男は、一瞬苦笑いを浮かべたが、改めてクレアに頭を下げた。

「姫様。私も、あれから多少は腕を上げました。我らの共通の敵、群竜との戦いでは、お役に立ってご覧にいれます。」そう言って、クールツ団長に向き直ると、

「ご挨拶が遅れました。キラ侯爵家の第一子ギランにございます。」と言った。


ふーん。こいつが、かつてクレアが縁談を振ったと聞いたキラの息子か。確かに、あまり強そうではないな。どちらかと言えば、人のさそうな、やさし気な雰囲気だ。と観察していたら、ホムが俺の目線を捉えたようだ。


「ジロー、このギラン坊ちゃまは、先日の戦いで魔人の加護を召喚して、群竜を蹴散らした英雄ですぞ。」

あれっ? ウィルのホム爺みたいに、ここのホムもギランの執事気取りなのね。


キラのオヤジが、待っていたとばかり自慢げに鼻を鳴らした。

「ギランが成人した折に、我が侯爵家の奥義:魔人の加護を継承させましてな。」


すかさずホムが、話を続ける。「ギラン坊ちゃまは、賢者の壁も、竜の見張りも、扱いがお上手です。先日は、我が領地に連なる子爵領に現れた群竜を、ギラン坊ちゃまが賢者の壁を使って滅ぼしたのですぞ。」


ん? 知らない名前が出てきたぞ。

「ホムよ、その賢者の壁ってのは、何だ?」

「おや、ジローも戦ったことのある、あのゴーレムの別名ですな。」ああ、そうだったな。魔族の里で、ホム爺に嫌味たっぷりに言われたっけ。


「じゃあ、竜の見張りとは、あの銀色のスライムのことか?」

「はい、あのスライムは、ダンジョンでは階段の愚者(スケアクロウ)と呼ぶのですが、竜の見張り(リザードワッチ)の別名もあるのです。理由は存じませんが、」


 ◇ ◇ ◇


「ジロー。ウィルたちが到着したぞ。」その時、ボットからタローの声がした。

同時に、演武場に影が重なって、見上げればウィルの魔人号が上空に浮かんでいた。


魔動機は、ふわりと軽やかな降下を見せ、中からウィルとホム爺、そして飛竜が一匹出てきた。すぐにビボウが近寄る。「ジロー、私の弟ヴリルを紹介するわ。」何でも、魔人探索でウィルと知り合って、今ではウィルの里で一緒にいるらしい。


「ジローの兄貴、しばらくだな。」ウィルは、相変わらずのタメ口だった。

血色の良い顔に、がっしりとした体。自信がみなぎっていて、何だか里長の風格が出てきたな。もう三十になったはずだから、見た目では俺より年上だ。


この王国の魔族と挨拶を交わしているところを見ると、親密な間柄と見える。二人の皇子やキラの息子のギランよりも、ウィルは十歳ほど兄貴だ。


ホム爺は、瓜二つのキラに仕えるホムに歩み寄ると、互いの手の平をぴたりと合わせてうなずきあった。あれがホムンクルス同士の挨拶なのかなと思ったら、タローが頭の中で教えてくれた。


「今、二人の間で、高密度なデータ通信を観測した。多分、互いに情報を更新(アップデート)したのだ。」ふーん、それは便利な機能ですね。


「全員揃ったな。実務会合を始めるぞ。」今日の進行もタローだ。

タローは、中型ボットのこちらを向いた面に、付近の地図を表示した。ボットの探査によって得られた、群竜の現在の生息地が詳細に示されている。


「この場にウィル族長に来てもらったのは、理由がある。」そう言って、タローは地図の一部を拡大表示した。


「次に群竜が接触する可能性が高いのが、ウィル族長の治める里なのだ。」地図の上で、集落と群竜の位置が点滅表示された。(続く)

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