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その1 魔王様の登場

騎士団の大広間。これから、群竜討伐の為の作戦会議が開かれようとしていた。


参加可能だった騎士団の面々が二十数名、獣人竜騎士が数名と、彼らを乗せる飛竜。説明する俺の横には、クレアとカレンも呼んである。荒事には向かないサナエは、子供の世話もあるので留守番だ、治療院の仕事もあるしね。


クールツ団長の開会挨拶に次いで、俺とタローの出番だ。

出席者が多いので、中型ボットを宙に浮かべて、一番広い壁に映像を投射する。壁に、タローの顔が現れた。「皆さん、お集まりいただき有難うございます。」


「今日の会議の進行は、このタローに任せようと思う。」俺はそう言って、目でタローに合図した。

「皆さんの目には見えませんが、ボットは全て繋がっており、その全てに私が宿っているのです。」壁のタローが、引き取って話を続けた。


「そして、私のボットの一つは、魔王国の城の執務室にも置いてあります。そのボットの前におられる魔王様から、ご挨拶があります。」


えっ! 何だって? タローよ。聞いてないぞ!

進行を任せるとは言ったが、少しは俺にも話を通しておけよ! 俺はハラハラしながらも、状況を見守るしかなかった。


壁には、迫力のある魔王様の上半身が大写しになった。(たくま)しい体躯(たいく)(けわ)しく怖い顔、クレアの父上つまり俺の義父が画面に出てきたのだ。

「人族の騎士諸君! わしは、魔族の国の王ランベルク三世である。」


大広間の騎士たちは、唖然として画像を見ている。仮想敵種族の、初めて見る魔王様のご尊顔(そんがん)のはずだよね。キモが太くて子細に動ぜず、配下を思いやる事ができる優れた君主、そして実は孫溺愛の爺バカなのは、俺だけが知っている。


竜騎士の獣人たちは、カレンを含めてすかさず椅子から立ち上がるとひざまずいた。そりゃそうだ、彼らにとっては、宗主国の王だからな。獣人族は魔族の眷属(けんぞく)なのだ。

そして、魔王様は話し始めた。


「過去には対立関係にあった事は互いに知るところだが、最近は我らと人族とのいさかいを聞くことはない。むしろ、我が王国に近しい獣人たちが、対等の立場で人族との付き合いを深めていると聞く。儂はそれを嬉しく思い、また時代は変わるものだと考えておる。」


そう言って、魔王様は画面からこちらをめ回した。魔王様が見ているボットの画面には、こちらの画像が映っているはずだ。


魔王様が続ける。「人族の商隊が群竜に襲われ、そしてこの魔王国でも、群竜が集落に押し寄せ犠牲者が出た。」

「幸いなことに、群竜の所在をタローから知ることで、我らは今後に備える事ができる。そこで、群竜を共通の敵として、魔王国は諸君らとの共闘を申し入れたい。」

おお~、と大広間が湧き、その後はしばらくの間、ざわめきが収まらなかった。


 ◇ ◇ ◇


クールツ団長が立ち上がった。

「魔王殿には、共闘と言われたか? それは例えば、共に討伐隊を編成するものと捉えて良いのだろうか?」団長の声で会場は静まり返り、皆が魔王様の返事を待った。

「そうじゃ、こちらからは強力な魔導士を(つか)わしたい。そして、討伐隊の編成そのものは、諸君らに任せたいと思うておる。」


「人族の騎士と獣人族の竜騎士、そこに魔族が加わると言うことですな。」

「そうじゃ、我ら魔族は個の力は強いが、それ故か集団での行動が不得手(ふえて)でな。貴殿らは、統率の取れた動きにけておろう。」


魔王様、人族の団結の強さを、ちゃんと判っていらっしゃる。その組織力に押されて、魔族は追いやられたのだ。火の山の魔素を求めたこともあっただろうけれど、


「その提案は、必ずこの騎士長クールツが、この里の長に申し伝えよう。」

「ほう、その場に人族の君主はおらぬのか?」

「この里には、貴方のような君主はいないのだ、魔王殿よ。私はこの里を守る組織のおさだが、この里全体の長は、皆から推挙すいきょされた別の者がその地位にある。」


「ほう、その者はおぬしより強いのか?」

「剣技では、私がまさっているでしょうな。しかし、里長さとおさは皆の声を聞き、里の利害を調整する能力に優れて、皆の信頼を集めているのです。」


「ふうむ、よく判らぬが、まあ良い。では儂からも、我が王国の守りを命じておる者を紹介しよう。キラ護国卿ごこくきょうまいれ。」


今度は画面に、キラのオヤジが映し出された。おお、久し振りだな。

「やあ、キラ侯爵。お元気でしたか?」懐かしさを感じて、俺から声をかけた。


「これは、これは、ジロー様、そして姫様。ご機嫌麗しゅう存じます。」キラ侯爵は、満面の笑みだ。魔王様にこの場を任せられて、嬉しくて仕方がない風情だな。判り易い奴だが、俺はこのオヤジが嫌いではない。


それからの会議は、討伐隊編成の具体的な話となり、結果、翌日早々に移動手段を持つ俺たちの方から、魔王国を訪ねることが決まったのだった。(続く)

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