第2話 最初の事件 〜調査報告2〜
次の日、メンバーは全員9時には出勤した。
高貴:「さてと・・・エリザベスに行って聞き込みをしたが、「たかし」と名乗っていた男について色々聞き出すことができた。
しかも支払いをクレジットカードで払っていたため、名前も分かった。
村本孝史、悠一に調べてもらった。」
悠一:「村本孝史、35歳。大手機器メーカー「RICO’S」(リコーズ)の営業部に所属。
住まいは神奈川県横須賀市にある一軒家で妻子持ち。」
美雪:「妻子持ちですか・・・。」
大輔:「許せん。」
夏樹:「横須賀から通い詰めていたわけ?」
悠一:「村本は本社がある横浜に在籍。おそらく営業で東京都内を回っていたついでということか。」
智和:「お店には週に3回通い、毎回牧村容子を指名し大金をはたいていたよ。だいたい1回の金額は10万ほど。」
夏樹:「え?RICO’Sってそんなにお給料いいわけ?」
悠一:「気になったから調べてみた。そしたら面白いことが分かった。彼の給料はおおよそ月35万。
持ち家は5年前に購入してまだローンは30年。月々10万ほど返済しており、子供は上が5歳と下が1歳。妻は専業主婦。」
美雪:「ざっと計算しても毎週お店に通うのは厳しいですね。」
悠一:「ああ。それでもう少し掘り下げて調べたところ、別の口座を持っていることが分かった。
そこには毎月100万ほどの謎の振込がされている。」
高貴:「リベートか?」
悠一:「おそらく。振込先は3つありました。「マチダ」「ナガオカ」「オオミヤ」。」
智和:「殺しにリベート・・・これは刑事部や公安が好きそうな案件だな。」
その時電話が鳴った
美雪:「はい、刑事部刑事課第七係です・・・はい・・・はい、かしこまりました。
高貴さん、総監室から呼び出しです。」
高貴:「まーた無理難題か?行ってくる。」
少しは改善してくれるかしら・・・
智和:「報告会は休憩ということで・・・美雪、昨日の戦いぶり見事だったよ。」
美雪:「ありがとうございます!智和さんがアシストしてくれたおかげです。」
夏樹:「えー!2人でゲームしたわけ?」
美雪:「たまたま同じゲームをしていたからね。」
夏樹:「俺もゲームに参加する!」
智和:「いいけど、俺達相当レベル高いぜ?追いつけるか?」
夏樹君は悔しそうにゲームをダウンロードしていた
ガチャ
30分後、高貴さんが戻ってきた
手には持っていなかったバインダーを持っていた
高貴:「刑事部と科捜研から牧村容子の資料が回ってきた。」
夏樹:「へー。どうしたの?」
大輔:「こんなことはここが発足してから初めてかと。」
高貴:「ああ。総監自ら刑事部と科捜研、それから全てのセクションに第七に事件を回したなら、捜査資料をすべて提供しろというお達しがきたそうだ。
課長以上はわざわざ呼び出され、これまでのうちへの嫌がらせについて叱責したそうだ。
もしまた続くようなら処分を辞さないとまで勧告したそうだ。」
悠一:「俺達にとってはいい環境になるということか。」
智和:「なんだか急すぎて怖いな。」
お父さん、ちゃんと約束守ってくれたのね
高貴:「それから、新たにパソコンを発注してくれたそうだ。
そこには顔認証システムと登録されている指紋認証システムが入ったパソコンだそうだ。」
悠一:「これで違法捜査とは言われないな。」
心なしか悠一さんは嬉しそうだった
高貴:「何かあれば科捜研が協力するというが・・・まぁあまり信用しないことだな。」
美雪:「でも改善してよかったですね!」
智和:「美雪、これは改善とはいわないよ。当たり前ができていないこの体質に問題だよ。
上が言われなければできない、しかもどうせ渋々だからまた繰り返されると思うよ。」
そっか・・・
美雪:「同じ身内なのに・・・私はそういうことをしている人の方が無能だと思います。」
高貴:「そうだな。まぁ俺達は俺達ができることをすればいい。
それで一つでも事件を解決できるなら、それはそれでいいことだしな。」
大輔:「さて、早速お借りした捜査資料と科捜研の資料を見てみましょう。」
全員:「・・・・・・・・」
しかし捜査資料はすべて低レベルだった
高貴:「村本孝史の存在どころか、ホステスだったことすら分かっていないとはな。」
悠一:「しかも科捜研の防犯カメラの映像記録も不鮮明だ。これじゃあ犯人を特定することはできない。」
あまりにもずさんな報告書だった
智和:「中身をすり替えられた気がするよ。」
え?
高貴:「だろうな。おかしいと思ったよ。
素直に資料を提供するはずなどないのに。」
そんな・・・最低だ
私は怒りがこみ上げてきた
なんて卑劣な奴らなの!?
大輔:「美雪、落ち着いて。
俺達は怒っても状況が変わることはない。
それにこんなものがなくても俺達の力があれば事件は解決できるさ。」
そういって大輔さんは優しく笑った
美雪:「はい・・・。」
高貴:「さ、事件の整理を続けよう。」
みんな大人だ・・・きっと私が来る前からこういう虐げられた環境で実績をあげてきたのね・・
私はそれが認められない環境にただただ腹立たしかった
家に着いた時には23時を回っていた
健一:「おかえり。」
美雪:「・・・ただいま。」
健一:「安元から聞いていると思うが・・・。」
美雪:「お父さんは何もみえていないね。」
健一:「・・・どういうことだ?」
美雪:「刑事部も科捜研も渡してきた書類はすべてずさんだった。」
健一:「なんだと?」
美雪:「おそらく第七に恥をかかせるために書類をすり替えたと思う。
第七の仲間は全員事件を解決しようと少ない情報から頑張っているのに、どうして身内がそんな稚拙なことをしているわけ!?」
由香:「ちょっとどうしたの?
キッチンまで声が聞こえているわよ。」
健一:「美雪、明日の朝一でその書類を持ってきてくれるか?」
美雪:「・・・分かった。安元課長に伝えておくわ。
私は・・・正直悔しかった。
刑事部にいたときは、私も沢山悔しい思いをしてきた。
女性だからと好奇な目で見ている人、見下す人、雑用だけしか仕事をくれない上司。
でもそんな奴はどこにでもいると分かっていた。
第七にきてまだ間もないけど、第七のみなさんは本当に優秀なの。
今の警察組織は幼稚で陰湿で最低だよ。
お父さんは総監になって何を見てきたの?」
由香:「美雪!」
健一:「由香、いい。俺は第七を作った人間にも関わらずまったく分かっていなかったみたいだな。
改革にはどうしても時間がかかる。美雪にも辛い思いをさせてしまってすまない。」
美雪:「私はいい。男社会に足を踏み入れた時から何を言われても覚悟はできている。
「サイコパス刑事」というあだ名もつけられて疎まれているけど、それでも私は警察官としてできることをしようと思っているわ。」
健一:「美雪・・・。」
由香:「あなたに似て、立派な警察官になってきたわね。」
父と母は微笑んだ
次の日、出勤してきた高貴さんに、資料を持って総監室に来るようにとの依頼を伝えた
高貴:「・・・・美雪、おまえ、総監とは知り合いなのか?」
さすが直感刑事・・・
美雪:「いえ、どうしてそうお考えに?」
高貴:「いや・・そう思っただけだ。気にしないでくれ。ちょっと行ってくる。」
資料を持って高貴さんは部屋を出た
しばらくしてみなさんが出勤してきた
夏樹:「美雪~おはよ。あれ?高貴さんは?」
美雪:「総監室だよ。」
智和:「こんな朝一から?」
美雪:「昨日刑事部と科捜研から預かった資料を持ってこいという電話でした。」
悠一:「総監は気づいたか?」
大輔:「いい報告になるといいのだが。」
夏樹:「美雪~、実は総監と愛人関係とかじゃないよね?」
美雪:「なにそれ。」
大輔:「こら、パワハラだぞ。」
夏樹:「だって資料がずさんだったことが総監の耳に入ったってことでしょう?
それに急に事態が変わってさ。
美雪が来たときから高貴さんが総監室に呼ばれる回数が多くなったし、そうなのかな~って思っただけ。」
悠一:「嫌われる発言だな。」
夏樹:「え!?ごめん、美雪!」
美雪:「いいよ、別に。
さっき高貴さんにも似たようなとこ聞かれたし。
お父さんと同じ歳だよ?娘ならともかく。」
智和:「いやいや、恋愛に年齢なんて関係ないだろ。」
悠一:「智和がいうとリアルに聞こえない。」
智和:「どういうことだよ!俺が二次元しか恋愛できないとでも言いたいのか!?」
悠一:「分かっていたのか。」
智和:「このやろう~。」
そういって2人はじゃれ合い始めた
大輔:「とにかく、高貴さんが戻るのを待つとしよう。」
そういって大輔さんは席に座ると目をつぶった
夏樹:「美雪、怒らないでね?」
ぱっちりな目にはウルウルと涙がたまっていた
美雪:「怒ってないよ。でも~。」
私は得意のデコピンをした
夏樹:「いたーーーーーーい!!!!」
美雪:「これでチャラね。」
夏樹:「ひどーい!こんな可愛い男の子に手を上げるなんて!!」
美雪:「ひどくありません。これは罰です。」
悠一:「これに懲りて夏樹、言葉には注意しろ。」
夏樹:「・・・はーい・・いてて・・・。」
夏樹君は赤くなったおでこをさすっていた
一時間後、高貴さんは少し疲れた顔で帰ってきた
夏樹:「おかえり~、なんだかすごく疲れているね?」
高貴:「ああ・・とりあえずコーヒー飲んで落ち着いたら報告する。」
私はコーヒーを入れると高貴さんに渡した
高貴:「ありがとう・・・ふぅ・・・今日はもう仕事したくないな。」
悠一:「そういえば捜査資料は?」
高貴:「ああ、総監自ら目を通して激怒していたよ。
さてと。総監との話を報告する。
知っての通り、俺達が預かった捜査資料はずさんな物だった。
総監はそれを見て、自分がみた資料とは明らかに異なるということがわかり激怒。
すぐに刑事部長を呼び出して、どういうことかと説明をさせたってわけ。」
夏樹:「うげ、刑事部長にとっては公開処刑だね。」
高貴:「俺だって居たたまれなかったな。刑事部長は反論できずに終始タジタジ。
挙げ句の果てには職務放棄で懲罰委員会にかけるとまで言ってきたから、さすがにそこまで大事にしなくていいと伝えたおいた。
資料がなくてもある程度までは犯人を特定し、現在証拠集めをしていると伝えておいた。
でも総監の腹の虫は収まらなかったのだろうな。各部署の部長を呼び出し二度とこういうことがないように再度注意勧告。
他の部署までとばっちりをうけて、刑事部長はさらに肩身の狭い思いをしていたよ。」
智和:「でもさ、刑事部の自業自得でしょう。」
高貴:「俺はその間、総監と一緒にソファに座っていて、他の部長達は起立だぜ?
俺の身になって考えてみろよ。冷や汗かいたぜ。」
悠一:「・・・・こわっ。」
大輔:「それで今後はどうなるのです?」
高貴:「こんなことがまた総監の耳に入ったらそれこそ懲戒免職になるだろうな。
総監は念押しで「こんな稚拙な事を二度とするな。」と言っていたよ。
そして最後は総監が俺に謝罪。
第七を作った責任者として申し訳ないと言われたよ。」
夏樹:「へぇ~。」
高貴:「まだ少し先の話だが、大改革が行われるそうだ。
もっと第七が活躍できるような改革を進めているから、もうしばらく辛抱してほしいと言われたよ。」
智和:「えー、別にゆるーくでいいのに。」
悠一:「そうだな。」
大輔:「私はどこででも仕事はできます。」
美雪:「私もです。迫害を受けることは慣れています。」
夏樹:「おれもどこでもいいけどさー、このメンバーなら。」
高貴:「そういうわけで、俺達は今まで通り仕事をすればいいさ。
さてと・・・事件を早急に解決するか。」
私達は刺殺事件の証拠集めに奮闘した