「風」
「風」
空をじっと眺めたことはあるだろうか。
できれば雄大な雲がいくつか浮かんでいるくらいの空が良い。
よく見れば雲が動いていることに気が付くだろう。じっと見なければ気が付かないくらいだが、ゆっくりと風に流されている。
そんな光景を眺めるのが好きだった。
ゆっくりとだが、確かに時間が流れている。それがわかるようで好きだった。
幼い頃から風には憧憬のような思いを持っている。
風の向くまま気の向くまま。
ありふれているがそんな自由に憧れていた。
風に乗って、ここではないどこか遠くへ行きたい。
冒険心溢れる子供だったのだろうか。そんなことを考えていた。
でも実際にここではないところに行った後は、無性に戻りたくなった。
帰りたい。あの場所へ。
風に吹かれると、未だにどこか遠くへ連れていってくれと思う一方で、あの時あの場所へ帰りたいと思ってしまう。
この風はどこから来たのだろうか。この風は帰りたいとは思っていないのか。この風はどこへ行こうとするのだろうか。
結局自分は風になりたいと願っていたが、実際は風に流される雲でしかないのだろう。
戻りたいと思っても戻れない。流されて行きつく先はいずこであろうか。




