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四方山徒然草  作者: 長野晃輝
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「傘」

「傘」


 帰宅の際に道に傘が道に落ちていた。

 ビニールのその傘は何故か開いていた。

 開いていなければ、特に気にしなかったであろう。

 何故開いていたのだろうか。

 いや、それに大した理由はないのかもしれない。何かの拍子に開いたのかもしれない。

 しかし、開いた状態に何かしらの物語を感じずにはいられない。底辺でも作家の性であろうか。

 例えば若い男女。

 相思い合う二人がついに恋を成就させ、喜びのあまり抱きつく。持っていた傘は落ちてしまったが、二人は気にすることもなく愛を語り紡ぐ。そのまま傘は開いたまま風に流されていった。後は二人でどうぞと言わんばかりにクールな去り方だった。

 例えば事故。

 交通事故。

 鋼鉄の塊が猛スピードで持ち主を弾き飛ばした。

 宙を舞う持ち主。その手を傘が離れる。

 重力に従い落ちる持ち主を、傘は風に揺られながら見ていた。

 例えば事件。

 暗い夜道、ヘッドライトが持ち主を照らす。追い越されたと思った瞬間にワゴンの扉が開き複数人の黒ずくめの集団が持ち主に迫る。

 押さえつけられ、主人の手から傘が離れた。

 傘はワゴンの中へ連れ込まれる主人をただ見ているだけしかできなかった。

 雨の中、開いた傘は主人を雨から守れず、孤独に雨に打たれ続けていた。

 あるいは妖怪。

 現代の傘の妖怪。

 ビニール傘なのが実に現代らしい。


 などなど。様々な物語を考えてみたが、できることなら最初のような物語が良い。

 落ちた傘が一つ。なんて状態で既に悲しげな物語を感じるのだ。

 願わくば、落ちた傘にだって幸せな物語を。



3月5日分の借金返済です。

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