およそ30年後の宿題
どさどさ……
『父ちゃ~ん、宿題手伝ってくれよー』
そいつは分からないから終わってないのではなく、やってないから終わっていない。
いつかやろう。あとでやろう。まぁ、ぶっちゃけ。宿題なんかより遊びたい。子供心は常に純真のままに育っているようだ。
しかし、それだけでは大人の荒波一つで転覆するもの。
大人と呼べる、両親は
『しょうがねぇーなぁ』
少し嫌な顔……ではなく、待ってましたでもなく……。
同情や親としての立場か、まだ子供の甘えん坊さを残した我が子に手を差し伸べる。
『いいか、来年の夏休みは早めに宿題するとか、考えず。毎日コツコツ勉強するんだ。朝のラジオ体操をしに行き、10日連続でスタンプ貰って、1等景品トイレットペーパー1袋をもらう要領で宿題やるんだぞ』
『えー、そんなの無理だよー。だって、帰省とかするし。夏祭りあるし。習い事もある。学校でプールもある。なにより学校休みで朝から夕方まで、友達と遊べるんだぜ!』
『ええい、忙しいのは分かってる。子供の忙しさを体験している俺もそう思うさ。友達と遊び回った!親の言葉より、今を大事にしたもんだ』
子供の宿題が久しぶりなせいか、やたらと難しく感じてしまう。
国語に算数、理科、社会。……最近は英語もやるのか。
くそ面倒な自由研究は帰省先でやらせておいて良かったと思う。甲子園で優勝した投手データを載せただけのものであったが……。
『お前もいつか。子供ができて、俺に孫を見せるようになったら、今の俺のように宿題を手伝うんだぞ』
『うん』
『ま、この時になるのは30年後くらいだろうけど』
年々、子供達の教育のレベルは上がってきている。それだけ社会に生きる人間のレベルは高くなるんだろう。まだ彼等が元気に友達作って、ゲームでもスポーツでも、勉強でも、楽しくやってくれるところがあるのに幸せだ。
◇ ◇
そんな夏休みの思い出から10年後。彼は立派な高校生の1人だ。
親に宿題を手伝ってもらったのは小4くらいまでか。休みが多い分、色んな科目で宿題を出された。その中ですっぽかすという手段を覚えた。友達と連携して得意な宿題をやり、終わった後に互いの答えを丸写すというテクニックも掴んだ。宿題を回収する日を友達みんなで、すっとぼけるのもやった。
当時の親とのやり取りを思い出す。
「……………知識を活かすんじゃなくて、知恵を活かすんだよな」
親が大人げなく、答えを見たりする行為を隣で見て来た。自力解こうとする気持ちは大切だが、その手段を自分の頭だけでやるのは無理だと分かった。親父が情けなく、
『今の算数は難しいなー!電卓電卓ーー!』
ギブアップして電卓使って、計算ドリルを解いていた姿には笑った。
『読書感想文なんて、オチだけ読んで感動しましたでいいわ!先生もそんなに読んでないし』
本を読まない母ちゃん(俺も読んでなかったけど)による読書感想文。
俺のためにと、夏休み最終日前からの3日。不思議なことに両親全員が仕事の休みだった理由が、なんとなく分かった。
苦労ばかりを見て来たが、あーやって夏休みを過ごし、夏休みを乗り越えるのだ。
知識を得た事よりも大切なものを学んだ。いや、ズルい事も強さの一つと取り入れてだ……。
「そんなわけで舟。次の数学の宿題、見せてくれ」
「やってるわけないだろ、相場」
「わはははは、だよなー。そんなもんより別なのを見たい」
相も変わらず、気ままに生きている。そうして思う事がある。
あんな父親も、あんな母親も。結婚して、俺を産んでいるということ。そこから一つの不安。
青春を感じるものだからこそ、ぼやくもの。
「こんな俺に、彼女ができるのかな。できれば、友達に紹介できるレベルの子」
「お前にできたら俺はハーレムだよ」
「親見てるとたまに、なんでこいつ等は結婚したんだって思うよな」
「まー、好きだからっていう理由以外にもあるんだろ。色々あるだろ、相場。それくらい分かってやれよ」
「例えば?」
「できちゃった結婚とか……」
一番、現実身のある結婚の仕方だ。合コン後の勢いとかでやっちまったのか。
俺もそうなる結婚をするのだろうか。そもそもするのだろうか?
およそ30年後の自分に尋ねてみたい。
そして、そいつも同じような想いを持って通ってくれるように。




