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喜劇的☆マ☆テキテキ  作者: 村崎羯諦
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カイキテキ・マ・テキテキ 7

 俺とおっさんが出会った翌日。


 俺とおっさんは二人並んで住宅街を歩いていた。とりあえず昨日は財布にあっただけのお金を手渡し、おっさんにはネットカフェに泊まってもらうことにした。俺の家には妻がいるし、一家が帰ってくる数日とは言っても、できるだけ怪しまれる行為は避けたかった。


 というのも、実は俺が空き巣で生計を立てているということを妻には内緒にしているからだ。


 詳しい経緯は省略するが、数年前に突然会社を首になって以降、俺は妻に対して未だにその会社で働いているふりをし続けている。最初は次の職が決まるまでのつなぎと考えていた空き巣業が、真面目に勤務していた以前の仕事よりも一段と稼げる手段だと気づいてからというもの、ずるずると引き際を見極められずにいるといった具合だ。


 どうすれば上手く空き巣ができるのかを考えたり、防犯について自分なりに勉強したりすることは楽しかった。そして何より、以前はただ搾取されるだけだった金持ちに対し、一矢報いることができるということが、これ以上ないほどの快感だった。


 最初は罪悪感に苛まれることもあったが、今では金持ちに対する憎悪と格差に対する怒りで正当化することに成功した。むしろ、俺は最近では自分の仕事に誇りを感じさえもしていた。


 横にいるおっさんは今、俺が用意した薄い青色の作業服を着ている。もちろんそれを着ているということには深い意味がある。


 普段の仕事を確実に遂行するため、俺は事前の調査を念入りに行っている。誰かに見られず侵入が可能なのか、家族構成はどうなのか、そして何より、金持ちか否か。ちょろそうな家をリスト化し、そのリストを参考に犯行計画を組み立て、留守になったところを空き巣に入るというわけだ。


 大体の家はそれで片が付くのだが、中には家を空けなかったり、防犯に工夫を凝らしていたりしてなかなか空き巣を実行できない家もある。


 空き巣しかしないいつもの俺ならそんな危ない家などスルーしてしまうのだが、今回のように共犯者がいるのなら話は別だ。ずっと入れずにむしゃくしゃしているといった気持ちも強い。今日こそ、そのような家に入りこみ、一泡吹かせてやろうじゃないか。俺はそう心の中でほくそ笑む。


 リストに挙げた数件の家を周りながら、今回お邪魔する標的を探す。リスト上の家を周り尽くした後で、俺は中年夫婦が暮らす、ある二階建ての家に狙いを定めた。


 この家は高いブロック塀に囲われ、庭から侵入する際に誰かから見つかる可能性が低い。さらにその塀から中を見た限りでは戸締りもルーズで、庭先の扉の鍵が開いていることもしばしばだった。その上、玄関の装飾や止められている車から察するに、なかなかの資金家であることも間違いない。まさに空き巣にうってつけ。実際、今までに何度も空き巣を試みようと考えていた家の一つだった。


 しかし、それでもなかなか空き巣に入ることができなかったのは、彼らが家を留守にすることが滅多になかったから。特に夫婦にのうちの妻の方は出不精で、家に知り合いを呼ぶことはあっても、買い物等を除き、自分から外出することがほとんどといっていいほどなかった。そのせいでタイミングが合うことがなく、今日までリストに載ったまま手つかずの状態だというわけだ。


 先ほど中から様子を見た限り、その奥方は家の中にいる。今日は平日で、夫の方は家にはいないはず。もちろん誰か一人でも中にいる限り、空き巣を決行することは不可能だし、今までの俺もそう考えて諦め続けてきた。しかし、今日は違う。今日は全く違う手口で、金を奪い取ってやるのだ。


 俺は横を歩いていたおっさんとともに近くの小さな公園に入り、ベンチに腰掛ける。俺は打ち合わせの内容を確認し、自信なさげなおっさんを励ましながら、バックに入れていたそれらしい機械を手渡す。


「多少怪しまれても良い。とにかく、五分だけ時間を稼いでくれ」


 おっさんは観念したのか、渋々俺の機械を受け取った。そして、深呼吸をした後、小さくうなづき、そのまま立ち上がる。


 作戦の開始だ。


 俺はおっさんと距離を開けながら先ほどの家へと戻る。そして、おっさんが玄関の前に立ったことを確認してから俺は反対側の庭へと回る。俺が塀に寄り掛かりながら耳を澄ましていると、かすかに背中の方からチャイム音が聞こえてくる。


 さあ、来た。その音が聞こえてきた瞬間、俺はあたりを見回して誰もいないことを改めて確かめると、俊敏な動作でひょいと塀をよじ登った。タイムリミットは五分。しかし、それだけあれば十分だ。俺が庭に面した掃き出し窓に手をかける。

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