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喜劇的☆マ☆テキテキ  作者: 村崎羯諦
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テツガクテキ・マ・テキテキ 4

 驚いたのは私だけではないようで、目の前のおじさんは私の姿を見るなり、ぎょっと全身を震わせた。その後すぐに自分が全裸であることを思い出したのか、自分の汚らしい局部をさっと手で覆い隠す。おじさんは恥じらいで顔を紅潮させたまま、私から顔を背け、うだつの上がらない中間管理職よろしく、しきりにすいませんすいませんと連呼し続けていた。


 私はおじさんの足元に散乱した土と、あちこちに散らばった黒いビニールのくずに気付く。すぐそばには、昨日までは生気に満ちた緑色をしていた苗の一つが、しなびた黄土色の物体となって転がっていた。


 私はおじさんをスルーしたまま、とりあえずわきに挟んでいた消火器を床に置き、その物体を手に取り観察してみる。水分が抜けきっているのか、苗は触るとざらざらとしており、また先っぽに生えていたはずのつぼみがぱっくりと二つに割れていた。中を確認してみても、空っぽで何もない。私は慌てて残り二つの苗を見てみたが、それらは昨日と全く変わらぬ状態だった。ということはつまり、異変が起きたのは三つのうちの一つだけだったということなのだろうか。


 私は苗から目を離し、いつの間にか隅っこに立っているおじさんにようやく目を向ける。


 おじさんは素っ裸で、中年世代を代表するかのようなわがままボディをしていた。お腹だけが贅肉で不自然にでっぱり、胸とへそ辺りには縮れた毛が無秩序に叢生していた。顔は男前とは程遠く、頬とあごの肉のせいで顔全体がどこか幼げな印象を与えている。頭部にいたっては前髪が後退しており、十年後にはみごとなはげがそこにできあがることを神に啓示されているかのようだった。


 そして何より注目すべきことに、おじさんの全身には土が付着していた。注意深く身体を見てみると、土とともに黒いビニール片のようなものも所々にひっついている。そしてそれらは私の足元に散乱したものと全く同じものであった。


 あまりにしげしげと私が観察しているからか、おじさんはより一層顔を赤らめ、もじもじと気まずそうに身体をゆり動かしている。試しに私がわざと手で覆われた局部へ視線を落としてみると、おじさんはいや、あの、その、ともごもご口を動かしながら、大根足を交差させ、必死に自分のいちもつを見られないようにするのだった。


 私はなおもおじさんの局部に視線を向けたまま、自分の仮説を組み立ててみる。散乱した土とビニール片。枯れ果てた苗にぱっくりと割れたつぼみ。そして、私の目の前で恥じらう、土で汚れたおじさん。私は念のため、どこからやってきたのかと尋ねてみたが、おじさんはわからないと答えるだけだった。私はその答えを聞いて、自分の答えに確信を持つ。間違いない、おじさんは私が育てていた苗から生まれたのだ。状況証拠から見て、それ以外考えられない。


 しかし、そのようなことがありえるのだろうか。


 花のつぼみから妖精が生まれたり、泡から美しい女性が生まれたりといったおとぎ話は聞いたことはあるけれど、ベランダで栽培していた苗から小汚いおじさんがうまれたという話は聞いたこともない。もしかすると、アステカ神話とかマヤ神話あたりにあるのかもしれないが、しかし、実際そんなことは私にとって些末なことだった。


 そんなことよりもっと重大なことがある。もちろんそれは、この出来事が私の退屈を紛らわしてくれるかどうかということだった。


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