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喜劇的☆マ☆テキテキ  作者: 村崎羯諦
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シガクテキ・マ・テキテキ 9

 骨董品での先輩の姿をどう解釈すればいいのだろう。


 なんとか家に帰りついた私が真っ先に考えたのはそのようなことだった。私だって子供じゃないんだから、膨らんだ股間の意味くらいはわかる。そしてわかっているからこそ、これほど困惑しきっているのだ。


 しかしずっとうわの空で考え続けたところで、納得のいく答えが浮かんでくるわけがない。その上、先輩のストーキングによる体力的・精神的疲労により、翌朝の体調はこの上なく絶不調だった。


 私はそれでも自分の身体にむち打ち、なんとか部活には参加する。できる限りいつも通りに見えるよう心掛けていたつもりだったのだが、やはり付き合いの長い柏木の目だけはごまかせなかったようで、帰り道、柏木は何があったのかと単刀直入に尋ねてきた。


 最初、私はなんでもないと不愛想に返事を返したが、柏木はなおもしつこくわけを問い詰めてくる。私もなんだかんだ言って誰かにこの悩みを聞いてもらいたかったこともあって、ポツリポツリと昨日九条先輩をストーキングしたことを告白し、そこで見た先輩の様子を柏木に聞いてもらった。


 柏木は私のストーキング行動に思いっきり引きつつも、小さくため息をつき、やっぱり九条先輩は噂通りの人だったのかと感慨深げにつぶやいた。


 刹那的な恋と固くほどけることはない友情。横に並べること自体ナンセンスなのかもしれないが、やはりそれらは人間にとって何よりも美しく、そして詩的な概念であることは間違いない。


 かの有名な詩人シラーは、友情は喜びを2倍にし、悲しみを半分にすると言った。激しい感情の高ぶりを伴う恋が熱く燃え盛る太陽だとすれば、信頼と思い出に裏打ちされた友情は、無防備に眠る人々を見つめる月なのだろう。


 その大切さに気が付くことがないだけで、友情は私たちを慰める、なくてはならない存在。それほどまで友情は尊く、そして恋と同じくらいに詩的で素晴らしいもの。この世で最も恵まれた人間というのはつまり、辛いときに寄り添い、共感してくれる友を持っている者に違いない。


 そして私の親友である柏木は、うつむく私を抱き寄せ、そのまま手で私の頭をポンポンと叩きながら「辛かったね」と耳元でささやいた後で、急に明るい調子に戻り、私を元気づけようと顔全体をほころばせながら微笑みかけ、自分のおごりだと言ってどこか近所のファミレスに連れて行ってくれる、そういう人間ではなかった。残念なことに。



 代わりに柏木は「それにしても、絵画を見て勃起するなんて最低だよね」と大声で笑った後、私の肩を乱暴に肘で小突きながら「やっぱり私の言った通りだったじゃん」と得意げな調子で言いのけた。


 その上、柏木は私の恥ずかしい過去を引き合いに出しながら、「昔っから麻里奈は男を見る目がなかった」と面白おかしく私をからかい始める。


 傷心で元気が出なかった私も、初めのうちは柏木の言葉を甘んじて受け止めていた。しかし、中学時代に宇宙人のような風貌の理科教師を、クラスの女子で唯一私だけが「それほど悪くない」と発言したという笑い話の途中から、ふつふつと燃え滾るような怒りが湧いてくる。


 いったいなんで柏木にここまで偉そうに言われなきゃいけないのか。


 柏木は私に男を見る目がないと言っているが、そんなの間違ってる。中学時代のその発言だって、みんなに乗せられて言っただけで、どうして私一人の言葉だと思われ続けているのか。それに今回だってそうだ。たった一日の行動で九条先輩のすべてがわかってたまるか。あんなに美しく、そして何より私が一目ぼれした人なんだ、柏木が馬鹿にするような人間じゃない!


 私はきっと柏木を強くにらみ返した。話が乗ってきたところの柏木も私の異変に気が付き、口をつぐむ。


 しかし、それは表面上のパフォーマンスに過ぎず、軽く細められた目から、柏木が必死に笑いを押し殺していることが見て取れた。それでも柏木は体裁上、少し言い過ぎたと私に平謝りする。もちろん私はつんとその謝罪をつき返し、まだ九条先輩が駄目な人間だって決まったわけじゃないと語気を強めて言い放った。


 柏木はそれを聞き、一瞬だけ呆けた顔をした後、すぐにその表情は笑顔に変わり、もう一度高らかに笑い始めた。私は侮辱されたことを憤り、柏木の彼氏を思いつく限りの汚らしい言葉で罵ったが、それでも柏木は笑いを止めなかった。


 ようやく笑いが治まったあと、柏木は私に「そこまで言うなら気のすむまでやりなよ」と偉そうな態度で告げた。とっくに私たちは分かれ道に来ており、柏木はそれじゃと一言だけ言うと、私に背中を向け歩き出す。


 「見てやがれ!」と心の中で叫んだあと、私は近くにあったごみ袋を蹴り上げた。


 蹴り飛ばされたごみ袋がちょうど柏木の腰辺りにヒットしたのを見届けた後、私は小走りで自分の家に帰っていった。

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