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喜劇的☆マ☆テキテキ  作者: 村崎羯諦
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シガクテキ・マ・テキテキ 8

 骨とう品店の中は、狭く、床のあちこちに壺や意味のわからないオブジェが、壁には和洋混在の絵画が所狭しと並べられていた。入口から見て左奥にカウンターがあって、そこに人のよさそうなおじいさんが目をつぶりながら座っている。カウンターの隅っこには小型ラジオが置いてあって、そこからは野球中継が流れていた。店の中には私と先輩の他に一人客がいて、カウンター近くの椅子に座り、同じようにラジオを聞きながらそばのオブジェをじっと見ていた。


 先輩は店の奥にある棚の向こう側にいた。


 私は商品を眺めるふりをしながら、先輩がいる店の奥に進んでいく。そして、塔か何かをモチーフとしたオブジェ越しではあるが、大胆にも私は先輩のすぐそばにまで接近し、偶然目の前にあった絵画に心奪われているようなふりをした。


 手を伸ばせば肩に触れることができるほどの距離で、先輩の横顔に私はちらちらと視線を向けた。先輩はそんな私の目線に、いやもしかしたら私の存在にすら気が付かないらしく、腕を組み、ただじっと斜め上を見つめ続けていた。


 先輩はその場を動かず、また目線を離すことすらしなかった。それほど夢中になっていったい何を見ているんだろう。私はふと気になって、さりげなく身体を動かし、目線の先にあるものを確認してみた。


 そこには一枚の絵画がかけられていた。その絵は、歴史の強化にも載っているような有名画家の、代表作品を模写した模倣作品だった。絵の中央ではふくよかな二人の女性が裸のまま寝転がっており、その背景には柔らかな色彩のタッチで田園風景が描かれている。


 私はなんとか自分の記憶をたどり、それが印象派に属している画家の作品であることを思い出す。いわゆるヨーロッパでよく描かれている裸婦像とかいうやつだ。


 私がこっそり絵画を覗き込んでいる間も、先輩はじっと腕を組みながら、その絵を見つめていた。その目は真剣そのもので、まるでテレビに出てくる鑑定人のようなまなざしだった。先輩もきっと深い教養に裏付けられた歴史的、芸術的視点からその絵画を観賞しているに違いない。


 私は感動に浸りながら、再び先輩の横顔を見つめる。心なしか、そこには知性のきらめきのようなものが感じられた。


 私たちはそのまま数分間立ち尽くした。すると不意に、先輩は腕組をやめ、右手をだらりと自身の下半身へと移動させた。それは何気ない行動で、特段注目するようなものではなかった。しかし、私はそれまでの秩序を崩したその行動に気を取られ、無意識のうちに先輩の右手が向かった方向へと視線を動かす。


 そして、その視線の先に、ある奇妙なものが映った。それは何かと言うと、少しだけ隆起している先輩の股間だった。先輩の右手はそのふくらみの上に置かれ、時々指先がそのふくらみの先をこするように動いた。


 私は一瞬だけ?マークを浮かべた後、その下半身の膨らみが意味することに気が付き、思わず身体ごとよろめいてしまう。


 その際、後ろに置いてあった腰の高さまであるへんてこりんな壺にぶつかってしまい、ガタッと音を派手な立ててしまう。その音に先輩も反応し、驚きの表情でこちらを振り向いた。先輩に顔を見られないよう、私は反射的に顔を伏せる。


 先輩はそこで初めて私の存在に気が付いたようで、少しだけ間が開いた後、私に声をかけることなく小走りでその場を去っていった。


 私は顔を上げ、店を出ていく先輩の後姿を見送りながら、力なく後ろの壺に寄り掛かる。私の重みで、壺に亀裂が入る音が小さく聞こえたが、今の私にそんな些細なことを気にかけていられる余裕はなかった。


 私はもう一度壁にかけられた絵画に目を向ける。絵に描かれた二人の裸婦が私を見つめ返す。彼女らの笑みはどこか私をあざ笑っているような気がした。

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