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喜劇的☆マ☆テキテキ  作者: 村崎羯諦
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シガクテキ・マ・テキテキ 7

 店から出た後、先輩はしばらく何のあてもなくぶらぶらと町を歩き続けた。


 私も気づかれないよう細心の注意を払いながら、先輩の後ろを歩いていく。先輩は店先に並んだものを立ち止まって見たり、あるいは路上の隅でリュックサックからさっきのドリンクを取り出して飲んだりするくらいで、基本的に座って休憩することはなかった。


 私は部活をそれほど真面目にやっているわけもないので、ここまでぶっ続けで歩くとやはり足がくたくたになってしまう。しかし、かといってどこかの喫茶店にでも入られたら尾行がばれる可能性もぐっとあがってしまうので難しいところだ。


 私は歩きながら、気を紛らわそうとこれまでの先輩の行動を振り返ってみる。けれども、やはり先輩の人となりを完璧に理解するには圧倒的に情報が少なかった。


 今日一日ストーキングして得たものは、先輩の美しさについての確信だけなのかもしれない。ファーストフード店において、一応先輩のいくつかの特徴や傾向をしることはできたものの、あんなものだけで人を判断しては駄目。少なくとも柏木を見返してやるくらいの先輩の良いところを探さなくちゃいけない。部活の先輩や柏木は九条先輩について誤解しているんだってこと、そして、やっぱりこの恋は素晴らしいものだということを認めさせる使命が私にはある。


 一つだけ、せめて一つだけでも九条先輩の誰も知らないいいところを見つけ出さなきゃならない。


 しかし、私の思いとは裏腹に時間は無情に過ぎていく。今日中には無理なのかもしれない。そんな考えが私の頭の隅っこに浮かぶ。


 冷静になって考えてみれば、やはり行動を観察しただけでその人のひととなりを理解することは不可能なのかもしれないし、仮にできるのだとしてもそれには長い時間が必要なのだろう。行動心理学みたいにうまいことはいかない。


 今日のところはもうそろそろ引き上げ時だ。しかし、そんな風に諦めかけたその瞬間、神が私に微笑みかけた。





 私たちが近所のさびれた商店街を歩いている最中、先輩はふとある店の前で立ち止まった。どうせ和菓子店か文房具店だろうと、半ば投げやりの目でその店へと視線を向けた私は、一瞬自分自身の目を疑った。


 先輩が立ち止まったのは、絵画やらを売っている個人経営の小さな骨董品店だったのだ。


 私は胸の高鳴りを抑えつつ、祈るような目で先輩の次の行動を待った。お願い、先輩。一歩でいいから中に入って!


そして、先輩はしばらくの間その場で立ち尽くしたのち、私の祈りが通じたのか、先輩はゆっくりとその中へ入っていく。私はその様子を物陰からじっと見つめている間、うれしさと感動で胸がはち切れんばかりだった。


 九条先輩がたった今、骨董品店に入っていった。先輩は高校生ながら、美術品に対する理解と教養を持っている、すなわち、そこらへんにいるスマホゲームしか趣味のないやつらとは違う、より高尚な趣味を持っているということなんだ!


 ああ、今時の高校生のうちで美というものを理解する、あるいは理解しようとしている人間がどれだけいるだろうか。先輩は一握りしかいないそのうちの一人なんだ。やっぱり九条先輩は私が思った通りの詩的で素晴らしい人間だったんだ。このことを柏木に話したら一体どんな顔をするだろう。柏木が驚き、そしてすぐさま私と九条先輩への謝罪の言葉を述べる様子を想像し、思わず頬が緩んでしまう。


 もっと先輩のことについて知りたいという感情が私の中から湧き上がってくる。先輩はどんな美に興味関心を持っているのだろうか。印象派の絵画? キュビズムの絵画? それとも陶磁器?


 私はなんとかにやにやを抑えながら、それを確かめるべく、軽やかな足取りで骨董品店の中に入っていく。

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