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喜劇的☆マ☆テキテキ  作者: 村崎羯諦
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テツガクテキ・マ・テキテキ 12

 翌日の朝。残された最後の苗木はそのままであり、新しいおじさんが生まれてくることはなかった。


 私が不思議に思い、苗木を確認してみると、最後の苗木は他二つよりも若干こぶりで、心なしか色素も薄いように感じられた。


 苗木の間には成長速度に違いがある、あるいはおじさんがきちんと生まれるものと生まれないものがある、そのいずれかだろう。とりあえず私は苗木に水をやり、よろよろと客間から起き上がってきたおじさん二人と朝食をとった。






 玲奈ちゃんから電話があったのは、朝食を食べ終わってからちょうど一時間後のことだった。何の用件かと私が尋ねると、玲奈ちゃんはおじさんについて少しだけ気になることがあると答えた。私は好奇心に駆られ、詳しく話してくれるよう玲奈ちゃんをせかす。



 なんでも玲奈ちゃんは家に帰った後、ふとおじさんのうちの一人について、どこかで見たことがあるかのような気がし始めたのだと言う。


 そこで何時間も悶々としてようやく、うちのおじさんの一人が、町内会役員の一人で、町内会行事の際に何回か見たことのある人とそっくりだということを思い出したらしい。


 玲奈ちゃんは慌ててその時の写真を取り出し、自分の記憶が正しいことを確信したのだと言う。玲奈ちゃんはその写真の画像をLINEで送ってきてくれた。すぐに写真を確認すると、それは参加者の集合写真で、そのなかの一人が大きく丸で囲まれていた。


 私はその人物を見て、はっと息をのむ。その人物はまさに原田さんのウリ一つだったのだ。


 私はこっそりと、ソファに田辺さんと肩を寄せて座り、くつろぎながら朝の情報番組を見ている原田さんの顔を確認する。もちろん少しの違いはあるけれど、それでも写真の人物と同一人物であることはほぼ疑いようがない。


 すぐに電話をかけなおしてきた玲奈ちゃんにどうだったかと聞かれたが、私は間違いないと答えた。玲奈ちゃんは私の返事を聞くとすぐに、その人物の住所を教えてくれた。きっとあらかじめ調べておいてくれたのだろう。私はメモ帖を引っ張り出し、それを書き留める。


 住所を書き終えた後、玲奈ちゃんは真剣な口調でどうするつもりなのかと尋ねて来る。私は少しだけ返事に詰まった後、とりあえずこれから一人でそこへ行ってみると伝えた。


 その人物はいったい何者なのか、あるいはその人物はそこに今もいるのか。確認してみなければ何も始まらないはずだからだ。


 私は情報を提供してくれた玲奈ちゃんに心からお礼を言い、いつも私が大変な時に助けてもらって本当に感謝しているということを伝えた。すると玲奈ちゃんは、別に今回はたまたま気になったから調べただけで、心から心配してたわけじゃない、幼馴染として仕方がなく連絡したに過ぎないのだということを、なぜか少し慌てた様子で話した。


 私はそれを聞いて少しだけがっかりしたが、それでも私が玲奈ちゃんを好きなことには何の変りもないし、もはや大好きを超えて愛していると言ってもいい。今度会った時、この事実を耳元でささやいてあげなくてはと思う。


 スマホをポケットに直しながら、今さっき玲奈ちゃんから聞いたことをおじさんたちに話すべきだろうかと考えた。


 しかし、どんな展開が待ち受けているのかか全く見えてこない以上、変な期待やらを持たせないでおいたほうがいいのかもしれない。そう思った私は何も言わずに玲奈ちゃんから聞いた住所に向かうことに決めた。


 部屋で外行きの服に着替え、二人に留守番をお願いする。最近ここらへんで空き巣の被害が出ているらしいから用心に越したことはない。暑さで体中に汗を浮かび上がらせているパンツ一丁の二人に見送られ、私は家の外へ飛び出した。

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