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人間の性質
知らないほど怖いことはない。
誰もがきっと、そう思うだろう。
笑茉は知らなかった。
でも世の中、そんなに甘くない。
何も知らない。
それほど罪なことがあるだろうか。
人間は目の前のものが好きだ。
遠くのものは見えない。
遠くのことは見ない。
果たしてそれは、正しいのだろうか?
笑茉のはもう一つ忘れていることがあった。
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時は3030年に戻る。
東京大学第五研究室。
酒井つぐみはこの日、笑茉の間違いに気づいた。
つぐみは走った。
みんなに知らせなきゃ。その一心だった。
人は何かに夢中になると、目の前しか見えなくなる。
それは正しい時もある。
東京に久しぶりに人間がいた。