表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
契りの妻  作者: はむ
1/1

受けつけないオンナ

父が死んだ。



具合が悪くなって緊急入院したと、弟から連絡を受けて病院に駆けつけたのが夏。そこから「死」までの道のりは本当にすぐだった。


末期のガン‥。入院時にはもう、手の施しようのない状態であったらしい。自力で食事もできなくなって、みるみる痩せ衰えていく様が、痛々しかった。


僕が、次第に病院から遠ざかった理由はそれだけではない。そのとき、父には認知症の気があった。息子である僕のことはまだちゃんと認識できていたが、今、自分がどこにいて何をしているのか時おり判らなくなる様子で、こちらもその理解に苦しんだ。


母がすでに母が他界しており、自分にとって、たったひとりの親。いわゆる実の父親である。弟は仕事をしながら家庭を持ち、そうそう病院に通うわけにもいかない。ここは長男である僕が、独身で比較的に自由に身動きのできるこの僕が、最期のときまで看取るべきだ。本来なら‥。だが以降、父の元へ足を運ぶことは、ほとんどなかった。


『自宅療養』といえば、一瞬聴こえはいいけれども、結局は医師から見放されたんだろうと、父は云っていた。自宅からの通院という形を取ったのだが、ここに大きな問題があった。



内縁の妻の存在---



そう、父にはそういうヒトがいたのだ。僕も帰省した際に何度か会ったことがある。父より少しだけ歳が上で、よく口の利く、うるさい婆さん‥そんな印象。いや、決して悪いヒトではないのだと思う。行けば“それなりに”もてなしてくれたし。ただ、とにかくお喋りで声も大きく、一緒にいるのが苦痛だった。


元来、人見知りする性格の上、ハッキリと紹介もされていない、そんな得体の知れない婆さんと同じ空間にいるのが嫌で、年々田舎に帰る回数は減っていった。だって、彼女は「実の母親」ではないのだから。僕の考えは間違ってはいないと思うが、オトナの思想ではなかったのかもしれない。



病院に通うようになってからも、内縁の妻が付き添い、介護もしてくれていた模様。とりわけ下の世話までなったことに対しては、僕だって頭が下がる思いだ。彼女だって、当然好きでそういったコトをするわけではないだろうし、彼女の側からみれば、父も一応「たにん」。なかなか出来ない。


感謝はしている。老後をふたりでゆっくりと‥‥描いていたであろうプランが崩れ去って、同情もする。しかし、だからといってそれ以上の、母親に対するような感情に近いものが自分に芽生えるのかといったら、そうではない。「別次元」の問題として、そこは切り離す。



そして、いちばん怖れていた事態が、日々刻々と近づきつつあるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ