探索
暗雲が立ち込める状況の上に、神殿内は薄暗く視界がはっきりしない。遮蔽物の多い神殿内はさながら迷路のようである。モナークによる調査が徒労に終わったため、俺のリアル3Dマップを使い、神のもとへと向かう。以前脱獄時に使ったよりも俺の体力の消耗は少なく、これが梓との修業の成果か!と心の中で喜びを噛み締めていた。
「神の位置を掴めた。ここをひたすら真っすぐに進むだけでよい。」
神の位置はかなり遠いわけでもないが特別近くもないそんな微妙な距離にあった。遮蔽物も多い中真っすぐに目的地が見えるのは俺のスキルのおかげだろう。俺たちは早くこの神殿から抜け出したい気持ちもあるが別に急いでるわけでもないので歩いて向かった。
それと、ここから真っすぐに行くだけであるので、体力を温存しとくためにスキルの使用をやめた。
……俺たちは道中モナークに合流するまでの詳しい経緯を聞きながら歩いた。そして目的地に到着したはずなのだが…、何かおかしい?当初の目的地には何もない。俺は念のためもう一度リアル3Dマップを使う。どうやらもうすこし先だったみたいだ。
「すまん、距離を間違えたもうすこし我慢してくれ。」
「はい、主様。」
「あいよ、主殿。」
今度はスキルを使用しながら進んだ。しかし目的地である場所の近くに来た途端、また神の居場所が遠ざかっていた。何故だ!?
「梓、モナークやはりここはどこかおかしい。」
「そうですか?おかしいのは主様の頭のほうだと思いますが?道案内もできないなんてとんだ駄目主ですね。」
「いや、本来ならこの案件はモナークの領分なのだ。決して我の責任ではない。」
「そりゃねーだろ、主殿!ここがおかしいのは主殿が一番わかってるはずだろ?それなのに責任も何もねーだろ?」
まぁ確かにそうではあるのだけれども、俺の責任にはしたくない。なんというか…その…そうプライドの問題だ。梓の毒舌を聞いていると俺の自尊心がどこか遠くへと行ってしまう。そうならないようには自分の心を守るのだ。
そして、リアル3Dマップを使い続けひたすら神を追いかけるも全然辿り着ける気配はなかった。最初はただ真っすぐ向かえばよかっただけの目的地であったが一回、二回、三回と神が遠ざかっていくというおかしなことが起こる度に、次第に辿り着くためのルートが入り組んできて俺のスキルが意味をなさなくなってきた。
「まったくいつまで時間をとらせるんですか!?主様の目は節穴ですか?」
またこれはひどい毒舌を…
俺の目は節穴か…節穴…そうか何故こんなことに気がつかなかったこだろう?
「モナーク、我が指示する通りに俺と合流したときのようにレーザーを放て。」
「はいよ、でどこにぶっぱなせばいいんだ?」
口だけではお互いの認識に違いがでる恐れがあるので、打つ方向への指示をいろんな方法で伝え慎重にことを運ぶ。
「さっき説明した通りだいたいそこらへんでー…えーと、あっそこをもうちょい右に…そうそこ!」
ちょくちょく素の自分がでるのは許してほしいところだ。
……ズドン…
「これでいいか主殿?これで何がしたかったんだ?」
「モナークは最終的にレーザーを放つことで我らと合流できた。ならばこのレーザーには我らを惑わすこのおかしな現象を無力化できると考えたのだ。
道は拓けた。では行くぞ。」
……そして俺たちは神のもとに辿り着くことができ…なかった。
そうできなかったのだ…
(オッホホ、御主たちよ一度通じたことが二度目も通じるとはあまり考えん方がよろしいぞ。)
俺たちの頭の中に神の声が響いてきたのであった。
読んでくださりありがとうございました。