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2:エルフの少女

 そして現在、森の中。

 装備は腰ミノと聖槍せいそう

 今の俺はゴブリン。


 やばい気がする。


 腰ミノなんか着けていても裸と大差ない。

 聖槍だって、実質の攻撃力は皆無。

 ゴブリンと言えば弱い魔物の代名詞。

 この世界の生態系がどうなっているかは知らないが、ゴブリンが強いということはないだろう。


 やばい。


 極めつけは、チート無しの貧弱な身体。

 結局、女神様からチートは貰えなかった。


 絶対にやばい。


 今の状況で、異世界の凶暴な生物に出くわしたら絶対に死ぬ。

 いや、日本のクマさんに出くわしても死ぬ。


 いやいやいや、落ち着け。

 女神様は安全な場所に転移させるって言ってた気がするぞ。

 少なくともここは安全なハズだ。

 他に何を言ってたんだっけ?

 最後までオークと呼ばれたことしか覚えてない。

 あ、そうだ、聖槍の仕様書も送るって言ってたんだ。


 仕様書は――、あった。

 すぐに見つかった。

 足の下にあった。


 だが、見つかったのはメモが1枚だけ。

 『聖槍について』と書かれた手書きの仕様書。

 急いで書いたのが丸分かりの走り書きの文字だ。


 細かい文字でビッシリと書き込まれている。

 日本の家電製品の説明書を思い出してしまった。

 ぶっちゃけ、全部読む気はしない。


 一応、軽く目を通してはみたが、結局、具体的に聖槍で何が出来るのかがよく分からなかった。

 なんか、『初めてでも安心システム』とか、『行為の後の自動アフターケア魔法機能』とか、『出来ちゃったときの種族保護機能』とか書いてあるが、何のことだかさっぱりだ。

 全然意味が分からない。


 ちなみに、メモの最後の方には、

 『聖槍から発射されるホーリー白濁液には性的な意味など微塵もありません。ですが、何故か不思議と相手を妊○させることも出来ます。させないことも可能です。自由自在です』

 と書いてあった。

 ○の部分は擦れていて読めない。

 書いてあることの意味は全然理解できないが、流石は異世界だ。

 素晴らしい。

 たぎる。


 とりあえず、神様の有難いメモは腰ミノに挟んでおく。

 いつか落としそうな気もするが。

 別に落としても困らないだろう。


 気を取り直し、ふと森の先を見る。

 50mほど先で何かが動いている――、人だ!


 人がいる。

 一人みたいだ。

 しかも女の子だ!


 金髪の少女。

 顔は……、ここからじゃよく見えない。

 草を摘んで、かごに入れているのかな?

 薬草採取でもしているのだろうか。


 俺には気付いていないようだ。


 とりあえず、茂みに身を潜め、少女の様子を伺う。

 これでも俺は隠れるのが得意だ。

 日本にいたころは、「あれ、いたんだ?」みたいなことをよく言われた。


 悲しい思考になりかけたが、今は少女の観察が重要だ。


 気付かれないよう、慎重に近づく。

 距離およそ40m…、25m、18、14――。

 顔が見えた。

 思わず息をのむ。


 あまりにも――、美しい。


 14才くらいに見える。

 年齢的には美しいと表現するよりも、可愛いと表現する方がしっくりくるだろうか。

 具体的に詳細を語ることも憚られるほど可愛らしく美しい。

 【その少女は、まるで人形のように整った顔をしていて、肌は白く、積もったばかりの初雪のようだ。さらに、碧く澄んだ瞳と長い睫毛は彼女の可憐さを際立てており、見るもの全てを魅了してしまいそうですらある。そして、薄桃色の小さな唇は思わずむしゃぶり付きたくなるほど柔らかそうで、愛らしい。そんな今まで見たこともないような絶世の美少女だ】

 だが、そのように細かいことは彼女の美貌の前では些細なことなのだ。


 しかし一つだけ重要なことがある。

 彼女の耳だ。

 綺麗に尖った横長の耳――。


 そう、エルフだ。

 この可憐な少女は夢にまで見たエルフ様に違いない。

 全世界のファンタジー愛好家の憧れ、美しき森の民。

 オークに捕まり、触手に絡まれ、性奴隷にされちゃったりする愛すべき種族。

 永遠の美、男の夢、あぁエルフ様ぁ。


 その誰もが憧れるエルフ様の詳細を語るなんて愚の骨頂だ。

 【髪は艶のあるベビーブロンドをサイドで纏めており、所謂、サイドテールという髪型にしている。背はあまり高くない、たぶん150cmくらいだ。小柄で実に可愛らしい。服装は町娘っぽいスカート着にエプロンを着けたシンプルな装いだ。装飾過多になりすぎない、あくまで動き易さを重視したようなデザインに感じる。そんな、ある意味では普通の服装でも、エルフ少女の浮世離れした美しさに掛かれば銀幕スターの衣装のように輝いて見えてしまう。服装の露出は少ないが、均整のとれた最高の体型であることは一目瞭然だ。年齢と身長のわりに胸もそこそこあるっぽい。素晴らしい】

 だが、そんな事を事細かに語るなんて愚かだと思えるほど、エルフ少女は美しく可愛らしいのだ。


 はぁはぁ……、じゅるり。


 エルフの少女を見ていると様々な感情が湧き上がってくる。

 触りたい。揉みしだきたい。チュッチュしたい。ペロペロしたい。

 そう、具体的に言うと凄くムラム――、聖槍がたかぶるのだ。

 ぐふっ。

 ぐふふ。


 ――ヒヒヒ、今コノ場で、アノ娘を押シ倒しテ……。


 ……。


 あれ、なんかおかしい。

 確かにあの娘はとてつもなく美しく、めちゃくちゃ可愛いし、聖槍が漲る。

 だが、俺ってこんなに直情型の変態だったっけ。


 変態は変態でも、俺は立派な紳士だ。

 美少女は愛でるものであって、実際に触っちゃいけないということぐらい理解している。

 だから、今までリアルの少女にここまでトリップした発想は出なかったハズだ。


 いったいなぜ。

 理由は分からないが、彼女に対して様々な衝動が湧き上がってくる。


 考えられることは俺がゴブリンになってしまったことだ。

 身体の変化が精神にも影響を与えているのかもしれない。


 そうだ……。

 そうだった、今の俺はゴブリンなのだ。

 つい忘れていたが、この姿を見られるわけにはいかない。


 見られたら絶対に逃げられる。

 逃げられたら困る。

 一人で森の中に残されたら普通に死ねる。

 今この状況では、彼女だけが俺と人里との唯一の繋がりなのだ。


 俺が人里に入れてもらえるかは分からない。

 だが、森の中に一人でいるよりも人里に行く方が、生存率が高まるだろう。

 日本の現代っ子(30才直前)が森で一人暮らしなんて出来るはずがない。


 俺は姿を表さず、しばらく様子をうかがうことにした。

美女と野獣みたいな話になるといいなぁ←

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