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ハーレム×女神の下僕=俺!  作者:
一章:愛の女神
5/31

妹①

「ほれっ」


 少女の声が聞こえると共に学ランの襟を後ろから引っ張られ、


「ーーうわっ……」


 と、安木は体勢を崩す。


「ーーあっ……」


 不意の出来事に驚く川上。

 手から安木の学ランが離れて行く。


「ーーって、誰だよ!」


 安木は学ランを引っ張られた事に文句を言いながら振り向くとーー

 金色の長い髪を持った美しい少女が居たのだった。


「ーーーーっ……」


 予想外の登場に声を失う安木。

 今、少女が現れると思っていなかった。

 少女は昨日、川上を生き返らせ、安木に代償となる異性を愛する感情を無くし、何も言わずにすぐにどっかに行ってしまったのだった。

 少女の名前もどういう存在なのかも知らない。


「なんじゃ、その顔は?」


 子猫の様な目を吊り上がらせ、批判の視線を向ける少女。

 端正に整った顔からは冷たさを感じる。心に矢が突き刺さった様な感覚に安木はなるがーー


「な、なんで急に来るんだよ!」


 と、少女を睨んで、不満を言う安木。

 約束をしていた訳ではないので急に来る方が悪いし、いきなり後ろから引っ張る方が悪い。

 それに、川上の反応が恐ろしい。さっき女性との交友関係を聞かれたばかりだ。

 と、心配しているとーー


「なにこの子⁉︎」


 と、怒りを含んだ川上の声。

 やっぱりだ。流れが良くない。

 この状況を川上にどう説明していっていいものか、安木は困りながら、


「……こ、これはだなーー、」


 と、安木が言いかけた時、


「妹じゃ」


 と、無表情で少女は言う。


「「……んっ?」」


 安木と川上は共に疑問の声をあげる。

 安木に妹が居るなんて聞いた事がない。


「妹って、何言ってるんだ?」


 代表して安木が訊く。


「お主に話していなかった事がある。家族会議じゃ、付いて来い」


 安木の手を掴み、自分が進みたい方を向き歩き出している少女。

 マイペースだ。


「何言ってーー」

「行かせないわ!」


 安木の手を掴む川上。

 力が入っている。必死さが伝わってくる。ちょっと痛い。

 もしかしたら、さっき安木の学ランを軽く掴んでいたのに、少女のせいで離す事になってしまったのを根に持っているのかもしれない。


「……おっ、おいーー」


 安木は二人の少女から引っ張られている状況になってしまった。

 小動物を思わせるかの様な可愛い川上。

 神々しいまでに美しい金髪碧眼の美少女。

 夢の様なシュチュエーション。実際やってみると不幸でしかなかった。


「どっちか離せ!」

「私は嫌よ!」


 川上はさらに力を入れ、自分の方に安木を引っ張って言う。


「ふむ、」


 少女は安木を掴んでいた手を急にパッと離す。


「ーーお、おい……、」


 少女に抗議の声を上げる安木。

 引っ張り合ってる時に急に手を離すと危ない。

 案の定、安木の体は川上の方に向かう。


「え、ええっ!」


 動揺の声をあげる川上。

 強く引っ張っていた事もあり、勢いにのって安木と一緒に倒れてしまったのだった。


「大丈夫か?」


 川上を心配して言う安木。

 川上の顔が近い。顔はあと数センチでキスしてしまう様な距離だ。


「えっ」


 川上は恥ずかしそうな表情になり、ほおを赤く薄っすら染める。


「わ、悪い」


 安木は川上からすぐに離れる。

 道端で男が女の上に乗っているのは良くない。世間の目がある。別に二人きりなら良いというわけではないが。


「……えっ?」


 切な気な声を川上はあげる。

 まだくっついていたかったらしい。

 こんな場所で川上はいったい何を考えているんだ?

 安木は立ち上がり、「大丈夫か?」と、言いながら川上に手を差し出す。


「う、うん」


 川上が安木の手を掴み立ち上がった後、


「悪いが、俺はこいつとちょっと出かけてくる」


 少女を『こいつ』と呼び、川上に言う安木。

 このまま、三人でドタバタやっていても仕方がない。

 少女がなぜいきなり安木の所に来て、『妹』と言ったのか確認しなければいけない。川上への説明はその後だ。


「……えっ、なんでよ⁉︎」


 状況が飲み込めないと抗議の視線を安木に向ける川上。

 安木が自分を選ばなかった事にも、怒っているのだろう。


「後で説明するから……」

「ま、待ちなさいよ!」


 川上は安木の手をしっかりと掴もうとするがーー


「……悪い」


 と、安木は言いながら川上の手を払い、少女の近くに行く。

 今、振り向き、川上の顔を見ると悲しげな顔をしているのだろう。安木の手の温もりを名残惜しむ様にーー


 けれども、安木は…………、さっき触った川上の手の感触が、昔感じたものとまったく違うものの様に感じたのだった。

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