十年後、とある可能性
安木の感情をより掘り下げる為、書きました。
幼なじみ助けなかった場合、十年後の仮定のお話です。
「ぱぁ……ぱぁ……」
和室、朝日が昇り出した頃、ようやく立つ事が出来るようになった幼い子供が、初めて覚えた言葉で父親を呼ぶ。
幼い子供は安木の子供になる。とっても可愛い。仕事の疲れも吹っ飛ぶ。
「おっ!」
微笑ましい。
幼い子供は安木に向かってよちよちと歩いてくる。
「……ぶぅぁっ」
幼い子供は、足運びに失敗し、倒れそうになる。
「とっ」
安木は左手を出し、幼い子供を支える。
その時ーー
「パパァー」
安木の妻の声がする。
朝食が出来たからリビングに来るように、と催促するものだ。
安木は、自分の子供と妻と一緒に過ごしとても幸せだ。
あの時、間違った選択肢を選ばなくて本当に良かったと思うーー
ーー 十年前、安木の目の前で幼なじみが交通事故で亡くなる。
とてつもない悲しみと共に、どれだけ幼なじみを一人の女性として愛していたかという事を思い知らされる。
そんな時に、空から「愛の女神だ」と言う少女が現れ、選択を迫ってくる。
選択ーー①このまま何もしない。②幼なじみが生き返るが、安木は女神の下僕になる。
安木は①を選択する。
急に現れた女神から与えられた選択肢②が非現実的で怖かったからだ。
当然、①を選んだ事により、心の苦しみを味わう事になる。「なぜ私を助けなかった?」と夢に幼なじみが出てきた事が何度もあった。
だがーー
今の安木は②を選択しなくて良かったと思っている。
もし、②を選択してしまっていたら、子供も妻もできず今の幸せはなかったのだから……。
安木は自分を犠牲にして幼なじみを助けました。
仮定の話よりも、是非幸せになってもらいたいものです。