指名手配②
「やっべぇーな、これっ!」
放課後、安木と藤原がVRMMOに入り、ステーションで指名手配を確認した時に藤原が発した言葉だった。
ステーションはとは、情報掲示板などが設置されているVRMMOに出入り場所で、王国や町などにある。
「なになに、安木、藤原、熊野の三名を捕まえた者には……、」
指名手配書の書いてある言葉に驚き、声に出すのをやめる安木。
そして、藤原に信じられない事を報告するかの様につぶやく。
「報酬として中間テスト免除……」
「そうだ。そう書かれている」
藤原も信じられない、といった様子だ。
中間テスト免除っていう褒美はすごい。
めんどくさい勉強をしなくてもいいって事になる。
誰だって、勉強をしなんてしたくない。
受ければ成績上位になる人だって、中間テスト免除を魅了的に感じるだろう。
学校の生徒のほとんどが、安木、藤原、熊野の捕まえたいって思うはずだ。
しかも、指名手配書には顔写真も付いていているから、安木、藤原、熊野の顔は、学校全員にバレてしまっている。
中立地帯のステーションから出たら、知らない人からいきなり襲われてしまうかもしれない。
これ以上ないピンチ、と言っていいだろう。
「どうする? こっから出たら物凄い数の敵が待ち受けてるかもしれないぜ」
ややビビり気味な声で言う藤原。
「う〜ん、出ない事には始まらないよね。
なんとかして身の潔白を晴らさなきゃいけないし」と安木。
「わぁーかった。仕方がないから気合い入れて行くか、」と藤原。
「ああ、いきなり隣接態勢で行かなきゃいけないけど、王国内では使えない魔法もあるらしいじゃん」と安木。
「そうだ。攻撃性の魔法は使えない」と藤原。
「そう考えると、商人の魔法ってなにかと便利だよね。
やっぱり、無理やり熊野を連れて来れば良かったかなぁ」
熊野に誘って断られた事を思い出しながら言う安木。
熊野は放課後どうしても行かなきゃいけない所があるって言う話だった。
熊野の行かなきゃいけない所とは、どうせくだらない事だろう。そう安木は思ったが、状況を確認するだけだからと考えて、無理に熊野を誘わなかったのだった。
「まあ、そうだな。けど、今更言ってもしょうがない」
「そうだな、とりあえず、どんな状況だか出てみようぜ」
そうして、安木と藤原はステーションから出たのだった。