指名手配①
「なあ、俺たち、とんでもない事になってしまっているらしい」
青木のクッキーを飲み込まないこちによって、命を落とさずに済んだ次の日に朝。
藤原は自分の机に鞄を置く前に困った声で、安木に話しかけたのだった。
「どうした?
幼なじみの小倉さんとまたなんかあったの?」
毎朝、困る様な話を振らないでよ、と返事をする安木。
「ああ、結局、昨日の夜は、三時間以上話をする事になってしまった。
しかも、電話代は俺持ち。
そんなに話をするんだったら、小倉の家に行くっていうんだ」
「だったら、行けばいいじゃない」
「それが、ダメなんだ」
「なんで?」
「小倉が俺と会う事が出来ない状況になってしまってる」
「どういう事?」
「小倉は、風呂に入った後、ベットで電話をしてるんだ」
「んっ? だったら、風呂に入る前に会えばいいじゃん」
「ダメだ。俺と電話をしながら寝たいって言って、小倉がベットに入ってから電話をする事になってる」
「だったら、夜用事があるって言って、電話しない様にすればいいじゃん」
「試してみたが、ダメだった」
「どうして?」
「俺が夜に用事があると言って電話をしない様にすると、何をやってるか気になるって小倉が言って、何度も携帯に電話が来る。
それでも出ないと家に電話が来て親によって俺に取り次がれ、結局、小倉に俺はネチネチと色々文句を言われる事になる」
「大変だな……」
慰める様に言う安木。
きっと、小倉との苦労話しを今日の昼も藤原から聞かされる事になるのだろう。
「大変だ……、」はあ、
と、藤原は心から疲れた様な声を出した後、嘆息し、
「いや、俺が話したかったのは、別の事なんだ」
「ん? 他に大変な事ってあったっけ?」
「昨日、小倉と話をしてたら、どうやら指名手配されているって言われたんだ」
「指名手配?」
「指名手配とはだな、犯罪者として懸賞金をかけられているって事だ、」
「いや、指名手配って言葉くらい知ってるよ。
何ドヤ顔で言ってるのさ、」
「そうか、もしかしたら知らないかと思ってな、」
「で、指名手配されているって言われただけでは、何がなんだかわからないよ」
ちゃんとわかるように説明しない藤原の方がバカだな、と安木。
「ああ、昨日、授業でやったVRMMOで、城に侵入しただろ、」
「そうだけど……、それが、どうしたの?」
「城に不法侵入した、と言う事で犯罪者として指名手配されてるんだよ」
「う〜ん、あのゲームって変な所でリアルティを追求してるね」
「まあ、そうだな」
「それだけ?」
別にゲームで犯罪者になったって問題ないじゃん。
そんなどうでもいい事で朝から話しかけないでよ。
「違う、」
「ん?」
藤原は真剣な表情で安木に向かって言う。
「あのゲームって、学校の成績に関係しているだろ⁉︎
そのゲームで、犯罪者のままだと、学校を卒業出来ないかもしれないんだ」