10組⑦
「この王国はたった今、大変な状況に陥ってます。
どうか、お姫様を助けて頂けませんでしょうか⁉︎」
スカートを両手で押さえ、内股になりながら、メイド服を着た少女は、安木と藤原に懇願する様に言ったのだった。
「また、ベタな話だな」
呆れた声で言う藤原。
確かに国のお姫様を助けるってベタ中のベタだよね。
もっとひねりが欲しいところだ。
「そうおっしゃらずに聞いてください。
この国ではもともと天使ミカエルを崇拝していました。
ですが、ある時から国王は暗殺され、悪魔にすり替わってしまっていたのです。
それを知ってしまったお姫様は、城のてっぺんに幽閉されてしまったのです」
「なるほどな、だから、お姫様に会った時の第一声が、『助けて下さい』だったのか、」
「で、俺たちはどうすればいいんだ?」
「悪魔の国王を殺してください」
「殺すって、一国を相手に三人で戦えってか⁉︎」
「大丈夫です。
私の他にも城の中に内通者がいます。
それに、できる限りのお手伝いもします。
まずは、先ほどのクエストのクリア報酬にお渡ししたい物があります」
メイド服を着た少女は、後ろに置いていた袋を開け、
「どうぞ、」
と、言った後、安木には剣、藤原には杖、熊野にはナイフを渡す。
「クリアすると、なんか貰えるって、嬉しいな、」
藤原はもらった杖を眺めながら、嬉しそうに言う。
「ちょー、不満」
『NO』と書かれた枕をメイド服を着た少女に投げつける熊野。
枕はいったいどこから出したのだろうか? 不思議だ。
「不満なら、返して下さい」
メイド服を着た少女は熊野の方に手を出す。
「ありがとう」
メイド服を着た少女の手を掴む熊野。
熊野なら当然やるセクハラだよね。
そんな事を想像できず熊野に手を差し出したメイド服を着た少女が悪い。
「きゃっ、」
手を引っ込めながら、熊野のセクハラに悲鳴をあげるメイド服を着た少女。
涙目になっている。
「ナイフより、あなたが欲しい」
「ーーえっ、そんな……、私でよければ……、ってなるわけないでしょ⁉︎」
「あなたもらえるクエストはないのか?」
「今のところありません」
きっぱりと言うメイド服を着た少女。
「がっくし、」
力が抜けたように、うなだれる熊野。
異性に対する情熱って、生物にとって大事だな、と安木は思ったのだった。