10組⑥
「クエストのクリア。おめでとうございます」
こげ茶色の長い髪が特徴的なメイド服を着た少女の声が、疲れて座り込んでいる安木、藤原、熊野の三人に覗き込む様に話しかけてきたのだった。
「ーーんっ?」
藤原は白紙の書を広げて確認すると、
《クエストクリア》
との記載があったのだった。
お姫様と言葉を交わすというクエストを無事にクリア出来たようだ。
安木、藤原、熊野達は、無事に城のてっぺんに居るドレスを着た少女に話しかける事に成功した。
だが、城の窓を破壊するのにあり得ないほど大きな音を立ててしまったので、城の兵士に見つかってしまっう。
なので命からがら逃げてきたところだった。
「どちら様で?」
可愛い容姿の少女なので、熊野がいち早く反応する。
「私は、クエストをクリアした事を告げに来ましたあのお城に住むお姫様のメイドです」
「ほほう、つまりクリア報酬は、『わ、た、し』と言う事ですなーー」
「ーーきゃっ!」
熊野が言い終える前に、少女の悲鳴が聞こえる。
(どうしたんだ?)
そう思って、安木は熊野の方を見ると、少女のスカートをまくりあげようとしていたのだった。
それで、少女はスカートを押さえるのに悲鳴をあげたのだった。
「は、離してください!」
「断る」
「断るって何を言ってるんですか?」
「クエスト報酬に反論する権利はない」
「クエスト報酬って、私はクエスト報酬ではありません」
「何?」
「ただのメイドです」
「メイドという設定の報酬。なお、良し、」
「だから、報酬ではありません。単なるメイドですってば」
「メイドが黒とは信じられない」
「黒って確かにメイド服は黒ですが……ーー」
メイド服の着た少女は、何かに気付いたように、はっ、とした後、急に顔を赤らめ、
ーービュン!
と、熊野の顔にめがけて、手のひらを向ける。
「危ない」
熊野は難なくかわす。
「なっ、何なのこの人は⁉︎」
「別に気にしないで下さい。こっちは勝手にやってますので」
「では、気にしませんので、他のお二人に私の話しを聞いてもらいましょう」
「じゃあーー、きゃっ、」
メイド服を着た少女は再度スカートを抑える。
「私のスカートをめくらないでください」
「勝手にやる、って言って了承を得たはず」
「了承してません」
「じゃあ、帰ってくれ、」
「なぜそんな急展開に……」
「スカートの中を見せてくれないならば、ここに居る必要はない」
「じゃ、じゃあ、スカートを見せーー、るわけあるか!」
メイド服を着た少女はなぜかノリ突っ込みをする。
「わかった。勝手にスカートの中を目指させてもらう」
「目指さなくっていいです」
メイド服を着た少女は叫ぶように言う。
「で、君は、熊野からそんなにセクハラを受けているのに、何でずっとここにいるの?」
メイド服を着た少女に安木が、そう訊いたのだった。