10組⑤
「こんなクエストが出てきたって無理じゃんかよ」
右手で頭を掻きながら言う藤原。
もっともな意見だ。
城に侵入しててっぺんまで目指すなんて難しい。
「俺の透明化の魔法を使って、城の中を潜入して城のてっぺんに向かってみるか?」
提案する熊野。
商人のジョブで覚えられる魔法に透明化の魔法があるのだろう。
「ダメだ。
城の中って言ったら、セキュリティーが万全なはずだ。
そういった侵入者様のわなが仕掛けられてたりするだろう」
「確かに、」と、熊野は同意する。
「もし、やられてしまってペナルティを食らったら、意味がない。
ここは残念だが、スルーするのが一番だろう」
藤原は当然とばかりに言う。
「う〜ん、簡単に諦めちゃうって良くないと思うんだよね」
安木は腕を組んで考える様に言う。
「はあ、何言ってんだ?
城に門兵を見てみろ!明らかに屈強そうな奴らばかりじゃねぇーか⁉︎」と藤原。
「そんなのやってみなきゃわからないじゃん」と安木。
「『やってみなきゃ』って、戦うつもりなのか?」と藤原。
「そうだよ、藤原。せっかく手に入れた力なんだし使ってみなきゃ意味ないよ」と安木。
「いやなぁー、仮に門番に勝てたとしたって、その後どうする気なんだよ?
中にはいっぱい敵がいるんだぞ」と藤原。
「三人で協力してやればなんとかならないかな?」と安木。
「なるわけねぇーだろ! 城のてっぺんって雲より高い位置にあるじゃねぇーか⁉︎
登るだけでも、一苦労だぞ、ありゃあ、」と藤原。
「魔法であそこまで飛ぶ事は出来ないの?」と安木。
「ああ?」と藤原。
「だから、藤原の魔法で飛ぶ事は出来ないのかって訊いてるの?」と安木。
「魔法? 魔法かあ、一応調べてみるが……、あんな高くまでできないと思うぞ」
そう言いながらタブレットを取り出して、確認する藤原。
何回かタッチした後、数秒後、藤原は首を左右に振りながら言う。
「いや、ダメそうだ。ギリギリ雲あたりにまでは行けそうだが、雲を越えられないらしい」
「じゃあ、藤原が雲まで飛んだ後、俺の魔法で城の窓まで距離を縮める」
短距離ならなんとか出来ると、熊野。
やる気のある声。熊野が持つエロの力は、城の姫に興味を持ち出しているのだろう。
「じゃあ、決まりだ。城の窓にくっついたら、俺の力で窓を破壊して侵入しよう」
そう安木が締めくくり、城の方へ三人で向かったのだった。