10組④
「で、どうだった?」
どこか失望した表情を浮かべた熊野が、ちょっと時間に遅れ到着したので、安木が言う。
はあ、と熊野はため息をつき、
「ダメだった。収穫は何もなかった」
「まあ、仕方がないよ」
慰める様に言う安木。
最初の王国で調査しようと強く主張したのが熊野だった。何か考えがあっての事だったのだろう。
それにもかかわらず収穫がなかったって仲間に報告するって、辛いよね。
「どこで、何を調査してたんだ?」
非難の目を向けながら言う藤原。
せっかく頑張ってきたのに、非難の目を向けるなんて酷い。
けど、確かに、いったい何を調査していたかは確かに気になる。
「ある商店街に絞ってじっくりと」
「じっくりと何をだ?」
「NPCの限界について」
「熊野の事だから力とかじゃないよな」
「ーーうっ、鋭い。NPCの体について調査してきた」
「体? 例えば、どこだ?」
「スカートの中」
「他には?」
「トイレから公共浴場まで調査してきたのだが……、くっ……、結果は、ダメだった」
悔しそうに地面を叩く熊野。
けど、見れなくて当然だよ。
このゲームは、高校の授業でやってるんだから、エッチな事ができるわけがないーー
「もっと商人のレベルを上げねば」
と、諦めずに熊野は強く決意を誓っていた。
「それで、藤原は何か見つかったの?」
エロ全開の熊野を放っておいて話しを進める為に、藤原に安木は話しかける。
「俺は、町の中でいきなり襲われて、倒したら《白紙の書》を手に入れた」
「あっ、俺も町の中で襲われて、倒したら《白紙の地図》を手に入れた」
「見えない点ではみんな一緒だな」
そう話しをまとめる熊野。
「同じ見えないでも、NPC相手にエロを追求した熊野とは違うからな」
藤原はツッコミを入れる。
「……あっ、二人のエピソードとなんか似ている事があったなって思ったら、俺も襲われた」
「今更思い出した様に言ってるが、なんか手に入れたのか?」
「《白紙の布》。何に役立つんだかわからない」
「はあ、みんななんか拾いモンはあったけど役に立ちそうな物はないね。
ねえ、藤原のを見せてよ」
「ああ、いいが何も書いてないと思うぞ」
安木は、藤原から《白紙の書》を受け取ってペラペラとめくっているとーー
「あれ、書いてあんじゃん、ほらっ」
「ええっ⁉︎」
藤原が安木から《白紙の書》を受け取って見ると文字が書かれていた。
【クエスト】
城の頂上の部屋にいるお姫様と言葉をかわせ。