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ハーレム×女神の下僕=俺!  作者:
一章:愛の女神
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愛の女神

「にゃぁー、にゃぁー、にゃぁー」


 真夜中、部屋の中で少女は四つん這いになり、猫の鳴き真似をし、切なげに訴える。

 子猫の様な目を潤ませた少女の視線の先には、ベットで寝ている少年がいる。


(んっ……、)


 少年は猫の鳴き声を夢の中の出来事だと思った。

 少年がいる部屋は、一人部屋。本人以外誰も居るはずなのだ。当然、猫も飼っていない。

 少女は少年が起きないので『むっ』とし、少年の上に登る。


「にゃぁぁぁああああー」


 可愛らしい甘えた声で少女は、少年の耳元で囁く。


(ん、んっ……、)


 少年はおかしい、と思った。

 耳にくすぐったい風があたり、猫の鳴き声がまた聞こえた。体の上に重みが増し、頰に糸が垂れるような感触があり、桃のシャンプーの匂いがする。とてもいい匂いだ。


(……、仕方がない)


 少年は眠いのを我慢し、目を開けどうなっているのか確認しようとする。

 するとーー、


「うわっ……!」


 ーー少年は驚き、叫び声を上げる。

 目の前には、艶やかな金髪の少女が馬乗りになり、サファイアブルー色の目で少年を見下ろしている。

 蠱惑的な雰囲気。月明かりに照らされた真珠の様に白い頬は、薄っすらと赤みを帯びている。とても綺麗だ。

 少女の名前は、狐川 弓。

 ある理由により、今日から少年の家に住んでいる。


「せっかく来てやったというのに、いきなり叫び声をあげるとは失礼な奴じゃのぉー」


 狐川は拗ねるように言う。

 そっぽを向き、口を尖らせている。少年の態度がおかしい、と非難をしているのだろう。


「いや、お前の部屋はここじゃないだろ。なんでこんな所に来ているんだ⁉︎」

「今回の仕事のご褒美にと思ってな」

「ご褒美?」

「悪魔が出てきて、わらわが危なくなった時に助けてくれただろう」

「ああ、あのことか。お礼ならこんな夜中に俺の上に乗る必要はないだろ⁉︎」

「ーーうっ! 鋭いな……。正直に言おう。わらわは夜這いに来たのじゃ。普通、この状況なら何も言わずにわらわに抱きついてくるところじゃ。なぜ何もしてこない?」


 狐川は腰に手を当てて言う。


「夜這いって……、いったい何を考えているんだよ!

 ってか、ドアに鍵をちゃんとかけたはずだから、入れるはずなのに」


 少年はドアがどうなっているか確認しようと、ドアの方を見たが、暗くて見えない。


「ドア……、ああ、あの木で出来た板の事か……、わらわの愛を阻む障害は、取っ払っておいたわ。感謝するがよい」


 狐川は、小さい胸に『ちょこん』と手を当て、いかにも優等生の発言、と言わんばかりに言う。

 なんだか、『褒めて』と言う声が聞こえて来そうだ。


「はあ? 取っ払うって何言ってるんだよ」


 少年は狐川が言っている意味を理解できない。

 バカにした視線を狐川に向ける。ドアを取っ払うって、普通に考えて出来ない。ドアは木で出来ている。壊すには物凄い音が響き、壊れる前に少年が起きるはず。

 と、少年は考えているとーー


(そういえば、)


 ーー狐川が普通ではない事を思い出す。

 狐川は愛の女神になる。魔法も使える。もしかしたら、音を立てずに、ドアを壊す事も出来るかもしれない。


(まさか、)


 少年は一気に青ざめる。ドアがどうなっているか確認しようとリモコンを使い、灯りをつける。


「お、お前は何やってるんだよ⁉︎」


 ドアが無くなり、廊下の壁が見える。

 部屋の床を見ると、粉々になった木材が落ちている。おそらくドアの残骸だろう。


「なんじゃ? 急いで明るくして……、あっ、そうか、明るい所でしたいとは、変態じゃのぉー。

 まあ、気持ちはわからんでもない。わらわはとっても可愛いからのぉー」


 狐川は自慢げに言う。

 確かに狐川は可愛い。今日、学校に中途入学してすぐに学年一の可愛いと評判になるくらいだった。

 狐川は身長が低く、胸は膨らみかけで、幼い容姿をしている。愛の女神で、年齢不詳だから、いわゆるロリババアというジャンルのカテゴリーに属するだろう。


「どぉーれっ」


 狐川は、『ニヤリ』と意味ありげに笑いながら言う。

 ゆっくりと顔を少年の顔に近づけ、とっても満足そうに頬ずりをする。肌の滑らかな感触がある。

 それに、自然と控えめな胸の谷間が見えてくる。頬ずりの動きに合わせ、ぶかぶかなパジャマが揺れ、隙間ができるからだ。少年が顔を少し上げれば、肝心な部分も見えるだろう。


「はぁー……、俺から離れろ」


 少年は嘆息し、狐川の行動に嫌悪感を示す。


「んっ? どうしたのじゃ⁉︎ ……、なるほど、離れて裸になれって事なんじゃな」

「誰もそんな事を言ってない」

「別に遠慮する事はない」


 少女は上半身を上げ、パジャマのボタンを外そうとする。上から一つづつ。


「ま、待て! 本当に脱ぐな!」


 少年は慌てて言う。


「別に恥ずかしがる事は無いぞ。

 わらわの体はお主のものだからな」


 狐川は少年の言っている事を気にせず、なおもボタンを外し続け、脱ごうとする。すでに、ボタンが二つ外れ、半分ぐらい開いている。もうすぐ、ヘソの位置になってくるのだろうか。


「いや、脱ぐな!」


 少年は怒気を込めて言う。

 狐川の手を掴み、ボタンを外すのを物理的に止める。


「なっ、なんじゃ⁉︎ ……、ああ、自分で脱がしたいってやつじゃな⁉︎」

「いや、違う。もう自分の部屋に戻ってくれ、俺は疲れてるからもう寝たい」

「つれないのぉー、わらわの様に美少女が馬乗りになっているというのに、お主はムラムラしてこんのかのぉー」


 狐川は太ももをモジモジさせながら言う。

 太ももが少年の腹に当たり、柔らかさが伝わってくる。


「ムラムラしているのは、お前の方だ」


 少年は軽蔑の眼差しを狐川に向けて言う。

 真夜中にいきなり男の上に乗っかって来て、発情しているなんて、どんな変態だよ。それでも、本当に愛の女神か⁉︎


「……、まあ、そうじゃな。正直に認める。だが、わらわがムラムラしているとわかっているのに、何もしないなんてお主はなんて奴じゃ! この悪魔め!」

「そうやって俺の事を非難しますが、俺から異性を愛するという感情を奪ったのはどこのどちらさんでしたっけ?」

「だ、 誰じゃったかのぉー」

「と、ぼ、け、る、な!」

「さ、さぁー、覚えておらんのぉー」

「お前だよ、お前!」

「あっ! そうじゃったなぁー」

「手で『ぽん』とし、今思い出した様なフリをするのはやめろ!」

「そんな冷淡な表情もいいのぉー、なんだかムラムラするわい」

「『おら、ワクワクすっぞ』みたいな言い方はやめろ!」

「けど、その時の事を覚えているという事は……、お主はわらわの下僕になったのよのぉー」

「そうだが、」

「下僕なら、ご主人様のお世話をすべきじゃと思うのじゃよ」

「世話?」

「そうじゃ、ご主人様の性欲の処理とかのぉー。

 下僕なら、愛も性欲もなくたって関係なよね」

「いや、関係ある。というか、俺には無理だ!」


 少年は吐き捨てる様に言う。

 少年にはある出来事によって異性を愛するという感情を失った。

 どんな状況であっても、女性を異性として意識する事はない。学校で一番可愛いと評判のある狐川に馬乗りになられたって、特別な感情を抱かない。

 感覚的には、女性であっても男性と接している気分になる。少年はホモではない。狐川には早くどいて欲しい。


 少年の名前は、安木 龍。

 安木が狐川と出会ったのは数日前に遡る。

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