花言葉は……『自由』1
PM 01:00 龍神の滝近くの小屋 玄関
わんわんと泣きじゃくるくーちゃんをなんとか説得した後、『決心が鈍っても困るから』と言って、アマテラス様に促されるまま、早々に私と紅ちゃんはカグラ士協会に帰る準備を進めていた。
一方、くーちゃんはというと、今後、私のパートナーとして一緒に生活していく為に必要な物を自分の部屋に取りに行っていた。
さっき準備が出来ているか覗きに行ったけど、リュックの中は着替えが数着と、それ以外はお菓子とぬいぐるみでいっぱいだった。
そして、くーちゃんの準備が終わるまでの間、私達は今回の依頼の最終報告をアマテラス様から受けていた。
「では、これが今回の依頼達成した証の護符じゃ。後はこれを、うずめに渡せば仕事は終わりじゃ。」
そう言って手渡されたのは一輪の花だった。
「花……ですか?」
「うむ、花じゃ。何か不満か?」
「い、いえ!ただ、”護符”っていうくらいだから、もっとペラペラしたお札か何かかと思ってました。」
「なんじゃ?うずめの奴、説明しとらんかったのか。えーーーっとの、護符と言っても形は様々なのじゃ!花だったり食べ物であったりもする。まぁ、大切なのはその護符の持つ本来の意味じゃ。」
「本来の……意味?」
私と紅ちゃんは同じタイミングで声を揃え、同じ方向に首を傾げた。その見事なシンクロ具合にアマテラス様も、プッ!っと思わず笑いがこぼれてしまったようだ。
「まぁ、そう難しく捉える事でもない!今回のお主達に渡した護符――――――まぁ、花なのじゃが、その花は”猫柳”という花なのじゃ。」
猫柳。その言葉でくーちゃんの事が頭をよぎる。
「うむ、そうじゃ。お空の苗字じゃ!そして、その猫柳の花言葉は”自由”じゃ。」
「……自由。」
「そうじゃ。そして今回の依頼じゃが、実はタネを明かすとこの願いの依頼主は、お空なのじゃ。」
「……はっ?」
あまりにも唐突すぎるカミングアウトに、高天原に来てから一番の脳内フリーズを起こした。
えっ?ちょっと待って?今回の依頼主は現世の人じゃなくて、くーちゃん!?それで護符の猫柳って花も、くーちゃんの苗字と一緒!?
「あーっ……どこから説明したものか。まぁ、お空の『外の世界に行きたい』という願いは、ずっと前から知っておったのじゃ。じゃが実際の所、わらわが外の世界での実体化が不可能じゃから、連れて行く事は出来ん!そこで、誰か信頼できるカグラ士を探し出し、その者にお空を外に連れ出してもらおうと思っておった訳じゃ!」
「なるほど、それじゃ私達がアマっちとカグラ勝負したのは信頼できるカグラ士かどうかを試すテストみたいな物だった、って事だね。」
今の話で全てを理解したように話す紅ちゃん。それに対し、アマテラス様は、
「まぁ、そうゆう事になるの!試すようで申し訳なかったが、大事な一人娘を託す相手みたいなものじゃからの。ある程度の力は持ってもらわないと困るのじゃ。」
まるで、結婚相手を探す父親のような雰囲気を漂わせながら、アマテラス様は豪快に笑うのであった。
しかし私は腑に落ちない点がいくつかあった。
「あの……アマテラス様?」
「んん?なんじゃ?」
「今回の依頼は『自由に生きたい』って事だったんですけど、実際のくーちゃんの願いは『外の世界に行きたい』だったと思うんですけど、これじゃあ内容が違うんじゃ?」
そう言うと、アマテラス様は困った表情をして、唸り声を出した。
「う~ん……どういえばいいものか。そうじゃの、簡単に言えば、外の世界に行きたい、と言う願いの本質は、自由に生きたいなのじゃ。外の世界に踏み出す一歩を決めるのは自分自身の自由じゃからの。じゃが、お空はその一歩を踏み出す勇気が無かったのじゃ。」
「だから私達の祝詞が、クーの自分から動くキッカケになるように依頼を出したんだね。」
納得したかのように紅ちゃんが頷きながら話しをまとめた。
「そうゆう事じゃ!」
アマテラス様も言いたいことが伝わったのか、満足げな表情で膝を両手で大きく叩いた。
「そっかぁ、道理でおかしいと思ったんだ。」
全ての謎が解けた名探偵のような口ぶりで紅ちゃんは言う。
「えっ?何がおかしかったの?」
「んん?あぁ、昨日、私達がうずっちの所に今回の依頼を受けた時の事覚えてる?」
え~~~っと、なんだったっけ?確か受付で依頼を受けた際、うずめさんと、かんなさんが変な依頼だって事で、上層部の人に連絡してくれて…………あっ!
そこまで思い出すと、流石に勘の鈍い私でも今回の依頼が特殊な場合である事は容易に想像できた。
そして、私が何かに気づいたのを表情で読み取った紅ちゃんが得意げに言った。
「そうだね。多分うずっちとかんなっちは最初から、今回の依頼がアマっちに関係してる事は知ってただろうし、しかもどういった意図で依頼を出してきたかも理解した上で、私達に任せたんだ。じゃないと「自由に生きたい」なんて祝詞が考えにくい依頼が、Eランクの私達に届くはずないからね。」
「確かにその通りじゃ。うずめが上層部に連絡してみると言ったのも嘘で、その時はわらわと神通話しておったからの!かっかっかっかっ!」
全部のネタを披露して満足しきったアマテラス様であった。
そしてタイミング良く、自身の部屋で出発の用意をしていたくーちゃんの声が居間の奥から聞こえてきた。
「ゆーかーっ!もみもみーっ!じゅんびできたよー!」




