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十五夜紅VS天照大神5

次の瞬間に、額から汗がこぼれ落ち、この場の気温が急激に上昇していくのが分かった。


「暑い……何これ?」

紅ちゃんも額の汗を拭いながら、この状況に困惑しているようだ。


「かっかっか!これがわらわの本質、”太陽”の能力じゃ!」

私達がこのうだる様な暑さを肌で感じているのに、アマテラス様は汗一つ掻かずに、涼しげな表情のまま、自慢げに大笑いして、ありがたくも丁寧に説明してくれる。


「いやぁ~、久しく能力を使ったのぉ~。いつも他のカグラ士が依頼を届けにに来ても、能力を使う事もなく勝負が付いてしまうからの~。わらわも本気を出せて嬉しいぞ!」

なんて、久々に本気が出せるみたいな事を言った後、しかし、まだ能力は5%も出してはいないぞ、と補足を付け足すアマテラス様であったが、実際、太陽の能力がどういった物なのかイマイチ分かってはいなかった。


「この”太陽”の能力はの、自然現象を引き起こす能力なのじゃ!」

自然現象を引き起こす?ピンとこないけど、雪とか土砂崩れとか、かな?


「まぁ、簡単に言えば、雪、台風、快晴、雨、乾燥、ひょう、霧雨、などと言った天候を操る能力と言ってもいいかもしれんの。ちなみに土砂崩れは自然災害であって、自然現象ではないからの。」

まるでわたしの心を読んだかのように、的確な指摘を挟むアマテラス様。


「そんなの、子供でも分かるよ。ねっ、夕華?」

「う、うん!そだねっ!誰でも知ってるよね~、常識だよね~、あはは~っ……。」

うん、言わなくて良かった。危うく馬鹿にされる所だったぁ、セーフセーフ。

なんて、駆け込み乗車ギリギリで終電に乗り込んだ様な安心感に浸っている内に、辺りを覆っていた蒸気の霧が少しずつ晴れていく。


「ん、あれ?」

最初に気付いたのは紅ちゃんだった。身体の周りにあった紫電が弱まっていたからだ。


「かっかっ!ようやく気が付いたか!どうじゃ、この暑さは?ジメジメした湿気の多い霧の中より、活発に動けそうじゃろ?」

「そうか……。さっきから気温を上げていたのは、霧を消すための布石!」

「その通りじゃ、気温を上げることで、霧を蒸発させる。お主お得意の雷のカグラは、雲や蒸気が無いと形成できんからの。昔、タケちゃんがこの弱点で悩んでおったは!」

そうこう話している間に、蒸気の霧は完全に消えてなくなり、常夏の空に浮かぶカンカン照りの太陽が辺りを照らす。流石はアマテラス様だ!天照だけに。


「どうじゃ、太陽の能力は?太陽の位置を移動させる事で、自然現象を発生させる力。このままでは紅よ、お主、紫外線でガン黒ぎゃるになってしまうぞ!かっかっか!」

あぁ、アマテラス様……何て死語を……。見た目は幼く見えるアマテラス様だったが、中身はそれ相応の年齢なんだよね。それに、ガン黒ぎゃるって……今時そんな言葉使わないですよ。

なんて恐れ多く、ツッコミを入れる勇気は微塵も無い。


「大丈夫、問題ない。」

平然そうに言う紅ちゃん。まさか私が言えなかった事を、言うつもりなの?ダメだよ、紅ちゃん!いくらアマテラス様でも流石に傷ついてしまうよ!?


「UVクリームは持ってきてる。紫外線対策はバッチリ。」

そっちかぁ……。いや、そんな気はしてたけどね。でもって、私はUVクリームなんて気の利いた物は持ってきてない。うん、後で貸してもらおう、そうしよう。

なんて悠長に考えている私の横でアマテラス様が、今までに見たことの無い表情で愕然としていた。


「何っ……じゃとっ!」

どこかの少年漫画的なリアクションをとってから、チッ!と舌打ちをする。いやいや、そこまで悔しがる所ではないですよ?二人ともノリノリだなぁ。さっきまでのシリアスな空気は何処に行ってしまったんだろう……。


「紅よ、お主中々出来るではないか!」

「ん、どうも。まぁこれくらいは基礎教養だからね。」

私はそんな基礎教養、今初めて聞いたんだけどね……。


「かっかっか!面白い奴じゃの~、……じゃがしかし、戯れはここまでじゃ。」

アマテラス様の目の色が変わり、勝負を楽しむ表情が顔に戻っていた。


「蒸気の雲が無くなった時点でお主の負けは決定じゃ、十五夜紅よ!」

勝利宣言と言わんばかりの強気の姿勢で、紅ちゃんを指差した。

そして、辺りに吹き飛ばれそうなほどの強風が巻き起こる。


「んっ!何、この風!?」

紅ちゃんも何が起こってるか理解できてない様子。


「”神風かみかぜ”。風のカグラを何十個も連続で形成して、ただ単純に威力を上げただけの技じゃ。じゃが、シンプルな技だけに威力は凄まじいぞ!」

神風と呼ばれる風のカグラは3柱の竜巻となり、アマテラス様を軸にして、そのまわりをクルクルと回っている。


「ん、この強風じゃ、身動きが……取れない。」

風に飛ばされないようにガード体制をするしかなくなり、カグラを形成する事も出来なくなった。


「そうじゃろ?そしてさらに、わらわの本質”太陽”の能力で、ここ一帯の気温を上げることにより、風が熱を吸収して熱風となる!どうじゃ、そろそろ呼吸し辛くなってきたのではないか?」

意気揚々と得意げに語るアマテラス様の足元で、私達は、サウナの中でうちわで扇がれている様な息苦しさを味わいながら、吹き付ける強風に耐える。この熱風はかなりキツイ!はずなのに、


「ん、まだまだ……全然……余裕だよ……?」

かなり無理をして虚勢を張る紅ちゃんだった。今の感じからして、何処に余裕があるのかは分からないけど!


「かっかっか!蒸気の雲も消え、反撃の手段も無いはずなのにその気丈さ、流石は十五夜家の人間じゃな!しかし……。」

右腕を高らかに挙げ、紅ちゃんに向かって振り下ろす。


「これでお終いじゃ。」

おそらく屋根の瓦など、軽々吹き飛ばすくらいの強さはあるであろう3柱の竜巻が、容赦なく紅ちゃんに襲い掛かる。


「お主の祝詞じゃが、確かにお主の言う通り、選択肢があるという事は自由に生きることに必要かもしれん。じゃが、選択肢いう枠組みに囚われている以上、お主自身、自由に生きることは出来ないのでは無いか?もっと柔軟に考えるのじゃ、十五夜紅よ。お主自身に何が出来るかではなく、何がしたいのかをもう一度、己に問うてみよ。」

錯覚か幻覚か分からなかったけど、アマテラス様が一瞬だけ優しい笑みを浮かべた様に見えたが、紅ちゃんに近づいて行く竜巻は、さらに威力を増す一方だった。


「んっ……くっ……!」

強風に抗うようにその場で耐える紅ちゃん、しかし、竜巻が紅ちゃんに激突すると紅ちゃんの身体は軽々と5メートルくらい吹き飛ばされて、近くにあった大木に身体を強打させて、動きを止めた。


「紅ちゃんっ!」

今の強打はかなり危ない!急いで駆け寄り、意識を確認する。


「紅ちゃん、しっかりして!!」

「ん……夕華?……あぁ、そっか。竜巻で吹き飛ばされたんだね……痛っ!」

意識はあるみたいだ、でも、腰を押さえて痛そうにしている!


「大丈夫!?腰が痛いの!?ちょっと見せてっ!」

無理をさせないように、ゆっくりと紅ちゃんをうつ伏せにして腰周りを確認すると、赤く腫れている。どうやら大木に衝突した時に腰を打撲したみたいだ。


「ん、夕華は大げさだなぁ。たかが竜巻に飛ばされたくらいで。」

「いやいや、かなりの勢いで飛ばされたから、流石に死んじゃうかと思ったんだよ!?」

いつも通りのマイペースな紅ちゃんの受け答えに安心し、ホッと胸を撫で下ろしていると、後ろからフワフワと空中を飛びながらアマテラス様が心配そうに近づいてきた。


「お~~~い!大丈夫か~~~っ!すまんのじゃ、久々に能力を使ったから力加減が出来んかった!この通りじゃ、すまぬ!待っておれ、すぐに治療するからの!」

深々と頭を下げると、早急に両手を前に突き出し紅ちゃんに向かって、神通力を使い始める。すると、紅ちゃんの周りに、白くて小さな玉が集まって来た。

確かあれは、紅ちゃんが山道でバテた時にアマテラス様が使っていた、”無病息災”って言う神通力だった気がする。


「気分はどうじゃ?」

「ん、……痛みも引いたし、だいぶ楽になった。」

「そうか、なら良かったのじゃ。しばらく安静にしておるのじゃぞ!おそらく夕華とのカグラ勝負が終わる頃には完治しとるはずじゃ!」

「そだね。カグラ勝負には負けちゃったみたいだし。」

紅ちゃんが、あ~あっ、と残念そうに呟いた後、私の方を見る。その視線で紅ちゃんが何が言いたいかが分かった。

紅ちゃんとアマテラス様の戦いを、夢中で観戦していてすっかり忘れていた!次は私のカグラ勝負の番だ、どうしよう、作戦とか、まったく考えて無いよ~。


「後は夕華が何とかしてくれるでしょ。」

いやいやいや、紅さん?グッジョブ!みたいな感じで親指立ててポーズされても困るよ!?正直、今の激戦を見た限り、私がアマテラス様に勝てる要素が何一つとして無いんですけど……。


「ユウカ、ダイジョウブ、アナタハ、ヤレバデキルコダカラ」

何っ!?その根拠の無い自信はっ!しかもカタコトで言わないで、嘘っぽくなっちゃうから!


「そうかそうか!夕華が何とかしてくれるのか!それは楽しみじゃの~、かっかっか!」

アマテラス様はアマテラス様で、次のカグラ勝負を楽しみにしているようだけど、あんまり期待されても困りますよ?紅ちゃんみたいに、雷を発生させたり、超電磁砲レールガンみたいな、超科学兵器じみみた、カグラ舞は出来ませんからね?過度な期待はしないで下さいだよ。


「えっと……どこまで出来るか分からないけど、全力で行きます!」

「うむ!その意気や良し!胸を借りるつもりで掛かって参れ!」

いよいよ始まるんだ!私のカグラ勝負が!


「夕華……。」

紅ちゃんが最後の力を振り絞る様に、私の方に腕を伸ばして何か言おうとしている!


「どうしたの!紅ちゃん!?」

「夕華よ……カグラを信じるのじゃ……カグラはお主と共に……ガクッ。」

「……うん。そうだね。」

おそらく、紅ちゃん最大級の宇宙戦争のボケを軽くスルーして、アマテラス様と向き合う。

今の私にツッコミをするほどの余裕は……無い!あるとすれば、自分でガクッて、死んだ演出音を言ったらダメだと思う!


なんていつものやり取りをしつつ、これから始まるカグラ勝負に、心臓の鼓動が少しずつ早くなるのを感じる私であった。



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