十五夜紅VS天照大神4
そこからの勝負は一方的なものだった。アマテラス様の背後に浮かぶ十五個の火の玉がいっせいに紅ちゃん目掛けて飛んで行く。
「んっ、なかなか面倒だね……。よいしょ。」
それをギリギリの所で回避しつつ、水のカグラを形成して攻撃を弾く。
「ほれほれ、どうした?逃げてるばかりでは勝てんぞ?」
「んっ!そんなっ……事はっ……分かってる。」
「そうか、そうか。では、どうするのじゃ?お得意の紫電ムチで反撃するか?」
逃げ回るネズミを楽しみながら追い詰める猫のように、火の玉で四方八方に攻撃を仕掛け、紅ちゃんの体力を徐々に奪っていく。
元々、体力の無い紅ちゃんが、このまま持久戦に持ち込まれれば、負けは確実だ。
「確かに、このままじゃキリないよね。」
紅ちゃん自身も、その事は分かっているらしく、攻撃を回避しつつ、風のカグラを形成して周りの霧を摩擦させ紫電を生み出し、それを帯電させてる。何か策でもあるのかな?
「ほう?何か考えがあるのか?」
アマテラス様も同様に、何かあると見破ったらしく、誕生日プレゼントの中身が気になる子供みたいに、これから紅ちゃんが企んでいる事を、今か今かと楽しみに待っている様子だった。
その姿を見て、アマテラス様が本当に勝負を楽しんでいるのが伝わってくる。神様を楽しませる勝負、神楽勝負とは良く言ったものだ。
「ん、まぁね。祝詞でアマっちを納得させられない以上、カグラ勝負で勝たないといけないからね。アマっち相手だと、全力出さないと勝てなさそうだからね。」
さっきまでの、感情丸出しの紅ちゃんとは違って、今はいつも通りの冷静さで平常運行している十五夜紅だ。
「さっきは、私の割と気にしてる所を言われたから頭に血が上ったけど、叫んでだいぶ落ち着いたからね……。本来の力で行くよ。」
言われてみれば、口調も淡々としたものに戻っている。でも口数はいつもの三割り増しぐらいだけどね。紅ちゃんは照れたり、恥ずかしい事があると口数が増えるから、冷静だけど、ちょっと恥ずかしいって所かな?
などと考察していると、いつの間にか、紅ちゃんの周りにあった紫電が、いつの間にか二つの光る玉の形になっていた。
「なんじゃ?その光る玉は?」
「これは、私の周りの電気を風のカグラ舞で圧縮して作った電気の玉。まぁ現世では、プラズマって言うらしいけど。」
プラズマ……初めて見るソレは、今スグ破裂しそうなほど、バチバチと光を放っており、触れただけで火傷してしまいそうだ。
「ぷらずま、じゃと?」
「そう。プラズマ。これはね、電気中にある、反発するプラス極とプラス極の逃げ道を防いで無理矢理くっつけた物なんだ。」
「じゃからどうしたと言うのじゃ?」
「この、逃げ場のないプラス極の電気同士に逃げ道を作ってやると、その逃げ道にプラス極の電気が、物凄い速さで逃げて行くんだよ。この技術を利用して作られたのがリニアモーターカー。」
何故だか分からないけど、今度は紅ちゃんの方がトリビアを出している!
これは何かのトリビア勝負なのかな?さっきから私は、へぇ~っと言いっ放しだ!
「そして、私がその技術を独自に応用してカグラ舞に取り入れた、オリジナル攻撃用カグラ……」
次の瞬間、プラズマが大きく光り、細く鋭い一閃がアマテラス様の横を、目に見えない速さで通り抜けた。
「その名も……超電磁砲!」
アマテラス様の横を通り抜けた光りは、遥か空の彼方に消えて行った。アマテラス様自身もその速さに反応出来て無かったらしく、驚いた表情を浮かべた後、俯いてプルプルと震えている。
「紫電のムチは、攻撃する時に腕を動かさないといけないからね、どうしても隙が出来るんだ。アマっちはその隙を見てワープしてたよね。でも、この超電磁砲なら隙は出来ない。」
紅ちゃんが勝ち誇ったように腕をがっしり組み、今までやられた分をやり返そうと臨戦態勢を取る。
以外と根に持つタイプなんだよね、紅ちゃん。
しかし、そんな紅ちゃんの事はまったく気にせず、俯いたままのアマテラス様が顔を上げ、笑い袋を持っているかと思わせるくらいの大笑いを始めるのであった。
「かっ~かっか!超電磁砲となっ!いや~、実に面白いの~!かっかっか!」
「何がおかしいの?」
求めていた反応では無かったのか、紅ちゃんがムッスリとしながら不機嫌そうに問う。
「いやいや、すまんの。お主の扱う雷のカグラや、紫電のムチ、はたまた超電磁砲なんじゃがの、オリジナルとは言うておったが、昔わらわの部下に建御雷之神こと、タケちゃんいう者がおっての、まったく同じ技を使っておったのを思い出しての!いや~懐かしい!」
昔の何か面白い事でも思い出したのかな?アマテラス様は目に溜まった涙を拭き取りながら言う。
それにしても建御雷之神、か……確か、雷神にして剣神、アマテラス様の右腕にして、神様の中で、最も攻撃性の高いカグラの扱いに長けた神様、とアカデミーで習った覚えがある。
「流石は十五夜家か、教わった訳でも無いのに、雷のカグラを形成して、さらには超電磁砲とはな!楽しませてくれるの~!じゃが……」
そう言ってアマテラス様はニヤリと笑い、背後にある十五個の巨大な火の玉を一つにまとめ、もう一回り大きな玉を作り出した。
「元部下が使っておった技じゃ!対策法なら心得ておる!」




