神々の物語2
ご飯が炊き上がるまでの間、アマテラス様と私は、食器や器具を洗いながら、うずめさんの話しを続けた。
「それでじゃ、八百万の神々が、天の岩戸に篭ったわらわを、引っ張り出す作戦を立てたのじゃ。」
「引っ張り出す……作戦ですか?」
「うむ。そして、作戦の要になったのが、うずめじゃった。」
「うずめさんが、作戦の……要。どんな作戦だったんですか?」
「遥か昔の事で、あまり憶えておらんが――――――」
アマテラス様が、洗っていた食器を一旦置くと、どうじゃったかな~、っと目線を上に向け、考え込む。
「ハッキリとした事は思い出せんが、一つだけ憶えておる事がある。聞いて驚くなよ?」
「な、何ですか?」
急に、真剣な表情になり、低いトーンで話しかけてくるアマテラス様に、少し躊躇しながら耳を傾けた。
「岩戸に引き篭もっていた時、外から賑やかな音楽や、笑い声が聞こえてきてな、わらわは、何じゃろう?と気になり、外を覗いたのじゃ。そうしたら、そこには……。」
「そこには……?」
怪談口調で話しているせいか、空気が少し重くなり、緊張感が走る。
「そこには……。なんと!半裸のうずめが踊っておったのじゃ!!!」
「……はい?」
あまりにも唐突な言葉に、思考がショートフリーズする。私が高天原に来てから何回目のフリーズだろうか……。
「いやいや、じゃからな?うずめの奴が、岩戸の外で、半裸で踊っておったのじゃ!それを見た他の神々が面白がって、ドンちゃん騒ぎをし出しての。まぁ、それが、わらわを岩戸からおびき寄せる作戦じゃった訳じゃが。」
見事に策にはまってしまったと、苦笑するアマテラス様。
「そして、うずめはその作戦以来、脱ぐ事に快感を覚えてしまっての……。」
ん?脱ぐ事に快感を覚えて、って事は……もしかして。
「ま、まさか、うずめさんの、脱ぎ癖って……。」
「うむ。そのまさかじゃ。わらわをおびき寄せる際に半裸になって踊り続けたんじゃが、その脱いだ時の爽快感が、良かったらしい。まぁ、暴走するうずめを、カンナが上手く止めてくれておるがの。」
あぁ、やっぱり。それが、うずめさんの脱ぎ癖の原因なんですね。妙に腑に落ちた所で、ある一つの疑問が浮かんだ。
「あれ、アマテラス様は、カンナさんも知ってるんですか?」
「もちろんじゃ。わらわは、あのコンビに負けたのじゃからの。」
そして、まったくと言いながら、ため息を吐く。
「実はわらわが、天の岩戸から引き擦り出された時、すぐに岩戸に戻ろうとしたのじゃ。」
まぁ、確かにそうだよね。今まで引き篭もってたのに、それを罠とは言え、引っ張り出されたんじゃ、戻りたくもなるよね。
「しかし、岩戸に戻ろうとした瞬間、わらわの行く手を遮るように、布刀玉命こと、”ふとちゃん”が邪魔をしての……。」
え~~~っと、確か、布刀玉命様と言えば、占いの神として有名な神様である。その神様を、”ふとちゃん”なんて軽々しく呼ぶアマテラス様を見て、やっぱり神様の頂点のに立つ神様なんだなぁ、と改めて認識した。
「それでじゃ!うずめの奴が、”戻るなら私を倒してから戻ってください”なんて言うから、カグラ勝負をしたのじゃ。」
あの、まったりのんびり、おっとり口調のうずめさんが、そんなアニメのヒーローみたいなセリフを言うなんて、想像出来ない!
「その時のわらわは、神様で一番の力を持っておったから、負けるはず無いと思っておったのじゃ。しかし、わらわは、負けたのじゃ。何故だかわかるか?」
私はしばらく考え込んでみたが、結局分からず、首を横に振った。
「うずめとカンナの能力が、敗北の原因じゃった。」
えっと、確か、うずめさんの能力が”芸能”で、カンナさんが”永続”だったよね。
「うずめの、カグラ舞の威力を増減させる”芸能”の能力で、わらわの得意とする、火のカグラ舞は、火の粉並みに弱められ、そしてカンナの、カグラ舞を永遠に形成させる”永続”の力で、わらわはうずめの攻撃をずーーーっと、避け続けなくてはならんかった。」
いくら、最強の神様、アマテラス様とはいえ、カグラ舞を回避し続けるのは、困難だよね。
「それで、わらわは、力が尽きてしまい、降参したと言う訳じゃ!」
そして、かっかっか!と笑い出すアマテラス様であったが、次は負けない!と自信満々に言い放った。




