神々の物語1
「むかし、むかしの事じゃ。カグラ士協会ができる前、遥か昔の事じゃ。天界高天原と現世が、まだ、分離されておらぬ時代の事は何か知っとるか?」
えっと、確か、人間と神様が同じ世界で、共存していた時代だよね。アカデミーの歴史で習った覚えがある。
「はい。神様と人が一緒に生活していたんですよね?」
「そうじゃ。神の恩恵により、土地や自然が豊かになり、人々の生活が潤う。また、その恩恵を受けた人間が、神を信仰して神が力を得る。そんな自然のサイクルが出来てた時代じゃ。」
私達の生活からしたら、考えられない時代だ。今の現世で、神様を信仰している人など殆どいない、むしろ、神様など居ないと思っている人の方が、多いくらいだ。
「まぁそんな時代に、とある出来事が起きての・・・。」
「とある出来事・・・ですか?」
「あぁ、そうじゃ。・・・奴が・・・奴が!」
魚を捌こうと、手に持った包丁が、プルプルと震だす。
「ア、アマテラス様?」
心配になり、近づこうとした瞬間。
「スサノオの奴が!わらわが楽しみに食べようと、残しておいたプリンを食べたのじゃーーー!」
力任せに包丁を振り上げ、ドンッ!と、一気に魚の頭を切り落とす。
「あの、スサノオのやつ、わらわのタジマモリ印のプリンを勝手に食べよったのじゃ!あ~、今にしても腹が立つ!うがーーーっ!」
ブンブンと両腕を振り回し、狂乱するアマテラス様。いけない!目が血走ってる!
「ア、アマテラス様!落ち着いてください!包丁っ!包丁持ったままじゃ危ないですっ!」
「あ、あぁ・・・すまんかったの。つい頭に血が上ってしまって・・・。」
冷静になり、ゆっくりと両腕を下ろす。
はぁ~・・・。落ち着いてくれたみたいで良かった~・・・。でも、スサノオって、アマテラス様の妹さんの事だよね?確か、正式名称、”須佐之娘命”(すさのおのみこと)だったよね?アマテラス様、ツクヨミ様、に続く、誰もが知ってる神様。三姉妹で、スサノオ様は末っ子にあたるはず・・・。でも何で、うずめさんに関係あるんだろう?
「いえいえ、大丈夫ですよ。で、そのスサノオ様がどうしたんですか?」
「あぁ、わらわが楽しみに買っておいたプリンを、勝手に食べたのじゃ。しかも、タジマモリ印のじゃぞ!」
うん。確かにそれは、怒りますね。タジマモリ印のプリンと言えば、カグラ士協会でも知らない人が居ないくらい有名だもん。お店はいつも行列、プリンを買うのに一時間以上待ちの、超がつくほどの有名店。しかも、そのプリンを作っているのが、お菓子の神様、”多遅摩毛理”様。おいしくない訳がない!そんなプリンを勝手に食べられた、私でも怒ると思う。というか、そんな昔からあるんだ・・・。
「気持ちは分かります。」
「おぉ、分かってくれるか!それでブチ切れた後、落ち込みまくったわらわは、”天の岩戸”に引きこもったのじゃ。」
ん?天の岩戸?どこかで聞いたような・・・。
「ほれ、お主ら、高天原に来る際、洞窟の中に入らなかったか?」
「は、はい。洞窟に入って、洞窟内の大きな鳥居から、高天原に来ました。」
「うむ。その洞窟こそが、”天の岩戸”じゃ!わらわは、洞窟の入り口を塞いで、引きこもっておったのじゃ。」
そうだったんだ・・・。でも、あんな暗い所に引きこもるなんて、よっぽど落ち込んでたんだなぁ。
「それでじゃ、そこからが問題だったのじゃ。・・・ほれ、一品目完成じゃ!」
完成と言って手渡された物を見ると、白身と赤身で色鮮やかに盛り付けされた、見事な魚のお造りが出来上がっていた。
「わぁっ!おいしそう!アマテラス様、お料理上手ですね!」
「かっかっか!まぁなんと言っても、”神様”じゃからの!次は味噌汁じゃ!」
鼻をフン!と鳴らし、ドヤ顔の神様であった。
「それで、問題っていうのは?」
綺麗に盛り付けされたお造りを作業台からテーブルに移し、話しを戻す。
「うむ。わらわが、天の岩戸に引きこもったせいで、世界が真っ暗になってしまっての・・・。夜の世界になってしまっての。なにせ、わらわは太陽の神様じゃからな。」
うん。アカデミーの授業で聞いたことがある。アマテラス様は太陽を操る神様だって。太陽は全ての生命の源だから、それを操れるアマテラス様が神様の頂点に相応しい、らしい。
「まぁ、夜の世界は、もちろん太陽が出ておらんから、作物は育たんし、人間もだんだん生きる気力が無くなってしまっての。」
「・・・確かに大変そうですね。」
「じゃろ?そこで、困った八百万の神々が相談した結果、ある作戦が立てられたのじゃ。」
「作戦ですか?」
「あぁ。わらわを天の岩戸から引きずり出す作戦じゃ!おおっと、夕華よ、味噌汁のダシは、もう採れそうかの?」
アマテラス様に聞かれ、目の前にある鍋の中を覗き込んだ。中には煮干が入っていて、グツグツと沸騰しており、灰汁が出てくるのを、おたまで丁寧にすくい取る。
「はい!もう少しで採れそうです!」
後は―――ふきんで漉して、ダシの完成!後は、味噌、豆腐、ワカメを加えて、二品目、味噌汁の完成。うん!我ながら上出来だね!後は、ご飯が炊き上がるのを待つだけ。




