ガール・ミーツ・ガール1
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・。」
草木が生い茂る山道の斜面を全速力で駆け抜ける。額から汗が滲み、山道を登って行くにつれて足がだんだんと重くなっていく。
「はぁ、はぁ・・・あとちょっと・・・。」
あ~~~、もうっ!こんな山道、全速力で走るんだったら、日頃から鍛えておけばよかったよ・・・。
だんだんと呼吸が荒くなっていく中、ふと上見上げると、木と木の間から太陽の光が差し込んできた。
「よし!見えた!」
だんだんと、滝の水しぶきの音も近くなってるし、この方向で間違いない!
光の差す方へ進んで行くと、一気に周りが眩しくなり、おもわず、まぶたを閉じた。
そして、光に目を慣らしながら、ゆっくりまぶたを開けると、
「うわ~~~、凄い!」
そこには、自分の視野では捉えられないほどの大きな湖と、降り注ぐように落ちてくる巨大な滝だった。
凄い!こんな大きくて綺麗な滝見たことない!って、今は感動している場合じゃない!早く女の子を捜さなくちゃ!
周りをキョロキョロ探してみると、滝のすぐ近くに一本の巨大な大木があり、木の先端に女の子が両手でぶら下がって、今にも落ちそうな状態だった。
「あんなところに!」
急いで助けないと!あの高さから落ちたんじゃ、紅ちゃんの言ってた通り、怪我だけじゃ済まない!
「待ってて今助けるから!」
呼吸を整える間も無く、またすぐに全力疾走する。
そして大木まであと5メートルという所で、突然強風が吹き付けた。
”バキッ!!”
女の子が掴んでいた木が、強風に煽られ、耐え切れずに折れた。女の子は枝を持ったまま、落下していく。
まずい!このままじゃ、地面に激突しちゃう!あれを使うしかない・・・でもこの距離で届くかな?ううん!今は迷ってる場合じゃない、やるしかないんだ!
走りながら両腕を水平に真っ直ぐ伸ばし大きく半周させる。
「集まって!水の精霊さん!」
落下していく少女の真下に、意識を集中させる。そうすると、意識を集めた場所に水のクッションが現れ、女の子の体はクッションに包みこまれて、地面に激突するのを防いだ。
ふぅ~・・・間に合った。
ほっと息を撫で下ろすと、走るのを止め、呼吸を整えながらゆっくりと女の子に近づいていく。
「大丈夫?怪我はない??」
まだ状況が分かっていない女の子は、キョトンとした表情で呆然としていた。
うん、大丈夫そうだね。何処も怪我はなさそう。
「うっ、う、ううっ・・・うぇぇぇぇぇ~~~ん!」
何が起こったか、整理がついてきた女の子は、大声で泣き出し、私の体にしがみついてきた、よっぽど怖かったんだね。
「ほらほら、もう大丈夫だよ~、怖くないよ~。」
「うぇぇぇ~~~ん、えぐっ、うぐっ、・・・・っぐ・・・。」
ゆっくり頭をなでながら、優しく声をかけてやる。
「もうお姉ちゃんがいるから、大丈夫だよ~。」
「えぐ、ぐずっ・・・ぐすん・・・。」
困ったな、大声で泣かなくなったけど、なかなか泣き止んでくれない・・・。
どうしようかと考えていると、ある事を思い出し右ポケットに手を入れた。
「え~~~っと、確かこの前作ったやつがここに・・・・。あ、あった!はい、これ食べてみて。」
「???」
女の子は不思議そうな顔で、差し出された物を見た。
「これはね、”こんぺいとう”って言って、とっ~~~ても元気が出るお菓子なんだよ!」
「こんぺい・・・とう?」
「そう!こんぺいとう!は~い、お口あけて~、あ~ん。」
「あ~ん・・・。」
女の子は小さな口を大きく開ける。そこに一粒のこんぺいとうを放り込んだ。
「ゆっくり舐めてね、どう?おいしい?」
「・・・うん・・・おいしい!」
そう言って女の子は、満面の笑みを見せた。
よかった~!こんぺいとう作戦成功だね!ほっと胸を撫で下ろし、改めて女の子に怪我がないか確認する。あれ?この子羽が生えてる??いやいや、それよりも、こんな所で何していたか聞かないと、迷子だと困るしね。よし!まずは名前から聞こう!
「ねぇ?私は夕華って言うんだけど・・・。」
そう、まず小さい子に話かける時は、自分が誰なのか伝えるのが鉄則!と、この前何かの雑誌に書いてあった気がする・・・!
「ゆーか?」
「うん!私はゆーか、日暮夕華って言うんだよ!」
「ゆーか?・・・ゆーか・・・ゆーか!」
うんうん、いい感じ、雑誌の知識でも馬鹿にできないね!
「うん!ゆーかだよ、あなたのお名前は何て言うのかな?」
女の子は、人差し指を唇にあて、首を傾げると、
「オネマエ???・・・おなまえ・・・お名前!・・・くーちゃん!お名前はくーちゃん!」
さっきまでの泣き顔は消えて、今は笑顔のかわいい女の子が、元気いっぱいに自分の名前を呼ぶ少女の姿がそこにあった。
しかし、この出会いが、私の初めての依頼の始まりだったとは、この時の私は気づくはずもなかった。




