第8題目!!!!!!!!
ここは世界の上空『スカイ・キャッスル』
ここでは、神様達が日夜人間の生活について話してる…………。
今回は、エベレスト頂上よりお送りします。
「で? 水神はどうしたいのさ」
現在、浮遊機関の削除により、エベレストに着陸している『スカイ・キャッスル』の中で、俺は神になって以来最大の分かれ目に立たされていた。
全体会議と呼ばれる、ここ、『スカイ・キャッスル』に名を連ねる神々がコロシアム状になった会議室で一同に会し、選挙をしたり、意見を纏めたりする会議。それが開かれていた。議題は、全知全能の神が金剛神の拉致監禁のため全権を失った今、ここをどうしたいか。これからどうするか。そういったことを話し合っている……まあ、俺の発言で全ての取り決めが決まっちゃうんだけれど。俺に全権がかかっている理由は、俺が全知に勝って、金剛神を取り戻したから。だから、状況を変えた俺に、俺の意見にみんなが耳を澄ましているのだ。
「どうしたいか……」
そうだな。俺としてはもう答えが出ているのだけれど、みんなに意見を呑んで貰えるか……。
俺が口を開き出すと、アリーナに集う神々が一同、中央に居る俺ら五行部へと注目を始める。
「俺は……、俺は! 全知全能の神の無罪放免と、魔力供給の当番制を求める!」
ザワっとする会場、嘘だろ!? と顔を上げる全知、やっぱりなと、目配せをする五行部の面々。
「そんな! 良いのか!? だって、俺は……」
「良いじゃないですか。後輩が頑張って意見をしたのですから」
「金剛神……こんな俺を許してくれるのか?」
「許しはしませんよ? そりゃ、一生。私が死んだ後もずっと……でも、怨んだり、憎んだりはしません。あの時はしょうがなかった、それだけのことです。あなたを許さない代わりに、神官連合、並びに全神連盟自体は許します」
「金剛神……ありがとう……本当に……」
「いや、お礼を言われる筋合いはありませんよ? あなたのことは許してないんですから」
「ああ、そうだったな」
そう言う全知の顔はなんだか清々しそうだった。俺が見てきたどの顔よりも。
「ほーーら、皆さん! わたしがもうそれで良いと言ってるんですから、もうこの議題は終わりですよ! さあ、水神君」
「はい、金剛神さん。じゃあ、ここで俺の全権を全知に返す!」
そう宣言すると、一斉に集う神々から盛大な拍手が送られた。
「は~~い! 全知全能の神だよ~! じゃあ、サクッと当番決めていこうか!!」
その後、みんなで沢山話し合い、当番を決めたり、これからのスケジュールを詰めたりした。
これからここはどう変わっていくのだろう。いや、大きくは変わらなくて良い、変革は怖いから。みんなで笑っていられればそれでいいのだろう。
俺はふと、疑問に思い、いつもの会議室へ戻る道すがら、金剛神さんに問うてみた。
「なんであんな事になってたんですか?」
「あれ? 知らないの? てっきり知ってて助けに来てくれたと思ってたんだけど」
「すみません。あの時はがむしゃらで、何が何だかよく分からなかったんですよ。ただ、全知を止めなきゃって、金剛神さんを助けなきゃって」
「ふふ、嬉しかったわー。あの時は、まさか全知君がかけてた忘却呪文を無視して、私の存在に気付ける子がいたなんてね。さすがはあいつに認められてるだけはあるわ」
「あいつ?」
「先代の水神よ」
「ああ、先代様ですか」
「うん、あいつ、良い弟子が出来た! って、結構あなたの事気に入ってたのよ」
「え? そうなんですか?」
「うん……って、あ、話が逸れたわね、そうね……あなたには知る権利がある。ちょっと長くなるかも知れないけど、付き合ってくれるかしら」
「もちろんです」
「じゃあ、会議終わりに待ってて」
「はい」
──会議後──
「じゃあ、咄しましょうかね。そう、あれはだいたい200年前────
200年前、当時の機関がまだ今のような形態をっとってなかったのは知っているわよね? そう、まだ『全神連盟』と『元神会』しかなかった。今のように神官連合がなく、五行部は全神連盟の一部だった。ここ、スカイキャッスルもまだ、神官連合の神々が所有している分けではなかった頃。その頃は、どうやって空に浮かんでたか知っている? その顔は知らないようね。当時はね、今の全神連盟。私たちの更に上司の神々が作った……いえ、作ったのはまた別の神なのだけれど……それはいいわね。この際大事なのは作った人じゃあないから。少し逸れたわね。当時の浮有装置は永久機関『エーテル』。魔力発生装置、魔力変換装置、魔力調整装置、魔力送信装置、魔力循環装置からなるその機関は、当時の神々にとってそれは画期的なモノだった。浮有試験、魔力送信試験の成功は本当にみんな興奮したものよ。何故、浮くのがそんなに凄いのかって顔ね。その機関にとって、浮かせる事は副次的なモノでしかなかった。エーテルは、私たちのように魔力値の高くない神にとって、ライフラインとなるものだったからよ。ここには、そんなには多くないけど、九十九神がいるでしょ? 彼らや、低級神のみんなにとっては、どれだけ生活が楽になるか、エーテルは希望の装置でしかなかった。彼らにとってはちょっと火を起こすのも、水を流すのも、結構骨が折れるモノなのよ? まあ、あなたのように魔力値がべらぼうに高い神には分からないかもしれないけれど。
ただ、永久機関なんてモノなかったの。いくら神であっても、壊れないモノは作り出せない。形あるモノはいつか壊れると言うけれど、それはその通り。私たちにだって壊れないモノは作り出せない。そこには必ず矛盾が存在してしまうから。矛盾は乗り越えられない。人が作り出したルールである『矛盾』。人の信仰により成り立ってる私たちは、人の無意識が作り出した『矛盾』『生』『死』……。こういったものからは抗えられない。だから永久機関なんてモノは存在しない。なにが言いたいかって? そうね、簡単に言えば、壊れちゃったのよ『エーテル』あなたが知らないってのが、一番の証拠よ。でも、永久機関だと言ってしまったからには、上司のメンツを保たなくてはならない。そこで、五行部に白羽の矢が立ったのよ。一番せっつかれていたのは全知全能の神。彼は悲惨だったわ~。あの頃は本当、受験日前日の受験生みたいな顔で、毎日を過ごしていたものね。彼は毎日エーテルの魔力発生装置の代わりをしていた。でも、彼には限界が来ていた。エーテルが壊れた──と言うよりは、不具合が起こったのは『魔力発生装置』。それの代わりなら、誰か魔力値の高い神を据え置けば、一時期は救われる。でもね、一箇所に綻びが発生すると、まるで亀裂が走るかのように、次々と不具合が生じ始めた。その時に、私は嵌められた。
エーテルがアップデートされると言って、富士山に着陸した日の朝のことだった。エーテル制御室に式神で全知君に呼び出された私は、何の気無しにそこを訪れたわ。だって、まだエーテルが壊れているなんて知らなかったし。つくづく無知って罪よね。え? 神官連合の神々は知っていたのじゃあないのかって?まあ、知ってはいたわよ? 多少不具合が出てるって程度にはね。上は初めから全知君に──一番魔力量の多い神に丸投げする気だった。だから、エーテルがそんな壊滅的な事になっているなんて知らなかったの。
話を戻すわ。
その日、何の気無しに戸を開けた私は後悔した。そこに居たのはもう全知君の形をとった『何か』だったから。目はうつろで、口も半開き、極めつけは口調。いつもののんびりとした感じは消えていたわ。それこそゾンビと見間違えるくらいの迫力はあった。私は直ぐに引き返そうとした。でも、戸は消えていて、アノ、私が磔られていた空間に転送されていたの。どういうこと? これは。そう問うと、彼は言った、小さな声で。こうするしかもう方法が無い。ごめんって。私はまたも後悔したわね。同僚──まあ、全知君のが位は高いのだけれど。いつも会議室で顔を合わせる彼の変化の正体に気付いてあげられていなかったから。私が早くに気付いて居れば、もっと今とは状況も違ったかもしれないわね。そして、私は気を失った。次に目を覚ましたときには既に磔にされて、魔力変換装置、魔力送信装置の代役を任されていたわ。相変わらず、彼は魔力発生装置の代わりをしていた。そしてアップデートと称した人柱設置式が終わり、エーテルはアップデート後の名前として『クリスタ』という新たな名が付けられた。そんな彼が変わったのは……そう、あなたが来た頃だわ。私の前であっても、口調も昔からの風にもどっていて、時折、もう、終わりに出来るかも知れない……って、うわごとの用に言ってて。彼、魔力発生装置の代わりをしているときは意識がトリップするらしいから。きっと、あなたが止めに来てくれる夢でも見ていたのかもしれないわね。どちらにせよ、アイツはあなたに希望を見出していたのは事実だわ。あなたが神になるために修行をしたり、旅をしたりしていた50年間。きっとそれは無駄じゃなかった。だって、全知君を精神的に救い、私を身体的に救う事が出来たのだから。ありがとう。本当に感謝しているわ。私の事だけじゃなく、彼も救ってくれて。
私の過去話はこんなものよ。そう言って彼女は口を閉ざした。
「そんなことが……。本当にお辛かったでしょう。全知も全知ですよ。もっと知恵をしぼれなかったんですかね?」
「無理よ」
「え?」
「私だって、彼の状況に置かれたら、彼と同じような事をして、誰か、自分と、犠牲にしている他人を救ってくれる救世主を待つわ」
「そんな……」
「今はもう踏ん切りも付いたし。ここでもうしばらくやってくとするわ。でも、もう結構な年だし、同期は全知君だけ。そろそろ潮時かしらね」
「そんなことありません。まだまだお若いですよ」
「でもね、私ちょっと疲れちゃったんだ」
「……」
「はい! 暗い話は終わり! もう、自室に戻りましょ。暗くなってきたし。それに」
「そうですね。今日の全体会は疲れました」
「ふふ。そうね。じゃあ、また明日ね。水神君」
「はい、また明日」
そして、俺が部屋から出て行こうとすると、肩越しに言われた。
「その肩の紋章。別に畏れることはないわ。大事にもらっときなさい」
「え? 何で知って……」
「ふふふ。長く神で居ると色々わかるのよ。じゃあね。おやすみ」
バケモノめ……。
「おやすみなさい」
今日は知らない事だらけだった。いつも面白可笑しく生きていると思ってた全知が、長いこと苦しめ続けられていた金剛神さんが、生きてきた過去の事実。俺の上に立つ神のあくどさ。どれをとっても、腹がムカムカする思いだけど……。まだ時期じゃあない。動き出すのには早すぎる。時期尚早というものだ。革命を起こすには外堀からじわじわと攻めなくては、なかで爆発した時に広がり過ぎる。
まだ、まだだ……。肩の紋章『水伯』の紋章がまるで水が付いたように一瞬ひんやりとした。
はい! 暴走紅茶です! やっと第一部終了です。(あれ? 前にもそんなこと言ったような……? まあ、いいや)ざっくりと次回からの展開もきっまってます! きまってるはずです! 多分……(笑)
では! このへんで。次回も宜しくお願いします!