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メーデー  作者: 桐生真琴
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180℃ 2


 まただ。また。デジャビュが広がる。

 小さく空気が悪いライブ会場。そこかしこに詰め込まれた人。携帯禁止でしょ。携帯やってんな。喋るな。私の歌を聞けよ。

 今日の一番ラストにまぁまぁ名の知れたバンドが出る。そいつら目当てなのは分かっていた。

 全部吐くために、目一杯吸う。がなる。マイクをモニターに近づけてハウらせる。

 後ろでキーボードが笑った。それが聞こえるくらい静かになってエンディング。何も言わずに裏に戻るとマイクスタンドに乱暴にマイクを戻した。スタッフが近づいて来たが怒られるのは嫌でメンバー全員でそそくさ控え室に戻った。今日の出演者がチラチラ私たちを見る。そんなのお構いなしでベースとキーボードは相変わらず笑っている。荷物を抱えるとスタッフがこっちに来る前に控え室を出てライブ会場を後にする。

 ドラムがキーボードたちにうるさいと言って、それにギターも加わってガヤガヤ。笑い声があるから、私はまだ許されていた。ごめんねと、本当に小さく言ったけれど、耳の良いベースが何が? と私の前に周り込んで口にした。何って、と立ち止まって顔を上げた時、ベースの後ろでスーツを着た男がいることに気づく。

 私の目線に気がついたベースは、すぐに後ろを向いて、その男と見合う。

「なんか用ですか?」

「うん、君たちに、ちょっと話があってね」

 私はその顔を、なんとなく覚えていた。後ろでギターがあっ、と声を漏らして、慌ててベースの隣に立つ。

「腹減っただろ、とりあえず飯食いながら、ちょっと話さないか」

 この間いた審査員の一人だと分かった頃には、メンバー全員浮き足立っていた。



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