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180℃ 1
私はデビューを目指している。街に溢れている、どこにでもいる歌手志望。バンドを組んで、もう何年経っただろう。何度オーディションに落ちただろう。何度も見た光景に、吐き気がするほどだ。それをごまかして、息を吸って。大して好きじゃない音楽を歌う。
まただ。また。審査員は俯いて、紙をペラペラめくる。暇そうに。私にはしっかりとスポットライトが当たっているのに。ドラムが盛り上がる。サビが終わる。
マイクががなるほど大声を出した。
すると、一斉に審査員が顔を上げる。ギターの音色が唸って、エンド。笑ってありがとうございました、そう言ってはけた。
裏に戻るとみんな耳を押さえていた。そりゃあそうか。後ろでくくく、とベースがイヤミな笑い声を立てた。
「審査員の顔すごかったねえ。さすがマキちゃん」
「さすがとかじゃねえよ。驚いて演奏ぶっ飛ぶとこだったじゃねえか」
私の頭をギターが小突く。顔を上げて見ると、ギターも笑っているじゃないか。というかメンバー全員笑ってる。なんだかんだ、一緒にいすぎてみんな同じ気持ちになっている。私がやったことは正解だ。