☆八話☆
「テヘッ失敗しちゃったっ」
目が覚めて一番最初に聞いた言葉がこれでした。正直ババァ...もとい老婆のしわがれた声で言われても可愛くありません。若干、いや、かなりイラッとします。私は目の前のババ...
もとい魔女を見上げて思い切り睨み付けてやりました。
...ん?見上げて?
私、魔女より背が高くなかったではないでしょうか?
おかしいですねぇ…。
私は、なんとなく頭の上に手をのせようとすると、
・・・・・・・・・・。
...幻覚が。疲れているみたいです。
早く帰って休みましょう。
「ルルナ?」
姉様が気遣わしげに言葉をかけてきました。
「にゃ?」
(はい?)
・・・・・・・。
幻聴まで...。
もう、疲れきっているようです。
早く帰りましょう。そうしよう!
さあ、そうと決まれば善は急げですよ!
「にゃにゃにゃ?」
(姉様、帰りましょう?)
...おかしいな。まだ幻聴が。
「ルルナ?」
姉様は困惑しきったような顔をこちらに向けてきました。
...なんだか、姉様がいつもよりも大きく見えます。
...そうか。まだ幻覚を見ているんだな。
薄々、これは現実だと気づいていますが決して認めたくありません!!
だって.........
「人間にするつもりが見事に猫になってしもうたのぉ。」
そう!!私、猫になってしまったのです。
さっきは頭に手をのせようとして、猫の前脚が見えたんですよ!幻覚だって思い込みたくもなります!!
この、ババァ...もとい、いや、ババアッ!!
ふざけんなっ!!第一、私がいつ人間になりたいと言ったかっ!!人の同意なしで勝手に魔法をかけるな!
「にゃにゃうん?」
(元に戻る方法は?)
と問うと、
「古から姫にかけられた魔法を解くにはあれしかないじゃろう。」
勿体ぶった言い方すんなババア。とっとと答えろ。
私がそういう意味を込めてババアを睨むと
「...王子のキスじゃ。しかも、互いに互いを愛しておらねば意味がない。」
そして、小さい声で妾には解けぬ。と付け加えました。
・・・・・・。
つまり、私に一生猫として暮らせと...?
何故かは知りませんが、最近あの物語と同じようなことが起こってます。まあ、物語だと声と引き換えに人間になれていますが。
私は声を失ってはいませんが、猫になってしまったことによって、言葉を失っています。
ただの偶然でしょうか?
よく考えれば、私はあの物語の主人公とよく似た境遇にあるのです。
これが偶然ではないとすれば今頃あの王子様は別の女性と恋におちているでしょう。
それに私と王子様が相思相愛になるなんてことも万が一にもないでしょう。あの物語では主人公の恋が成就することはなかったのですから。
まあ、これがただの偶然で王子様が誰とも恋におちていないとしても、猫に恋をする人なんていないでしょうし。
要するに、私に一生猫として暮らせと言っているのでしょう?
このババア、いや、クソババアのせいで!!!
勿論リュナ姉様も許しませんよ?
なんだか主人公が黒くなってしまった...。