☆五話☆
凄く大きな木造の舟ですね。
・・・って、木造!?
私がいた世界ではないのでしょうか?少なくとも、こんなに大きな木造の舟は見た記憶がありません。
っていうか木造......。あまり、造船技術が進んでいないのでしょうか。それともただの趣向なのでしょうか。判断に苦しみますね。
それにしても、立派な舟ですね。まあ、前世の鉄の舟に見慣れた私には、あまり頑丈そうとは言えませんがそれなりに強固に造られているようです。
・・・もしかして、海賊とやらでしょうか?
ちょっと興味がありますね。怖い?とんでもありません。海は私の領域ですからね。たとえ海賊が相手だろうと負ける気がしませんよ。
そっと舟の上に目を向けると、イケメンさんが手すりにもたれかかって遠くを見ていました。あのイケメンさんが海賊の船長なのでしょうか?海賊とは思えないお上品な格好をしています。海賊というより王子様って感じですね。
舟の中から「殿下」と呼ぶ声が聞こえました。どうやら、海賊ではなく本当に王子様のようです。
王子様ですか...。なんだか今の状況は、おとぎ話の人魚姫のようですね。もっとも私には、王子様に恋をする気はさらさらないですけど。......ないですよ?当たり前じゃないですか。
悲恋なんて御免ですからね!!
さっきから目をそらせないのは、顔が好みなだけで決して恋におちたからではありません!!
「っ......!」
私の視線に気づいたのか、船長さん改め王子様はこちらを見ました。今更誤魔化せませんね。目がばっちりあっています。それに
私は目をそらすことができませんでした。
しばらくして不意に王子様が視線をそらしました。
・・・なんだか、舟の様子が慌ただしいです。
おとぎ話の人魚姫では嵐が訪れるのですが、流石にそこまでの偶然はないでしょう。と私が空を見上げると・・・
......あれえぇ~?
どんよりとした雲がこちらに向かってきています。
本当に嵐がやって来ていました。
王子様に再び視線を向けると、王子様は心配そうにこちらを見ていました。
......いやいや、逃げようよ?危ないよ?私は、海の中に逃げればいいだけなので、貴方に心配されるようなことはありませんよ?っていうか皆さん王子様をこんなところに放置でいいんですか?あぁ、皆さん忙しいんですね。皆さんは舟の上をあちこち走り回っていました。
私が避難するように王子様にジェスチャーで一生懸命示したら、王子様はそれをよく見ようとしたのかこちらに身を乗り出しました。すると、その時一際大きな波がきて、
・・・王子様は海に落ちてしまいました。