006
お気に入り登録や評価をしてくれた方、感想をくれた方、本当にありがとうございます。現在二章以降を執筆中ですが、本当に皆さんに力を貰って書いている気がします!
翌、早朝。
本格的に狩りに行こうと雑貨屋でアイテムを揃えていると、イーグルからフレンドカードを通じて通信が入った。
「……はい。もしもし」
『俺だ、イーグルだ! 今すぐ来い! 待っているからな!』
一方的に用件を告げ、一方的に通信を切る。
こういった人とリアルで面識がなかったが、やはり苦手なタイプではある。
僕は雑貨屋NPCにアイテムを受け取り、イーグルの元へと向かった。
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「遅かったな」
そう言いながら僕にイーグルが差し出してきたのは弾丸の箱。
「昨日充分に買わせていただいたので、当面は平気です」
僕がそう言って弾丸の詰まった箱を押し戻そうとすると、イーグルがさらに押し返しながら言った。
「この世界の弾丸にはいくつかの種類が存在する、例えば今お前が使用している弾は『通常弾』と呼ばれる何の変哲もない弾丸。その他にも『ホローポイント弾』『徹甲弾』等々無数にあり、その弾はどんな銃にでも使用可能だ」
今は武器に関する情報はほとんど言っていいほど出回っていない。
こうやって色々と教えてくれるイーグルに感謝しつつ、弾丸を受け取る。
イーグルが渡してきた弾丸は通常弾を除いて三種類。
「まずこの先っちょが尖っているのが『貫通弾』だ。敵を貫通する効果があるから、密集した大勢を相手どる場合に使ってくれ。そしてこの先っちょのへこんでいるやつが『ホローポイント弾』貫通効果は皆無だが、強烈な一撃を与える事ができる。後は……」
言葉詰まらせたイーグルが頭をかきむしりながら言う。
「あまり考えたくねぇけど、万が一、プレイヤーに襲われた時にはこれを使え。対象のHPを削り切る事なく、与ダメージを押さえてくれる。最低でもHP1で止めてくれる弾だ。射程にマイナス補正がかかるから注意しろよ。これは『ゴム弾』だ」
ゴクリと喉を鳴らしながら、ゴム弾の入った箱を握りしめる。
プレイヤー相手に撃つ、そんな時が訪れるのだろうか。
そう考えてマテリアルが言っていた『戦争』と言う言葉が頭をよぎる。
300分の1のプレイヤーしか生きて出る事が許されないこの世界。
ライバルは少しでも少ない方がいいとプレイヤーキラーを行うものが出てきても、なんら不思議はないのだ。
「イーグルさん、色々ありがとう。しばらく本格的に狩りに出るから、また戻ってきたら会いましょう」
「気にすんな。お前にもらった鉄くずで作った弾だからな。……それにスナイパーライフルを使うお得意さんができて俺は嬉しいのさ。だから……ビーン。絶対に死ぬんじゃねぇぞ」
イーグルと固い握手を交わし、僕はアウベールを後にした。
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ゴブリン生息地域のさらに奥、ゴブリン達の集落である『鬼畜砦』の前に僕は立っていた。
掲示板情報に書かれていた序盤のレベリングに最適の場所。
僕は護衛のゴーレムを一体残し、もう一体のゴーレムを先行させ、複眼で中の様子を確認しつつ、狙撃ポイントを探す。
時折、ゴーレムがゴブリンにからまれ、戦闘になるが一対一であれば、僕のゴーレムはおくれを取る事なく撃破していった。
中は砦というより、集落のような形になっており民家が立ち並んでいる。
民家の扉を開けるとそこにはゴブリンが出現しており、すぐさまゴーレムと戦闘になる。
民家の中にいるゴブリンを撃破したゴーレムが僕の「五回戦闘を行った後には一旦戻って来い」の命令に従い、一度帰還してきた。
僕はゴーレムに「僕の10メートル以内に近づくモンスターに攻撃を仕掛けろ」とだけ命令をし、ゴーレム二体を従えて先へと進む。
僕は周りの民家よりも一回り高く、比較的見晴らしの良い民家の屋根へとゴーレムに自分を担がせて上り弾倉に通常弾を込めた九十七式改を構える。
発射台となるゴーレムも屋根の上に上げ、準備は完了。
今回僕が行うのは釣り狩りである。
発射台のゴーレムには「反動を抑える」「リロード中は手をどける」「敵が接近してきた場合は僕を護衛しろ」と命令を与える。
そしてもう一体のゴーレムには「僕が攻撃した対象が死ななかった場合は止めを刺せ」「僕が攻撃した対象が死亡した場合、または一番の命令を遂行した後、アイテムを回収せよ」「それ以外は僕の半径10メートル以内に近づくモンスターを攻撃せよ」と指令を出す。
〇〇が✕✕だった場合は△△せよ。という命令も命令数1にカウントされる事が色々試しているうちにわかった。
そして僕は九十七式改を使った釣りを思いついたのだ。
けれど通常の釣りとは違い、僕がそれを行う最たる理由は戦闘中で激しい動きをする対象よりも、動きの少ない非戦闘状態の対象を狙った方が照準を定めやすい、というものだった。
つまり僕がファーストアタックを行う事を念頭に置いた作戦である。
それが僕にとれる最も効率の良い戦闘方法だと思ったのだ。
もちろんゴーレム戦わせて自分は隠れている、という作戦が最も楽ではあるが、マテリアルと話をしてみて、それではいけないと思ったのだ。
九十七式改に頬を添え、スコープを覗きこみ、目標を探す。
そして大仰な鎧を纏ったゴブリンをレティクルの中に入れ、大きく呼吸を吸い込んだ後、引き金を引き絞った。
放った弾丸はゴブリンの胸部を貫き、ゴブリンはその場に倒れ、霧散した。
ゴーレムがアイテムを拾い終えるのを待ち、次の標的に照準を合わせ、撃つ。
それを何度も何度も作業的に繰り返したが、九十七式改の弾丸は狙った全ての獲物を一撃のもとに葬り去っていった。
短調に狙撃を繰り返し、レベルも急速に上昇していく。
そうしてブックを開いた僕は驚いた。
今回は弾丸の説明回……。一章は説明回風味ですが、もう少し続きます……。今しばらくお付き合い下さい。
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