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ゴーレムマイスター  作者: 駁目師走
第零章 プロローグ
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004

初評価を頂き、しかも満点評価と勿体ない評価を頂きましたので、初評価満点記念と称して予定にはなかった本日二回目の投稿。

(こんなにハイペースで放出して、書き溜め大丈夫かいな……)



 青年に言われるままに僕は装備の詳細を開く。

 武器名:九十七式改 DEX+40 STR-8

武器オプション:一撃必中……武器反動によるダメージ極大化、武器反動による命中率阻害極小化


「意味がわからないのですが……?」

 青年は自慢げにふんぞり返っていたが、僕の言葉に古臭いこけるような動作をする。

「なんで、このオプションの良さがわからねぇんだよ。スナイパーライフルの最大の弱点は発射時の武器反動による命中率の阻害だ。これがあるから、狙撃しても当たらねぇし、ならいらねぇ。って事になるわけだ。だが、俺の九十七式改はその命中率阻害を極小になるオプションがついている」

「そ……それはわかりますが、武器反動によるダメージ極大化って……」

「あぁ、気にすんな。武器反動ダメージがいくら激しくても絶対に死にはしねぇ。HPが1で止まるようになってるみたいだからな。HP鑑定スキルを使用しながら、色々とテストした奴がいるから間違いねぇ」

「でもそれって……後一発でももらうとやられちゃう状態に陥るって事ですよね?」

「まぁそうだが、仕方ねぇだろ。一発で仕留めろ一発で、元より狙撃手に二射目はねぇんだよ」

 舌を出して肩をすくめる青年。

 無性に苛立ちを感じながらも、それをぶつける根性は僕にはない。

 それに買ってしまった物を返品など、気弱な僕にはできない。

 さすがに悪いと思ったのか、青年は頭をかきながらフレンドカードと何やら小瓶を僕へと渡してきた。

「買ってくれたサービスだ。俺は銃器職人のイーグル。またスナイパーライフルがほしかったら連絡くれ。そんでこれがおまけのポーションだ。もしも一射目が外れたらすぐにこれを飲んで逃げれば命が助かる……かもしれない。死ぬなよ」

 イーグルから嬉しいような悲しいような餞別をもらった僕は、九十七式改による所持重量の補正で生じた重量制限に束縛された足を懸命に動かし、宿屋へと戻ることにした。



――――――――――――――――――――



 宿屋で帰る道中、イーグルからもらった『瞬間回復ポーション小』をアイテム袋に入れた僕が動けなくなる事件に見舞われた。

 九十七式改を背中に背負う……つまり、装備した状態ではSTR値は0であり、ポーションを道具袋に放り込んだ瞬間に重量オーバーによる移動制限を受けたのだ。

 僕は九十七式改を一度道具袋に収め、そうして宿屋へと辿り着いたのだった。

 でもいい勉強になった。

 手に持っている『アイテム』は所持重量の制限を受けず、装備している『装備品』は所持重量に含まれる。という事実を知れたからだ。知ったところでどうだと言う事もないが、新しい知識が増えるのは嬉しいと不思議と思ってしまう。

 さらに『装備品』は道具袋から出し、身につけた状態でなければ使用する事は出来ず、果物ナイフと九十七式改は同時に出現させる事はできない。つまり、同時に複数の武器を使う事は不可能なのだ。

 道具袋から装備を取り出すワンアクションを行えば、戦闘中の武器の持ち替えは可能そうだが、そんな事をするならば一つの強い武器を集中して使った方が良く、ゆえに欠陥品であるスナイパーライフルの凡庸性の低さが致命的な欠点となるのだろう。

 どの装備がどれだけの重量化わからないのも痛い。STR値が0でも果物ナイフ一本入っている程度ではかなり重さを感じるものの、歩くことは辛うじて可能だった。

 それでもポーション一個放り込んだだけで動けなくなると言う事は、一つの仮説がかなり有力となる。

 それは――移動不可寸前の所持重量オーバーと移動不可所持重量オーバーの体感的な束縛感には雲泥の開きがあると言う事だ。

「まぁそんな事どうでもいいか」

 僕は益体もない呟きをごちり、ベッドに横になる。

 そう、僕にはどうでもいい。なんならゴーレムにすべてのアイテムを押しつけてから、九十七式改を装備すれば事は足りるのだ。

 道具袋からフレンドカードを取り出し、にやにやと微笑みながら眺める。

 今日だけで三人も友達が出来た。

 僕の今までの人生でから見れば破竹の勢いと言ってもいい交友枠の拡大速度である。

「そう言えば、マテリアルさんには僕のフレンドカードを渡してないな。困った時は連絡しろって言ってたけど、明日連絡してみてもいいかなぁ」

 そんな事を考えながら、僕の長い一日は終わりを告げた。



――――――――――――――――――――



 翌日、僕は飲食街と呼ばれる場所の『エインヘリャル』という店でマテリアルを待っていた。

 酒場風であるエインヘリャルの客たちは屈強な戦士が多く、リアル年齢16歳の僕には何とも居心地の悪い空間であった。

 約束の時間を三十分ほど過ぎてから、マテリアルは僕の前に現れた。

「すまない。待たせたな」

「いえ……こちらこそ、急に呼び出してすいません……」

「余所余所しいな、敬語はよせ。えっと――」

「あ、ビーンです。あの……これを……」

 僕は自分のフレンドカードをマテリアルへと渡した。

 マテリアルはそのカードを一瞬眺めて、その辺に放り投げる。

 捨てられたのだと一瞬驚いたが、僕のフレンドカードはその辺の空間に吸い込まれるようにして消えていった。

 驚く僕にマテリアルは気付き「あぁ、すまないな」と言ってから説明してくれた。

「これは俺のスキルでな。『イリュージョンバッグ』と言う。所持重量制限を無視できるから、かなり重宝している。――それで用件は?」

 僕は便利なスキルもあるものだと感心しながら、マテリアルの問いに答える。

「えっと……、僕、国家に入りたいんです……。どこか紹介してはいただけませんか?」

 マテリアルの眉がぴくりと動き、彼は冷淡な声音で「何故だ?」と僕に尋ねた。

 僕は思いつく限りの動機をマテリアルへと告げる。

「やっぱりクリアを目指すにしろ目指さないにしろ自分がどう行動していくか決まらないと落ち着かないですし……、レベリングも仲間がいれば楽にできそうですし……、何と言っても一人は心細いです」

 黙って聞いていたマテリアルが鋭い眼光を僕へと向けながら口を開く。

「貴様、勘違いしていないか? ギルドに入ると言う事は戦争する。と言う事だぞ? レベリングが楽になる? 一人は心細い? そんな考えで戦争に生き残れると思っているのか? 有力国家はそんな甘えた考えの奴を300人と限られた運命共同体の輪に入れようなどとは思わない。自分の行動指針を決めたい? それこそ決めてから国家に入るものだろう?」

 身体を雷が撃ち抜いたようだった。

 マテリアルは「もう少し、この世界と自分を見つめ直すんだな」と言って、僕の前から去って行く。

 彼の言う通り、僕は甘く考えていたのかもしれない。

 そう――この世界を生きて出られるのは300人だけ。

 ほのぼのと十日以上過ごしていて忘れかけていたが、プレイヤー達は自分達の生還を賭けて、命懸けの戦争をしているのだ。





ここから引きこもり主人公少しずつ動き出します……。

乞うご期待!!

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